現実と幻想。
長い一日が終わり、リーフとセグは草に隠れるようにして座っていた。石に腰掛け、黙ったまま向かい合って座る彼らを、古いランプの灯りがかすかに照らしている。
「‥‥‥ねえ、セグ‥‥‥」
沈黙を破ったのは、リーフの小さな声。
「戦争って、誰が正しくて、誰が悪いんだろう‥‥‥」
素朴な問いに、返事は意外と早く返ってきた。低い声が、言葉を紡ぐ。
「‥‥‥戦争などの争いに、善悪なんて存在しない。皆、自分が正しいと思ってるんだからな。“自由や生活のため”という綺麗事を並べても、所詮は同じだ。オレたち兵士は、ただの人殺しとなんら変わりない」
当然のような言い方だが、実際、セグにとっては当たり前なのだろう。表情は、まったく変わらない。
「‥‥‥やっぱり‥‥‥そう、だよね‥‥‥」
リーフも多少予想していたとはいえ、ショックはあった。
毎日、戦うことしか教えられず、読み書きさえできない自分たちは、何の罪もない人をも殺している。命令であり、生き延びるためとはいえ――――直接聞かされると、心に暗いものが沈み込む。
「‥‥‥なぜ、だろうな」
風に運ばれてきたセグの呟きに、リーフは彼の方を向く。
「憎しみや悲しみ、欲望から始まった争いは、それ以外のものは生まない‥‥‥。当たり前のことなのに、なぜなくならないんだろうな。人間同士で殺しあっても、失っていくものばかりで‥‥‥オレたちも、戦争以外の日常を知らない‥‥‥」
どこか悲しく、寂しそうな声音だったが、セグは空を仰ぎ、髪によって表情は判らない。
さぁぁっ、と風が吹き、草とふたりの髪を優しく撫でた。数秒の静寂のあと、リーフは無意識に口を開いていた。
「‥‥‥でも、ね。僕、少しだけ思うんだ」
金色に輝く月を見上げ、リーフは続ける。
「人はきっと、温かい心を持ってるって。それが、誰であっても」
今度は、セグがリーフを見る番だった。真っ直ぐな視線を受け、リーフは微笑む。
「だから、世界は絶望するばっかりのものじゃない。人は光と闇を併せ持っているから、迷ってしまうだけなんだ」
――もしも次に、平和な世に生まれ落ちた時は、それを証明してみせるよ――
最後に呟かれたのが、独り言だったのかは判断がつかなかったが、リーフはかすかに満足そうに再び空を見上げる。その様子をじっと見つめていたセグは、心の中でそっとため息をついた。




