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魔界の王子様 ― 異端児の目指す世界 ―  作者: ゴリさん
第1章 魔界編

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21話 転移魔法

昨晩も美味い食事と色々な種類の酒を飲んで楽しんだが、早寝をしたおかげで早朝にはスッキリした状態で目覚める事が出来た。しかし、フローラに会いに行くにはまだ早すぎる時間帯と思われたので、とりあえず融合魔法の確認を行う事にした。


外に出て森林の中を歩き、瞑想を行うのに適した場所を探していると、周囲よりも幹がとても太く大きな樹木が目についた。ちょうど樹木の根元に座り寄りかかっても問題なさそうなので、この場所で融合魔法の瞑想を行う事にした。


訓練で行った手順で瞑想していく。ゆっくりと周囲の生命エネルギーを感じ取り範囲を広げていく。生命エネルギーの大小を確認して気付いた事だが、俺が寄りかかっている樹木から感じる生命エネルギーがとても強かった。ちょっとした興味から寄りかかっている樹木に意識を集中させ融合を試みる。すると不思議な事に突然、この森林全体を鮮明に感じ取る事が出来るようになった。


意識をしなくても森林の中の様々な様子がはっきりと見える。


「何だこれは・・・」


森林の至るところで複数の色がついた細い粒子の流れが出来ている。その中の数カ所では、小さく輝いている光の粒のようなものもある。普通の状態であれば見ることも認識することもない。今この状態は俺にとってとても貴重な体験である。この森林には俺の知らなかった世界がある。慣れてしまえば何も感じる事がなくなるのかもしれない。この体験をフローラに話してみよう。この現象を知っていればきっと教えてくれるだろう。

俺は訓練をここまでにして一度部屋に戻ることにした。


部屋に戻ると朝食がすぐに用意され、食事を終える頃にフローラが部屋に来た。


「おはようございます。アギエル様。今日の調子はいかがですか?」


「おはよう。フローラ。調子は良いと思う。君はどうだ?」


「私も問題なく調子は良いと思いますよ」


「アギエル様は昨日の答えを早くお知りになりたいでしょうから早速ですが目的の場所へ移動しましょうか?」


「ああ。よろしく」


俺はフローラのあとについて移動する。目的の場所へ着くと数人のエルフ族の者達が忙しそうに何やら準備をしているようだった。


「アギエル様。そこの椅子にお座り下さい」


「分かった」


フローラはテーブルを挟んだ反対側の椅子に座ると俺をしばらく見てから話し始めた。


昨日にフローラが見せてくれた両腕に刻まれた模様は、転移魔法を無詠唱で行使する事を可能とする術式に由来するものであった。融合魔法の訓練状況から俺の腕にも同じように模様を刻めば無詠唱で転移魔法の行使が可能だろうと言う。俺にとってはとても素晴らしい話だった。


「アギエル様。答えを聞くまでもないでしょうが確認をさせて下さい」


「ああ」


「この転移魔法を正しきことに使うことをお約束下さい」


「もちろん。君達を守るための力として使うと誓おう。世界の破滅を阻止する為に俺には力が必要だ」


「分かりました。長老の父からも許可を貰っておりますのでご心配なく。では、始めましょうか?」


「ああ、頼む」


俺がフローラの質問に答えたあとにフローラは頷き席から立ち上がると、代わりに作業の準備をしていたエルフの一人が向かいの席に座る。


「初めまして。アギエル殿下。私が施術の作業を行わせて頂きますベルニカと申します。」


「アギエルだ。よろしく」


「早速ですが施術を始めたいと思いますので、両腕をテーブルの上に置いて下さい。作業の途中で痛みが伴うことがあるかもしれません。施術に必要な時間は一刻ほどとなります。宜しいですか?」


「問題ない」


「承知致しました。それでは始めます」


ベルニカはすぐに一緒に施術の準備を行っていたエルフ達に指示を出す。テーブルの上には黒い液体の入った壺と筆が置かれ、ベルニカには白い布が渡される。そして、その布で両腕を丁寧に拭き始めた。布には磨り潰した薬草らしきものが付着しているようだ。


