11話 異世界人
アギエルは城へ戻り、王の執務室でアドラメルク王と王の側近ヴァンスに会い東の地で起こった出来事について話をした。
「オリエンスは、謎の魔族オルクスによって殺された。理由は分からないが、奴は彼の心臓を奪っていった。彼は死の直前、俺にこの魔剣とその使命を託した。それは、この剣をユグドラシルの管理者に渡すことだが、理由を聞く時間はなく、彼は塵となり消えてしまった」
アギエルは右腕に着けている空間収納のブレスレットから魔剣レーヴァテインを取り出した。
「そうか・・・」
アドラメルクはしばらくの間、鎮痛な面持ちで黙ってしまった。
「あ、あいつは・・・共にユグドラシルへ行った仲間であり友であった」
「頑固で偏屈な奴ではあったが、仲間思いの信頼出来る奴でもあった」
「グッ・・・クッソタレが・・・」
「親父・・・」
「オリエンスを助けることが出来なくてすまなかった。だが俺は彼から使命を託された。だが詳しい事が俺にはわからない。親父はオリエンスの使命については知っているのか?」
「詳しい事は知らん。ただ、世界の崩壊が始まる時にその剣には何か重要な役割があるらしい。その何かについても分からん」
「すべてはユグドラシルの世界へ渡り、世界の管理者に会う必要があるのだろう」
「そうか・・・」
「アギエル殿下。私から一つお話があります。よろしいでしょうか?」
「ああ、聞こう」
アギエルはヴァンスからの話を聞くことにした。
「魔界の世界には様々な種類の酒があります。特に西の地で作られた酒は、格段に品質が良く上品な味わいの物が多くあります。なぜ、西の地なのか。これには理由があったのです。今回、冥王の件で諜報活動を行っている者を全てを使ってあらゆる異変について調べさせました。どうやら、ベルゼブに関する問題が発生する少し前から西の地では次元の裂け目が現れていたという事です。森の奥地に出現したために発見が遅れたようです」
「酒と次元の裂け目がどうつながるのか、さっぱりわからないな」
アギエルにはヴァンスの話の内容が理解できなかった。
「アギエル殿下。重要なのはこれからです」
「西の地には、異世界の種族が住んでいたのです!」
「まさか・・・。ユグドラシルから来た者達か?生きていたのか?」
「そうです。アドラメルク陛下がユグドラシルの世界へ渡る前に、次元の裂け目を使ってユグドラシルの世界から魔界に来た者達です。彼らは西の地にある森の奥地に住んでいたそうです。今まで知られていなかったのは、彼らの種族の一部に偽装の結界を張れる者がいるようなのです。そして、彼らと交流のあった魔族の者が彼らについて秘匿し続けていたので、彼らが魔族に知れ渡ることがなかったのです」
「格段に品質が良く上品な味わいの酒。西の地の酒に高級品が多い理由。それは、彼らが長年作り出していた物だったのです」
「何故、これらの事実が今頃になって判明したかというと、次元の裂け目を発見したのが彼らであり、その意味を理解していたのでしょう。彼らが我々に会う事を望んでいるのです」
「そうか。では、俺が会いに行けば良いのか?」
「そうだ。でも、会いに行くのはお前だけではない。ワシとヴァンスも行く」
「え? 親父が? どうして?」
「ワシなら会ったことがある者がいるかもしれん。それから、彼らの様子を直接見たいのも理由ではあるな」
「わかった」
「では、陛下。アギエル殿下。出発は明日の早朝といたしましょう。西の地へは私の部下に連絡をさせておきます」
「準備は頼んだぞ、ヴァンス」
「はい。承知致しました」
「おい、アギエル。ワシの酒に付き合え。奴を弔うぞ」
「いいぞ。そのかわり上等な酒を出せよ」
「お前に上等な味などわかるのか?」
「喧嘩売ってるのか?クソ親父!」
「まあ、どうでもよい。行くぞ」
「ああ」
この後、アドラメルクとアギエルは夜更けになるまで大量の酒を浴びるほど飲み干した。
アドラメルクはアギエルに、オリエンスにまつわる多くの話を聞かせた。
アギエルにとってオリエンスは、わずかな時間しか関わっていなかったが、アドラメルクの喜怒哀楽の話を聞いてオリエンスの生きざまを考えていた。
託された約束とかたき討ち。アギエルは、今はただ酒を飲み続ける事で、己の心の中に渦巻く感情をなんとか抑えるのであった。
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