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青の魔法使いと最後の執行官  作者: 雨曇晴
冬の森にて
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8.血の契約と魔法薬

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「それじゃあ始めよう」


 セロン様は躊躇なく杖を自分の人差し指に突き刺す。金属でできている杖は簡単に皮膚を突き破り、ぷっくりと丸い血液が浮かんできた。


「契約書はない。魔法使いは手っ取り早く血に誓うんだ。失くなることがないから」


 ほら、あんたも。そう言って杖が差し出される。痛いのはあまり好きではないがこれっばかりは仕方がない。

 手を恐る恐る受け取る。こういうのは勢いだ。いつかやらなきゃいけないなら先延ばしにしたって仕方がない。私が勢いよく杖を指すと、噴き出るように血が溢れる。その瞬間、ズキっと鈍い痛みが指先を襲った。


「痛っ」


 私が思わず声を上げると、セロン様は吹き出した。


「やりすぎだな。血で書物を汚すなよ」


 そのまま私から杖を取り上げて、杖を振った。すると、白いマグカップが現れる。中には茶色の液体が入っている。においから察するに、紅茶かなにか甘いものだろう。


「魔法って便利ですね。人間だったらお湯を沸かしてなんなりして、5分はかかりますよ」

「そうか? 僕は長生きだからあれこれできるだけだ。攻撃魔法や防御魔法とかは膨大な力が必要だから呪文を唱えなきゃいけないし。今のだって、お湯を沸かして注いで茶葉を入れて……そういう動作が、体が覚えるまで繰り返したからできるんだ」


 セロン様は人差し指をカップに浸す。普通の顔をしてやっているが、飲み物に指を浸からせるなんて、子どもしかやらない下品な行動だ。


「ほら、あんたも早く」

「えぇ? 血判を押すんゃないんですか」

「紙に書いたって仕方がないだろう。血の契約を交わすには互いの血を飲み込む必要がある」

「え、血を飲み込むんですか……汚い」

「文句を言うな。紙の契約書よりもよっぽど有効だ。破ったら、血が暴れ出し、耐えがたい苦痛に襲われる」


 そう聞いて、昨日の出来事を思い出す。団長の前で必死に腕を庇っていたのはこの契約のせいなのだろうか。


「これは甘くした魔法薬だ。この薬の中に血が薄く広まるから特有のあの味もしない。飲みやすいようにしておいた」

「甘いものがお好きなんですか?」

()()()()()()()()()()()()()()


 そう言いながらカップを押し付けてくる。片方には私も同じように指をつけた。もう片方を受け取る。指先にはピリピリとした痛みが残ってた。


「それじゃあ、始めるぞ」


 セロン様は杖を振る。


『アビス・セロン・ブロド。血の契約をここに』


 呪文を唱える声は耳の奥に響いてそのまま体の中に溶けていったような気がした。カップの中にある魔法の薬が発光する。


「どんな味がするのか、僕も覚えていないから一気に飲み干した方がいい」


 カップを持ち上げると、謎の湯気が立っている。さっき指をつけた時は冷たいはずだったのに。魔法って、なんだか不気味だ。


「最後に確認しよう。あんたは僕に協力すること。僕はあんたを傷つけないし、調査が完了したら、願い事をなんでも一つ叶えよう。いいか?」

「はい」


 これを飲んだら私の任務が始める。もう逃げられない。そう思うと、ほんの少しだけ怖くなった。王都に行くのを反対したお母さんとお父さんの顔が思い浮かぶ。


「飲まないのか?」


 すでに口をつけているセロン様は眉をひそめて私の方を見てくる。


「……苦いんですか?」

「飲んでみればわかる」


 そういうとキッチンの方へ消えていった。

 甘いもの、何かくれるかな。とにかく薬を一気に飲み込む。


「……にが」


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