両腕を拭き終わると筆に黒い液をつけて腕に模様を描き始める。ゆっくりと迷う事なく淡々と描いている。


暫くして両腕にはフローラと同じ様な模様が描かれた。その後、ベルニカは両腕を左右それぞれに触れることなく当て、微量な魔力を送っている。

先程黒い液体で描かれた模様が、うっすらと光りながら腕に定着していくのを僅かな痛みと共に感じられた。


「アギエル殿下。施術は無事に終わりました。後の詳細についてはフローラからお聞き下さい。私はこれで失礼致します」


「ああ。ありがとう」


ベルニカが席から立ち上がり別の場所へ去るとフローラが向かいの席に座った。


「施術は問題なく終わりましたね。では、外で実践訓練と参りましょうか?」


「ああ。よろしく」


俺達は森林地帯の奥地にある大きく開けた場所まで移動をすると、鬼人族の若者と思われる者が一人座って瞑想をしていた。俺達が近づくと彼は目を開きこちらを向いて立ち上がる。


「お初にお目にかかるアギエル殿下。私は鬼人族長老の子、名をラクシャサと申します。以後お見知りおき下さい」


「分かった。よろしく頼む」


「こんにちは。ラクシャサ。此処で待っていたのはどうして?」


「こんにちは。フローラ。転移魔法について親父殿から今朝話を伺ったので、アギエル殿下とフローラと共に戦闘訓練が出来ればと思い此処で待っていた」


「俺と戦闘訓練?」


「そうです。昨日の合成魔獣は以前の戦いより強くなっていました。今後もし想定よりも敵の数が増えたら、強力な力を持つ敵と対峙したら、私は皆を守る事が出来るのか、戦闘が終わってからずっと考えておりました。」


「そうか」


「先日の会議の時にアギエル殿下やアドラメルク陛下から感じた魔力の流れの大きさに私は衝撃を受けました。この森林に住む者達の中では多分私が一番力を持っているでしょう。でも、世界はとても広い。私はもっと戦う力をつけなければならない。私が今よりも強くなる為には、やはり私よりも強い者達と戦う必要があります」


「まあ、そう言う事ならその気持ち分からなくもない。俺は構わないが少し待ってくれ。転移魔法の習得を先に済ませたい」


「もちろん。そのぐらい待つ事は問題ありません。此処でお声がかかるまでお待ちしております」


「すまないな。できる限り早く習得出来るように努力する。と言うわけだフローラ。早速始めよう!」


「分かりました。簡単な説明の後ですぐに実践練習としましょうか?」


「ああ」


「今回の転移魔法は通常の方法と異なることはご理解頂いていると思います。転移したい場所を頭の中に意識する又は浮かべると同時に両腕に刻まれた術式に代わる模様に魔力を流す事により転移を可能としてくれるはずです。転移する距離は保有する魔力量と関係してきます。転移魔法を複数回使用すれば当然魔力を大幅に消費します。転移する距離が遠くなるほど魔力を消費するのも同様です。ですから、まずは近い距離から始めて下さい。徐々に距離を長くし回数を増やして魔力消費量の確認を行って下さい」


「分かった。短い距離から始めてみる」


俺は近場に意識を集中させ両腕に魔力を流す。すると瞬時に俺が望む場所へと転移していた。

転移を連続して素早く行う為に意識の切り替えを早くすることを心がけて転移魔法を行使する。

結構な回数の訓練が出来たので連続使用の要領も掴めてきた。次の段階として収納ブレスレットからエクスカリバーを取り出す。転移と同時に攻撃に移れるように訓練を行い、無意識でも有効的に動けるようにする必要がある。


多少時間がかかるかもしれないと思ったが、数回の転移で要領が得られた。幸い昨日のフローラとの実践経験があったおかげでどのように動くかのイメージを持ちながら動く事が出来た事が大きい。この後は丁度、訓練相手がいることだしより実践的な感覚を掴むことが出来るだろう。


「待たせたな」


「いえ。問題ありません」


「もう慣れたの?やっぱりアギエル様ね」


「フローラのおかげだ。感謝する」


「そう?なら、どう致しましてとお言葉をお返ししておきますわ」


俺はフローラに感謝を伝え、更なる特訓を前に高揚していた。


「ラクシャサ。始めようか?」


俺がもっと強くなるために。


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