8話 異世界へのゲート
アギエル達は城へ戻ると、すぐにアドラメルクに会う事にした。
玉座の間へ向かうと、アドラメルクが玉座に座り3兄弟を待っていた。
「親父、只今戻った」
「父上、戻りました」
「父さん、戻りました」
それぞれが挨拶し、「うむ。良く戻った」と言い、アドラメルクが頷く。
「奴は、元気にしていたか?」との問いに、アギエルが答える。
「元気でしたよ」
「そうか」
「ではまず、向こうで何を話したかを聞いておこうか」
「分かりました」
アギエルはアスタロトの側近であるヴィネから武技の教えを受けた事。父とアスタロト達がユグドラシルの世界へ行ったこと。ルシファーと戦った事。ルシファーについて。ユグドラシルへ行く為のゲートの存在。
そして、アスタロトから最後に言われた事は、アギエルはアドラメルクの指示に従う事、マルファスとボルタは、南の地に戻り武技を習得する事であると伝えた。
アドラメルクは「そうか」と言って暫くの間、何やら考え込んでいるようだった。
アギエル達は、何も言わずにただ待った。
アドラメルクが「うむ」と何かを決断した表情で頷き、話を始めた。
「お前達は、アスタロトから初めて聞いた内容に色々と驚きがあっただろう。魔族でありながら癒える事のないワシの顔の傷跡の理由。ユグドラシルの世界と魔界を繋ぐゲートの存在。それ以外にもワシから聞きたいことはあるのだろう」
アドラメルクは、3兄弟の顔の表情を伺いながら話を続けた。
「まずはゲートを見せてやる。ワシについてこい」と言って、玉座から腰を上げ立ち上がり、王の執務室へと歩き始めた。アギエル達は、何も言わずにあとについて歩いた。
王の執務室には隠し階段があった。本棚の一部を横へ移動すると地下へと続く階段があった。
アドラメルクは、無言のまま進んだ。
地下へと続く長い階段を歩くと、地下には大きな扉があった。
アドラメルクは、空間収納が出来るブレスレットから鍵を取り出し、扉を開き中へと入っていく。
扉の先はドーム型の広い空間があった。
薄暗い光の中、床には大きな魔法陣が描かれており、魔法陣の周りを8カ所に魔法石が置かれていた。
「ここがユグドラシルの世界へと繋がるゲートだ。異界に渡るには、異界を渡ろうとする者の膨大な魔力を必要とする。故に、誰もが利用できる訳では無い。アギエルなら問題ないが、マルファスとボルタは魔法石に魔力を貯めた状態で補う必要がある」
「この魔方陣に魔力を注ぎ込み、ゲートを開く。ゲートはすぐに閉じてしまうので、利用する場合には急いで開いたゲートへ飛び込まなければならん。飛び込めばユグドラシルの世界へと渡れるが、魔力を大幅に失っている状態でなければ、ユグドラシルの世界へ渡ることが出来ずに弾きかえされてしまう。つまり、ユグドラシルの世界へは、力が万全の状態で渡ることは出来ない」
「この魔方陣は、ユグドラシルの世界に住む世界樹を管理する者達からの教えだ。今から1000年ほど前にこの魔界に次元の裂け目がいくつかできた。その次元の裂け目から数人の亜人と呼ばれるものが現れた。彼らはワシらに救いを求めてきた。ユグドラシルの世界の崩壊は魔界にも及ぶことなどの説明を受け、ワシら数人がユグドラシルの世界に渡ることになった。次元の裂け目を通ると、どこの世界に飛ばされるのか分からない状況だった。だから彼らが城の地下へ特殊な空間を作り、ユグドラシルの世界へと渡るための魔方陣を作った。その時に、魔方陣を利用する為の注意を教えられた。」
「この魔界にたどり着いた者達は、魔方陣を利用するだけの魔力は持っていなかった。彼らがユグドラシルの世界に戻るためには、次元の裂け目を通るしかなかったが、戻れる可能性は低かった。その為、この地に残り生活をするしかなかった。ワシらがユグドラシルの世界に渡り、魔界に戻ってきたときには、彼らはすでにいなかった。西の地を目指して城を出たと聞いていたが、その後、彼らがどうなったのかは分からん。今でも生きているのか、子孫が存在するのか、全滅したのかは、いろいろと調べさせたが分からなかった」
アドラメルクは暫くの間、物思いにふけていた。
少しして、「すまぬな。話を続けよう」と言って話し始めた。
「魔界とユグドラシルの世界では、魔界に住む者たちの力の源である魔素が非常に少ない。ユグドラシルの世界では、場所により魔素の濃度が違う。魔力を回復されるためには、少しでも魔素の多い場所で回復を優先させる必要がある。だが、力を全回復させるまでに多くの時間を必要とする。そしてさらに厄介なのは、魔素が濃い場所には、魔獣などが住み着いているので、力を失っている状態で戦うのは簡単な事ではない」
「お前達には、ユグドラシルの世界やルシファーの件に関わらせたくはなかったが、そうも言ってはいられない状況になってきた。ワシは覚悟を決めた。お前達も最後までやりきる覚悟を持て」
「よいな?」
「「「 はい! 」」」
アドラメルクの問いに3兄弟は覚悟を持って頷く。アギエルとマルファスは、元々そのつもりでいた。ボルタは逃げ道を考えていたが、アドラメルクに気圧されてしまった。ボルタは内心「しまった」と思っていた。
「お前達はしばらくの間、魔力を使わない力を身に着ける努力をせよ」
「アギエル。お前はワシの古き友オリエンスが東の奥地に住んでおる。会いに行き教えを請え」
アドラメルクは、ブレスレットから剣を取り出した。
「これを持っていけ。これはユグドラシルの世界で戦った、ルシファーに魂を乗っ取られた勇者が持っていた剣だ。剣の名はエクスカリバーというらしい。お前に授けよう」
アドラメルクはアギエルに剣を渡した。
「ありがとうございます。精進します」
「マルファスとボルタは、南の地へ戻り、アスタロトのもとで武技を身につけてこい」
「「 はい 」」
「最後にワシから言っておくことは、ルシファーと対峙することになった場合は、絶対に一度引け!決して戦うな!今のお前達では決して勝てない。奴には不思議な力がある。奴から負った怪我は癒すことが出来ない。その理由はワシにもわからん。今は、力をつけ、備えることが大事だ」
「よいな?」
「「「 はい 」」」
アドラメルクは「では、準備をして行ってこい」と言って、3兄弟を送り出した。
アギエル達は、次の行動の準備をするために各自の部屋に戻るのであった。
アドラメルクは扉に再び鍵をかけ、執務室に戻るのであった。
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