18話 マクスウェル大陸へ……
久しぶりの投稿です。2か月も更新してなくてすみません。それなのに短いです。まぁ、今回で1章が終わるので区切りということで。
―オリジアナ大陸 オリジア地方 自由都市オリジア
ハイド川でミコトたちと別れたアークスたちは、2日ほどかけて再び自由都市オリジアへと来ていた。ルナ地方へ向かうことが出来ないとはいえ、海を挟んで隣にあるマクスウェル大陸へ向かう為にはオリジアを通り、西の街道の先にあるオリジア港へ向かう必要があるからである。
オリジアナ大陸からマクスウェル大陸へ向かう船はそのオリジア港以外には無い。それについてはこちらも心装具と同じようにマクスウェルの先代王が関係している。
100年以上前、つまり先代王がマクスウェルを治めていなかった頃は、オリジアナとマクスウェルは貿易を行っていた。その当時の王はすべての種族・属性に寛大で、当時のマクスウェルは4大属性以外にも多くの属性を持つ者たちが暮らしていたという。
しかし、その次に王になった者、つまり先代王であるクラン・マクスウェルは、多くの心装具の低ランク及び4大属性以外の属性保持者を極端に嫌っており、特にそれらに該当する者たちが多く住むオリジアナとは犬猿の仲であったことから、このオリジアナ大陸とは貿易していなかったのである。
しかし、先代王が崩御してから、マクスウェルの現在の王とオリジアの王が、かつて貿易を行っていたオリジア港を再び整備し(整備といっても30年以上使われていなかった港だったため、港にあるほぼすべての施設や設備を作り直したらしいが)、再び貿易を開始したのである。
「さてと、じゃあ行きましょうか? ファルクス」
2日ほどかけて辿り着いた自由都市オリジアで食料品など、ある程度の買い物を済ませたアークスは、店の外で待っていたファルクスへと向き直ると、笑顔でそう言う。だが、その笑顔を受けたファルクスはアークスとは対照的に、若干不満そうな表情をしてアークスを見ていた。
「ねぇアークス? ほんとーにそれだけでいいの~?」
何故ファルクスがそのような表情をしているのか分からず、首を傾げるアークスにそう言ってファルクスは、アークスの腰に提げられている、小さな袋を指差す。
そこにはアークスが先ほど買い揃えた保存食などが入っている……わけなのだが、
「何か問題でもあるんですか?」
「問題しかないよ!? なんでそれだけしか買ってないの!?」
理由が分からず首を傾げるアークスにファルクスが叫ぶようにしてそう言う。何故なら、アークスが買った保存食の量は量的にいうと一般の旅人の2日分ほどしかないのである。
一般的に、冒険者が持つ食料というものは、原生生物である『ボア』などの干し肉等の乾燥食料なので、大して嵩張ることはない(尤も、持ち運びの面と長旅の面を考慮して作られているためか、普通の食用として売られている干し肉と異なり、乾燥させすぎているため、ある程度鋭いナイフなどで薄く削るか、水などで戻さなければ食べることもままならないのだが)。しかし、1週間分となると話は別である。1週間分だと個別なものではなく、1つの大きな塊として売られていることが多く、どうしても嵩張ってしまうのである。
しかし、アークスの腰に下げられている袋は明らかに小さい。入っていたとしても、15センチほどの大きさの干し肉が5枚程度であろう。これでは明らかに2日分あれば上等といった量である。
「でも、これだけあれば1週間くらいは・・・」
「いや、ね? そーなのは多分アークスだけだからね~?」
ファルクスはそういうとアークスの手を引き、先ほどの店に入る。そして、アークスが再び来店したことに驚いたのか、目を丸くしている店主にこう告げる。
「1週間分の保存食下さい」
「え? でもさっきそこのお嬢ちゃんが……」
「1週間分の保存食下さい」
「はあ、まぁいいか。じゃあ2人分で500アウルムになるが……、うん。ちょうどだな。まいど」
店主はファルクスの雰囲気に押されながらもそういってファルクスから硬貨を受け取ると、1週間分の乾燥食料を手渡した。ファルクスは手渡された保存食を受け取ると、きょとんとしてファルクスと店主のやり取りを見ていたアークスに押し付ける。
