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0.???年前

 冷たい水滴が頬に落ちて目を覚ます。夢であって欲しくて目を瞑ったが、再び頬に冷たいものが落ちた。

強く目を瞑って、もう一度開ける。

 そこは牢獄だった。石で作られている床はところどころに苔が生えており、天井の隅には蜘蛛の巣が張っていた。普段住んでいる森にはいない黒い虫が床を這いずり回っている。


 魔法使いとして数百年生きていればこういう経験をすることは何度かある。今回で3回目。どれも仲間に裏切られ、最大で50年は拘束されていた。まったく、嫌な経験だった。


「起きたか」


「お前は……」


 座り込む俺を鉄格子越しに静かに見下ろしているのはこの国の騎士団長だった。式典で数回顔を合わせた程度だったが、特徴的な顔の傷跡のおかげで記憶に残っていた。見下されるのは癪に障る。そのまま立ち上がれば、男とちょうど同じ高さで目が合った。


「ロペス。青の魔法使いと呼ばれ、恐れられていたとは思えないほど無様な姿だな」

「これは驚いた。この国の人間は、数々の戦いで力を借りた魔法使いを牢獄に閉じ込めることができるほど恥知らずだったとはな」

「黙れ。お前こそ立場をわきまえろ」


 男の瞳が怪しげに光る。目の前がかすみ、視界が揺らぐ。ふらつくのを抑えるために、何かを掴もうとするのに空ぶるばかりだった。これじゃあ、まるで無力な人間のようだった。

 杖に触れられないせいで魔法が使えない。魔法なんて使えればこんな人間、瞬きをする間に始末できる。様子を探ろうにもふらついてしまって仕方がない。


「お前、魔法使いじゃないのに、なんで魔法が使えるんだ」


 やっとのことで鉄格子に手をかけると、やっと酔いが収まる。団長の目は薄暗く濁っていた。


「濁り目か」

「ロペス。お前は確かに人間よりも長生きかもしれないが、ただ生きてきただけだろう。魔法のことしか知らない老体を酷使するのは気が引けるがこれもあのお方の命令だ」

「ふざけるな、俺はまだこんなにも若々しいだろうが!」


 そのまま続きの言葉を紡ごうとしたが、だんだんと口が閉じていく。体になにか、別のものが入ってきているように、生暖かい感覚が、指先から伝って、やがて体全体に広がった。


 嫌な予感がした。かろうじて自由に動く目を必死に動かして様子を探る。


「静かになったな。これからとある場所に向かう。手を後ろに持っていけ」


 ()は言われた通りに手を後ろにする。それを見た団長はほくそ笑んで、鍵を開けた。そのまま魔法が使えないように紋が刻まれた手枷を付けられる。


 今度こそ、死ぬのか。ここで。魔法を使おうにも使えない。

 俺は諦めて、団長についていくしかなかった。






 


 




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