Be An Angel
私は誰よりも空に近い場所で、眼下の光景を眺めていた。そこには部活動に勤しむ生徒だったり、友人との会話に弾む生徒たちがいた。それは傍目から見てもとても楽しそうだと分った。果たして私はあんな光景に入れることができたのだろうか。いや、無理だっただろう。私はそう思うとこれまでの人生を想い浮かべる。こうしてふと思い返すと、あまりいい思い出がない。
「あぁ、なんて悲しい。」
私はそう呟くなり、スカートのポケットから紙片を取り出す。今日学校から配られた進路調査票だ。そこには記入すべき欄には何も書かれておらず、白紙であった。私はまた一つのスカートのポケットから鉛筆を取り出すと、そこにサラサラと文字を走らせた。
「こんなものかな。」
私はそしてその進路調査票を折り始めた。久々に作るその形は私の手を煩わせた。数分後には、その進路を決める紙は飛行機と化していた。そう。紙飛行機だ。その形は少しいびつで、汚い。久々に作ったからこんなものかな。ふと、私はもっと空を近くに感じたいと思った。ではどうしたらそこに近づけるだろう。
「って。私は何しにここに来たのよね。」
そう。私はその空を近くに感じたいからここに来たのではないか。ここは学校の屋上。この場所より空に近いところはそう無い。
「さて、そろそろ行きましょうか。」
私はそう呟き、出口のある扉へと足を向けた。髪をかきわけながら進む。あぁ、なんて夕焼けがまぶしいのだろう。もうこの陽を見るのも今日が最後だ。果たして私が向かったのは正確には出口の扉ではない。そのそばにあるフェンスだ。なぜだか知らないけど、このフェンスだけ周りのそれより背が小さいのだ。これなら私でも登れる。私はその網目に手をかけ、登り始める。ところどころ錆びてるから注意しないと。
「ここからの眺めもいいわね……」
私はそう呟き、持っていた紙飛行機をそっと飛ばす。紙飛行機は風に乗り、どこまでも飛んだ。
待っててね。私もすぐに飛ぶから。
私はそう思い、バッと身を乗り出す。以前から夢見ていた空中を浮遊する感覚。まるで羽が生えたかのような感覚。本当に心地よい感覚だ。
ふふふ。まるで●●ね。
私は落下する自分の姿が校舎の窓に映るのを見た。そこには羽が本当に生えてる気がした。けどすぐにその姿は流れてしまう。
あぁ、全てにアリガトウ、そしてサヨウナラ。
私が最後に至った言葉であった。
「ねえ、あれ紙飛行機じゃない。」
「本当だ。あれ?落ちてくるよ。」
「拾ってみようよ。」
「よっと……ん?なにか書いてある。」
「なになに、『私、天使になりたい。だから――』って、気味悪いな…」
果たして、彼女は天使になれたのだろうか。
また勢いで描いてしまいました。