「アークス、これが一般の1週間分だよ~」
「はぁ」
押し付けられたアークスはいまだポカンとしていた。パートナーと離れてから今までの約3年間、ずっと1人の生活であったせいか、今腰にある分程度が普通だと思っていたのである。
追い出された手前、村に頼れなかった時点で狩りで生きていくしかない。かといって1度の狩りで捕れる量なんてたかが知れているし、何も取れない日だってあった。だからこそアークスはこの量でも十分なのだが。
「じゃあ、改めて行こ~」
そう言いながらファルクスは、ポカンとしているアークスを引きずりながら歩き出す。ファルクスに引きずられやっと正気に戻ったアークスは、自身の手にはめられた籠手状の魔具(とはいっても今は待機状態なので手袋状だが)オリジンに、かなり嵩張っている保存食をしまいこむと、自身の足で歩きだすのだった。
―3日後
オリジアを出てから3日目の朝。2人はようやくオリジアの西にあるオリジア港へ来ていた。実際には昨日のうちには着いていたのだが、夜遅くだったため門前払いされただけな訳であるのだが。この頃になってマギアが増えてきているため、多くの町が門を作り警備していることが多い。それに加えて、町を襲う可能性がある多くのマギアが夜に行動しているため、夜になると多くの町が防御を司るように加工された心装珠を埋め込んだ門で入口を塞いでしまうのである。
朝になってようやく中に入ることが出来た2人が軒連ねる民家など、ほぼ街のような外見ももつ港の中へ入っていくと、オリジア港の船着き場の方は大勢のヒトでごった返ししていた。船着き場の辺りには、かなり大きな荷物から小さな荷物が所狭しと置かれ、それらを大勢の人々が、おそらくマクスウェル大陸へ行くのであろう船へと運んだり、逆にマクスウェル大陸から来たのであろう船から運び出したりしている。
荷物を運び出しているヒトを見ると、ドワーフやビスティアと言った、力仕事に優れている種族が多い。逆に船員や港で荷物を確認する役目のヒトはヒューマン《人族》やマーマンといった、物の扱いに慣れた種族が多いようだ。
そのようなヒトの流れを黙って眺めていたアークスがポツリと呟く。
「……すごい人。」
「そ~だね~。ノスティアも結構人が多いと思ったけど、こっちには勝てそ~に無いね~」
アークスの呟きに答えるようにファルクスがそう言った。
確かに同じ貿易都市であるノスティアもヒトの混雑が多かったが、こちらはその比ではない。なにせこのオリジアナ大陸と、位置と規模的に世界の中心ともいえるマクスウェル大陸を繋ぐ唯一の港なのだ。また、オリジアナでも多くの物は揃えられるが、質や量はマクスウェルには敵わないため、実際に行って買いに行く者も多いのである。薬草や鉱石など、オリジアナでしかないものもあるため、その逆もあるのだが。
しかし、ここにいる人たちの人種を眺めていたファルクスが、ふと疑問符を上げる。
「でもさ、ノスティアよりは人種というか、その……心力の種類が偏ってるような気が……?」
「ああ、そういえばヴェネスはヒトの心力の流れが見えるんでしたね。ええ、確か話を聞いたところによると、マクスウェル大陸では四大属性以外の属性を持つ者は住んでいないとか」
アークスはヴェネスの持つ特殊能力に感心しつつ、かつてのパートナーだったエンシスから、昔聞いた(実際には聞かされたが正しい)うろ覚えの知識を口にする。
マクスウェル大陸のほぼ中央にある帝都マクスウェル。そこをかつて治めていた先代の王クラン・マクスウェルが行った政策である『四大神教』というほぼ宗教的な物の設立。
『4大属性こそが世界の要である』という教えから、マクスウェル大陸から4大属性以外の心力を持つ者たちの差別から始まり、最終的にはマクスウェル大陸から4大属性以外の属性を持つ者たちの全員の追放を行ったとされる出来事である。追放されたというものの中には、実際には処刑されたとされるものまでいるとされているが、実際のところは揉み消されていて、真実は定かではない。
