襲撃。
翌日、回復したリーフは、昨日の戦闘で大分減った部隊とともに、行軍を開始していた。無論、話し声も、休みもない。
この日も戦闘だろう、と思っていたリーフは、昼過ぎに行き着いた場所に驚く。目の前に広がるのは、ごく普通の農村。
「ここからがおまえたちの仕事だ、よく聞け」
森の中に部隊を隠したまま、兵士は残酷な言葉を告げる。
「ここにいる奴らを全員、連れてこい――――抵抗するようなら、殺せ」
一瞬、リーフは頭の中が真っ白になった。――――そう、アンシャを殺せ、と言われた時の感覚と酷似していた。
他の子ども兵たちも多少の動揺を見せていたが、兵士が銃に手をかけると、意を決したように村へ入っていく。リーフもその流れに従って――半分はセグに引きずられるように――突入し、一軒の簡易な家に向かう。
扉の代わりとなっている暖簾を払い、中にいた夫婦と少年に銃を向ける。
少年はまだ幼く、自分より一、二歳年下に見えた。それがリーフを躊躇わせたが、彼にも生死がかかっている。命令には、逆らえない。
「‥‥‥死にたく、なければ‥‥‥きて‥‥‥」
絞り出したような声で、リーフは一歩家族に近付いた。唇を噛み、リーフの方が恐怖に怯えた顔をしている。そんな彼を見てか、夫婦と少年は抵抗もせず従ってくれた。
それにほっとして、リーフは銃を構えたまま家を出る。すると、既に村には悲鳴と血が飛び交っていた。間を抜けて、彼は家族を村人たちが集められている場所に連れていく。
「ごめんね‥‥‥」
周りの悲鳴にかき消されてしまうくらいの、小さな声。わずかに驚いた少年に微笑み、リーフはすぐに村へ引き返す。
村を走っていると、二、三人の人が倒れていた。銃声はそれ以上聞こえたので、家で撃たれた人もいるのだろう。村を駆け、人がいないかを確かめていたリーフは、こちらに向かって走ってくる男の人に気付いた。
「リーフ! 殺れ!」
鋭いセグの声に、リーフは反射的に銃を構える。震える指で、包丁を持った男の人へ引き金を引く。
どぉんっ、と特有の音が響き、リーフは前を見つめて茫然とする。周りにはまだ悲鳴や怒号があるのに、血を吹き出して仰向けに倒れていく男の人と自分だけが、取り残されたような――――。
「!」
ぐい、と腕を引かれ、リーフは我に返る。いつの間にか隣に来ていたセグに引きずられるように森へ連れて行かれる。気づけば、皆村から離れつつあった。
「‥‥‥セ、グ‥‥‥」
かすれたように弱々しい声だったが、セグには聞こえたらしい。ちらりとリーフを見て、前方に視線を戻す。
「‥‥‥ショックを受けてる暇はねえぞ、リーフ。今日はまだ始まったばかりだ」
「‥‥‥うん‥‥‥」
頭では、判っていた。だが、リーフは心の片隅で、人殺しには慣れたくないと考えていた。これでは、いつか殺されてしまう。
そして、そんなリーフの葛藤を、セグは見通していた。
<‥‥‥こいつは、ここに来るべきではなかったんだろうな>
心の中でため息をつき、セグはそう考えた。しかし、子どもたちは皆、生きるためにここにいる。誘拐されたり、銃で脅されたり、少数派ではあるが貧しい暮らしから逃れるために衣食住を求めて、軍隊に所属する。リーフもまた、死か軍隊に入るかの選択を迫られ、連れてこられた。
理不尽さはあっても、子どもたちには従うほかなかった。これが運命なのだと、諦めるしかなかった。




