とある国のカフェにて…
ここはある国の、人通りの多い城下のテラス席があるカフェ…
そこに二人の男女がお茶を楽しんでいた。
「ねぇ!?あの子!あの金髪の子可愛いと思わない!?きゃー!隣の子も捨てがたいわ!!」
赤茶のクセのある髪を高い位置で一つに結び、切れ長の青い瞳をめいいっぱいひらきキラキラした目で通りすぎる女の子たちを眺める20代前後の女性。
「……そうか?」
その向かいに座る、黒髪短髪に藍色の瞳の女性と同い年くらいの男性が、興味なさげに答える。
その答えが気に入らないらしく、眉間にしわを寄せ彼女 ―エミリア― が言う。
…一応女なんだから眉間にしわを寄せるのはやめたほうがいいと思うが…
「そうなのよ!あんたもみてたでしょ!?通りすがる男どもが頬を染めてた姿を!」
確かに周りの男の顔が赤かったきがするな…しかし…
「確かに、だが…俺にはよくわからん。」
「…エル…本当にあんた男?あんな可愛い子達みて「わかんない」ってそんな無表情で……下半身ちゃんと機能してる?大丈夫?」
本当に心配そうな顔して聞いてくる。何故興味なかっただけでそこまで心配されなきゃならんのか…
「無表情はいつものことだろう。あと、ちゃんと男だ。単に好みの問題だろ。」
俺がそういえばエミリアはジト目でみてくる。なんだ一体。
「いや、私あんた出会ってからもうかれこれ5,6年経つけどさ、エルが女の子に興味ありげなとこみたことないんだけど…」
――ふむ。確かにエミリアと出会ってからは元々無頓着だったのがさらに加速した気がする…
何故だ…?
「…。お前はいつも女に反応してるな。」
話題をそらすためそういうと、彼女は拳をにぎり力強く言う。
「当たり前でしょ!?女の子は私の全て!私の癒し!顔の良し悪しも!胸が小さいのも大きいのも!性格の良い悪いも!全て女の子一人一人の個性!全ての女の子は世界の宝!!!」
「……お前はみさかないな本当。もはや引くの通り越して尊敬するぞ。」
――エミリアは女が大好きだ。俺がエミリアが仲良くなったのも、彼女が遠くから女性を観察する姿をみて声をかけたのがきっかけだ…どうみても不審者だったので声をかけたが、そんな奴とお茶する中になるとは誰が予想できるだろうか…
「見境ないんじゃなくて、許容範囲が広いっていってよね。ふふっ!そうでしょう、そうでしょうとも!尊敬してくれていいわよ!」
拗ねた声をだしたと思ったらドヤ顔でこんなこという…
「はぁ…お前な…美人なんだからちゃんと女らしくすればモテるだろうに。」
ため息交じりにそう言えばエミリアは固まった。
―――俺なんか変なこと言ったか?
「い、いきなりなに言うのよ!?んなわけないでしょ!エル、あんた目おかしいんじゃない?病院行きなさい病院。」
―――珍しく褒めたのに貶された…
「いや、目は正常だ。どうみてもお前は美人だろう。それに、性格も慣れれば可愛いと思わんこともない。…なんだその顔は?」
エミリアは信じられないものを見る目で俺をみている。
「………あ、あんたみたいな、女の子の区別もろくに出来ないような奴に!どんなに可愛い子や美人を見ても!反応皆無なあんたの!発言を!信じられるわけないでしょうが!!しかも無表情だし!」
―――確かに女の区別がちゃんと出来ているかは自信はないが、そこまではっきりと言うか普通。それに、エミリアなら遠くにいてもちゃんと判別できるぞ。あと、無表情はデフォルトだと何度言えばわかる。
「まあ、信じてもらえんでもいいが、俺は思ったこと言っただけだ。」
「うぐっ、べ、別にエルのこと信用してないってことはないけどさ…エルってどんな女の子みさせても「わからん」ばっかなのに、いきなり私のこと美人だとか言うから吃驚したってだけで――」
――言われてみればエミリアに付き合って色んな女性を見てきたが一度もちゃんと反応したことないな。
女の区別がちゃんと出来てるかわからないがエミリアはわかる。どの女性を見ても何も思わないがエミリアのことは美人だと思う。…そこまで考えて、ある一つの結論に至った。
「なるほど…」
「いやなに納得してんのよ…」
「ああ、すまん。いやな、俺の好みがお前だから他の女をみてもなにも思わなかったんだと思ってな。」
「は?」
「お前が好みだから女性に興味がないのに拍車がかかったんだな。お前以外を美人だと思えんし、性格も、お前みたいなやつそうそういないからな。すっきりした。」
俺が一人納得しているとエミリアが俺を凝視してくる。
「…は?」
「…?だから俺の好みはお前だと分かった。」
「はっ…?」
「どうした?耳の調子でも悪いのか?医者にみてもらった方が良いんじゃないか?」
「……!?ばっ!ばっかじゃないの!?」
「どうしたいきなり?俺が馬鹿なのはお前も知ってるだろう?」
「そうじゃなくて!わ、私が好みとか!?何言ってんのエル!この世界にはありとあらゆる可愛い女の子がいるというのに!」
前のめりになりながら、顔を真っ赤にし、眉間にしわを寄せながら俺に訴えてくる。
――なんで怒ってんだ?
「お前も女だろうが」
「私を除外してに決まってるでしょうが。なんで自分のこと可愛いとかきれいとか思わなきゃいけないのよ。」
「じゃあ、お前が思うわけではないから俺がお前を可愛いとか綺麗だと思うのはいいんじゃないか?」
「ぐっ…それはそうかもだけどさ。私が好みとか…そんな冗談みたいな…」
「俺は本気だぞ?」
「だ、だって友達だと思ってたエルにそんな…」
エミリアは、先ほどの怒ったような表情から戸惑っていうような表情になっていき、視線を机に落とししどろもどろに答える。
「友だと言ってはダメか?」
「そんなことは…ない…。えっと…つまり…私が好みって…つまりその…私が好きってこと…?」
エミリアは俺と視線を合わせずに、ぼそぼそと聞いてくる。
「…?好きに決まってるだろう友なんだから。今更何言ってるんだ?」
―― 一体エミリアはどうしたんだ?好きでもない奴と友人になるわけないだろ。
俺がそう言うと、エミリアは顔をあげ俺と目を合わせる。そして、「こいつ何言ってんだ」というような顔をしてくる。いつものエミリアの表情だ。
「いや、そういう意味じゃなくてさ…」
「どういう意味だ?」
「他になんか言うことないの?」
「何か他に言うことあるのか?」
しばし二人で見つめ合い、エミリアがため息を吐きながら机に顔をうずめる。
「いや…なんか、もういいわ。」
「そうか?」
「あああ…エルみたいな無表情で馬鹿で女の子の良さを理解できないような奴に…!ときめいたなんて…!もてあそばれた…私の僅かな乙女な部分をもてあそびやがった…」
何か言ってるが声が小さすぎて何言ってるか聞こえない。
「何ぶつぶつ言ってるんだ?」
俺が聞けば、エミリアはこちらを一睨みし頬杖をつき拗ねたような声で答える。
「何でもないわよ!ただ、エルと話すのは疲れるって思ったの!」
「…疲れるのか…俺はお前と過ごす時間は楽しいのだが…そうか…」
―――自分が楽しいだけに、エミリアに疲れると言われるのはなかなかつらいな
「…もう、本当やだ〜…」
「?」
エミリアはまた顔をうずめていた。