その『四大神教』政策の影響から、マクスウェル大陸にすむ者全員が他の属性に対する差別が習慣となってしまったのだという。
その習慣も先代王が崩落し、現在の王に変わってからは多少は改善されているらしいが、それでもマクスウェル大陸内での4大種族以外に対する差別は色濃く残っているらしい。尤も、アークスにとっては4大属性以外の属性からも差別をされていたわけで、4大属性の優遇についてはあまり実感はないのだが。
「本当にヒトは差別が好きですね。…………今も昔も」
「アークス?」
アークスが俯きながらそう呟く。その呟きはファルクスには聞こえていなかったようで、ファルクスは急に俯いたアークスに問いかける。
アークスとしても不意に口に出た言葉だったので、その呟きがファルクスに聞こえていなかったことを安堵すると、アークスはその問いに微笑みながら、なんでもないよ、と返すと船が停泊している方へと歩き出す。そして船の乗り場に立っているヒューマンの船員に話しかける。
「すみません。マクスウェル大陸へ行きたいのですが」
アークスが話しかけると、その船員はアークスとその隣にいるファルクスの目と髪の色を見て、顔を歪めさせると、遠慮がちにこういった。
「すまないがお嬢ちゃんたち。マクスウェルに行くのは止めた方がいい」
「え~!? なんでさ~!?」
船員の言葉を聞いてファルクスが大声を上げる。それはそうだ。ただ話しかけただけで、マクスウェル大陸に行くことを止められたのだ。ファルクスが思わず叫んでしまうのも無理はないだろう。
そんなファルクスを見て、船員はより申し訳なさそうな顔をすると、ファルクスの低い背に合わせるようにかがみながらファルクスにこう返す。
「その髪色、目の色からしてお嬢ちゃんたち4大属性の使い手じゃないだろ?」
「え? うん。そ~だけど?」
ファルクスが船員にそう返すと、船員は、やっぱりな、と呟く、というよりもぼやくとばつの悪そうに頭を掻きながら考え出す。そして、数秒悩むしぐさをみせてから、重い口を開いた。
「お嬢ちゃんたちには悪いが、正直マクスウェル大陸へ行くことをお勧めできねぇ。今のマクスウェルは先代王の崩御から間も無くて、同じ4大属性同士でもいざこざが絶えなぇんだ。ましてや他の属性持ちが行くとなっちゃあ危険すぎる」
「そんなにひどいのですか?」
2人の外見が若く見えるためか、心配してそう語りかけてくる船員にアークスが問いかける。事実かつてのパートナーがいる場所なのだ。自分の心配もそうだが、アークスとしてはそちらが気がかりであった。
「ひどいなんてものじゃねぇ。確かにハスタ様が新王になってある程度は良い方向に変わってきてはいるがな、未だ平気で相手を殺すような輩までいやがる。しかも同属性でもだ」
アークスの問いに対して、船員は吐き捨てるようにそう返す。その表情から、その船員には4大属性同士のいざこざで何かしらあったようだ。
それに気づいたアークスはその話題に触れることようなことは避けるべき、と判断し、口を開く。
「それでも行く必要があるんです」
アークスは決意を固くし、そう一言だけ口にする。するとその船員は諦めたようにかぶりを振ると、懐から心術による術式が刻まれた紙を2枚取り出すと、その紙を無理やり気味に2人に持たせる。
「……分かった。ならこいつを持ってくと良い」
「え? ですがまだ代金を払ってませんよ?」
「いいからもってけ。そして――――――また戻ってこいよ? さぁ、のったのった! すぐに出るはずだぞ?」
無料で船のチケットをもらったことに困惑するアークスに船員はそう言うと、微笑んでから船へと乗り込んだ。アークスとファルクスは顔を合わせると、その船員を追う様にして船に乗り込むのだった。
「…………ヒトもまだ捨てたものじゃないのかもね」
――――――船に乗り込むとき、アークスの口からぼそりと洩れた言葉はファルクスは勿論、呟いた本人のはずのアークスの耳にも届くことはなかった。
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