4話 南の地
ヴァンスは城門の前で数人の配下達と今後の行動予定の打ち合わせをしながら、アギエル達が来るのを待っていた。
「すまない。待たせたな」
しばらくしてアギエル達一行がやってきた。
「アギエル殿下・マルファス殿下・ボルタ殿下。おはようございます」
「さて、アスタロト殿に渡して頂きたい物は、こちらにある王からの手紙と空間魔法が刻印されたブレスレットです。このブレスレットの亜空間内には、非常に純度の高い魔鉱石、それから西の地で作られた秘蔵のワインを10ダース用意してあります」
「わかった」
アギエルはヴァンスから手紙とブレスレットを受け取り返事をした。
「では、アスタロト殿の件は、よろしくお願い致します」
「ご無事にお戻り下さい」
「さて、南の地へゆくぞ!」
アギエルはヴァンスに頷き、一行の面々に声を掛けた。
「準備に問題はありません。行きましょう!」
「面倒だなー。僕、お腹が痛いかも。今日は外に出かけてはいけない病に体が侵され始めたかの知れない。きっとそうだ!」
「今かよ。そんな事あるわけないだろ!お前の魂胆は分かりやすい。あきらめろ。行くぞ」
「ちぇー。わかったよ。南の地から帰ってきたら兄上が持っている本を100冊ぐらい貰うからな!」
「100冊くらいならやるよ。なんなら、マルファスからも本を貰え。お前の為になる」
「やだよ。マル兄が持っている本は難しいものばかり。アギ兄の持っている本は読んで笑える簡単なものばかり。僕向きだね」
「俺は馬鹿にされている気がするけどキリがない。行くぞ!」
王子達は無駄な時間を消費した後、南の地へと出発した。
半日ほどの時間をかけて飛行した場所にアスタロトが住む城があった。
城の周囲には町も形成されている。そして、町全体を覆うように結界が張られていた。
さらに、城を囲む城壁だけでなく町全体を囲む第二の城壁ともいえる高い壁があった。
城へ向かうために、町の東西南北に位置する門を通らなければならず、飛行では辿り着けない。
アギエル達は門の前に降り立ち、徒歩で城へと向かうことにした。
「さてここからは歩いて城へ向かうぞ」
「仕方がないですね」
「えー」「面倒くさーい」
「しょうがないだろ。仕方がない。城に帰ったら俺の秘蔵、面白大全集5冊をやるよ。それで手を打て」
「わかった」
アギエル達は、門番に声をかけて門を通り町に入った。
「この地にも多くの魔族がいるなぁ」
アギエルがつぶやく。するとマルファス・ボルタも声にする。
「そうですね。私達の住んでいる場所と比べても遜色がないほど賑やかですね」
「そうだね。悪くないね」
しばらく歩いていると、とても大きな円形闘技場であるコロシアムがあり、会場入りする為に多くの魔族達が長い列を成していた。入り口付近では、いくつかの乱闘が起きているが警備兵らしき者たちに取り押さえられている。
「ここも、俺達のコロシアムとあまり変わらないようだな。魔族は元々血気盛んな奴が多いから騒ぎも日常茶飯事だろな」
「そうですね。こればかりは種族の定めなのでしょう。力を示せる場所を用意することも大切な事なのでしょう」
「僕は勝手にやってろって感じだけどね。でも、挑発してきたらお仕置きしちゃうけど」
3兄弟は思いを口にしていた。
コロシアムを通り過ぎてから暫く歩いたのちにようやく、城門の場所までたどり着いた。
「やっと着いたか」「門番、俺はアドラメルクの使者だ。アスタロト王に謁見を願いたい」
「ようこそ、お越し下さいました。只今、すぐに近衛兵をお呼びします。しばらくお待ち下さい」
「わかった」
アギエルは門番に声をかけ返答に頷いた。しばらく待っていると近衛兵が到着した。
「ようこそ、お越し下さいました」
「私はアスタロト王の側近の一人ヴィネと申します。私が玉座の間までご一緒します」
「俺はアドラメルクの使者、アギエルだ。よろしく頼む」
アギエルは挨拶を交わしたのちに城内へ入った。
玉座の間の入口まで来ると 「王の客人である。開けよ」とヴィネが扉の前で守護する近衛兵に声を掛け、アギエル達はヴィネとともに玉座の間に入る。
玉座にはアスタロトが腰かけていた。
アギエル達は玉座の間の中まで進み、片膝をつく。
彼らはアスタロトからの言葉を待った。
「よくぞ参った」
「まぁ、お前達なら固いことは抜きで良い。楽にしろ」
「ありがとうございます。ご健勝のようで何よりでございます」
「お言葉に甘えて、楽にさせて頂きます」
アギエル達はアスタロトからの言葉で立ち上がった。
「叔父上、お元気そうで何よりです」
「叔父さん、久しぶりー」
マルファスとボルタが挨拶をする。
「ははは。お前たちの顔を見るのは本当に久しいな」
「叔父上、親父から2点預かってきました」
アギエルは玉座のもとへ進み、アスタロトにアドラメルクからの手紙とブレスレットを手渡した。
「叔父上、ブレスレットの亜空間内に、純度の高い魔鉱石と西の地で作られた秘蔵のワインを10ダースが収納されているらしい」
「そうか。酒もあるのか。なかなか気が利くじゃないか」
アスタロトは満面の笑みを浮かべている。しかし、アドラメルクからの手紙を読み始めると顔つきがどんどん険しくなる。そして、アギエルに問う。
「この出来事は誠か?」
「はい。ベルゼブについては俺達3兄弟で対応しましたから本当の事ですよ」
「そうか」
アスタロトは少し落胆した様子であった。
しばらくして、気持ちの整理がついたのか顔つきに変化が見られた。
「ではまず、お前達の現在の力量を測らせてもらおう」
「コロシアムでヴィネと戦ってもらう。魔力開放と魔法攻撃はなしだ」
「ヴィネ!戦い方を教えてやれ」
アスタロトはアギエル達にヴィネと戦うように告げた。
「御心のままに」
ヴィネはアスタロトへ向き合い、片膝をつき片手を胸に当てながら頭を下げ答えた。
「「「 え? 」」」
3兄弟たちは一瞬唖然とした表情であったが、すぐさま諦めの表情に変わっていた。
「「「 やはりこうなるね 」」」
「よし、コロシアムに移動するぞ!」
アスタロトはニヤニヤしている。他にも何かを企んでいるようであった。
アギエル達は、アスタロトに逆らうことなく渋々コロシアムに向かうのであった。
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