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地球に生きる生命(いのち)の物語  作者: 梅村 夕菜
第三章 運命を受け入れて。
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夜の銃撃戦。


「リーフ! 起きろ!」



 腕を強く引っ張られ、リーフは目を覚ます。間近で銃声が響き、彼は慌てて傍らに置いていた銃を拾い上げる。


 周りでは既に銃撃戦が始まっており、あちこちから怒号や悲鳴が聞こえてくる。セグも応戦し、銃の引き金を引く。すると、どさりと何かが倒れる音がした。


 リーフもすぐに加わり、銃弾を放つ。右に避けては引き金を引き、また左に戻る。時には前後にも移動し、夜ということも相まって、リーフはだんだんと疲れを感じていた。時計などあるはずもないので、何時間経ったのかも、現在時刻も判らない。


 空が明るくなってきた頃、ようやく辺りは静かになった。無意識にほっと息をついて、リーフはセグの方を見る。当然のように、彼は傷ひとつ負っていない。それを確認してから、リーフは部隊の方へ行こうとする。しかし、急にセグに肩をつかまれた。



「? セグ?」



 振り返ると無表情のセグが見えて、リーフは首を傾げる。



「‥‥‥見るのなら、覚悟を決めろ」



 ぽつりと言って、セグは手を離す。リーフも馬鹿ではないので、なんとなく意味を理解した。



「‥‥‥セグは、平気なの?」



 ふと疑問に思って尋ねると、セグはかすかに目を伏せる。



「‥‥‥オレはもう、そういう感覚は麻痺してる。親を殺してから、感情は捨てた」



 なんの感情も無いまま返され、リーフは黙った。


 セグだけでなく、こういう子ども兵は多かった。死や暴力、殺戮や恐怖が日常だと、心は自身を守るためにそれらに慣れてしまう。世界はどこもこんなものだろうと考え、人を殺さなければならない日常を疑わなくなるのだ。



「‥‥‥そっか」



 それ以上リーフはなにも言わず、隊のいた方へ足を進める。


 そこにあったのは、血の海に倒れる兵士たちの姿。時折、負傷した者たちの呻き声が聞こえてくる。



「‥‥‥‥‥っ」



 予想はしていたが、実際に見ると心が痛み、リーフは無意識に目をそらす。



「‥‥‥現実から目をそらすな、リーフ」



 後ろからセグに指摘され、リーフは拳を握り、ゆっくりと顔を上げる。


 知らないまま生きられたら、どんなに幸せだっただろう、と彼は頭の片隅で考えた。これが日常なのだと、運命なのだと諦めることができたなら、心を殺して生きることもあるいはできたのかもしれない。しかし。



<‥‥‥死にたくない‥‥‥僕は、まだ‥‥‥>



 死への恐怖。弟との約束。運命だと諦めたら、果たせない想い。それらが、リーフの心に希望を抱かせた。生き続けていれば、いつか戦いのない場所で暮らしていけるようになるかもしれないと。


 リーフの震えた拳に気づいていたセグは、一瞬躊躇い、彼の右肩に手を置く。



「‥‥‥人はみんな、死にたくないと思うものだ。誰にだって、恐怖はある」



 はっとして、リーフはセグを振り返る。金茶色の瞳は、真っ直ぐにリーフを見据えていた。



「‥‥‥セグも、死ぬのは怖い?」



 呟いてから、リーフは当たり前のことだと気づいた。セグも人なのだから。



「‥‥‥どうだろうな。昔は死んでも構わないと思っていた時期もあったが‥‥‥よく、わからない」



 そう言ったセグの表情が翳って見え、リーフは言葉を失う。しかし、彼が口を開く前に、セグはすっと前に進み出た。



「話はここまでだ。行くぞ」



「‥‥‥うん」



 頷きながら、リーフはセグの背中を見つめる。何故か、その背中は寂しげだった。

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