1話 魔界の異変
魔界。この世界においては力こそが全て。故に争いが無くなることはなかった。
しかしいつからか絶対的な力を持つ魔界の王が君臨し、魔界に様々な変化をもたらした。
世界の中心地に魔界の王が住む城があり、城の周辺には、王を慕う多くの魔族が住み、大きな町を形成している。
王は、配下にある者たちを守護しつつ、世界が破滅しないように日々世界の動向に注視するのであった。
今日も玉座の間には多くの配下が集められ、様々な問題に対する話し合いが行われていた。
いくつかの問題に対する話し合いが済んだ後、「ヴァンス。アギエル達はまだ来ていないのか?」と
王が言葉を発すると、側近の立場であるヴァンスが王に返答する。
「アギエル殿下はまだこちらへ来ておりません。3日ほど前から城内には殿下達の姿を見かけたものがおりません。すでに北の地へ向かい、問題を解決しているかもしれません。」
「そうか、ならもうしばらく待ってから動くとするか。」
「今日もお前達配下の者にはここへ集まってもらったが、北の地の問題については状況が大きく変わるかもしれん。すまないがその件については2日後に改めて集まってくれ。皆に今後の予定を話す」
王がそう告げ玉座から腰を上げ玉座の間から退くと、ヴァンスが「今日はこれで解散とする」と言い、王の配下達は王座の間から出て行った。
王の配下達の容姿は様々である。普通の人間と変わらない見た目をしている者。1カ所又は2カ所に角を持つ者。顔つきや体つきが動物のような者。それら以外の異形の姿を持つ者。性格的には好戦的な者が多く、そうでない者の割合は少ないが、配下の者達すべてが魔界の王に忠誠を捧げており、無益な争いが起こることが少なくなっていた。
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魔界の王が住む地域から遠い北の地では、王の息子である王子達と彼らの側近が様々な合成キメラの魔獣の軍勢と壮絶な戦いを繰り広げていた。
「毎度毎度思うのだが、どうして俺がこんな面倒な事に関わらなければならないのだ。セバス爺が早く問題を片づけてこいと口やかましいからとりあえずここまで来たが。本来俺は自由気ままに楽しく穏やかな日常をおくりたいのだが。何故だ!」
彼は戦いの最中に大きな声で周りで戦う者達へ相変わらずのボヤキを嘆く。
王族に長年仕えている執事のセバスに言われれば、いやだとは言えない魔界の第1王子アギエルであった。
「兄上、あなたはいずれこの世界の王にならなければならない。戦うことが嫌いでもこの世界に兄上の力を示さなければならないのですよ。いい加減、自覚して下さい!」
いつものごとく、第1王子は弟である第2王子マルファスに論される。
「そうですよ。兄上は勝手が許されないのです。僕が兄上の代わりに自由を満喫するためには重要な事ですよ」
第3王子ボルタは兄の犠牲の上で己の欲望が叶うと信じている。
「アギエル殿下、我々はあなたが誰よりも強い事を知っております。次の王にはアギエル殿下でなければこの世界は滅びるかもしれませんよ。今戦っているキメラ達は今まで戦ったことのあるキメラよりも数段力が増しております。問題が大きくなっている予兆です」
王子達の側近は第一王子であるアギエルを崇拝している。故にアギエルは彼らの期待に応えならざるを得ない状況にいつも陥る。
「この数とこの強さの魔獣はやっかいだねぇ。やはり、こいつらを生み出したのはいつもの奴かなぁ。100年の滅びと灼熱地獄の刑では奴の精神は改善されなかったということだな」
第1王子のアギエルは面倒だと思いつつ、事態の収束を図るため本気で力を開放することを決意する。
「このままでは一向にキリがない。俺の魔力を全開放する。皆はいったん後方へ退け!」
第1王子のアギエルは、第2王子マルファス・第3王子ボルタと側近達が後方へ退いた事を確認すると自身に膨大な魔力を纏わせる。
「我が裁きを下す。貴様ら全て滅せよ!メテオフォール!」
灼熱の炎に包まれた隕石群が広範囲に渡り降り注ぐ。全ての魔獣達は灼熱の炎に焼かれ塵となり消えていく。しばらくすると、辺り一面は焼け野原となり果てていた。
「さて、親玉であろうベルゼブを裁きに行くか。この地よりさらに北へ行けば奴の城があるはずだ!今度は1万年の滅びと大灼熱地獄の刑だな」
第1王子のアギエルがつぶやき、移動を開始する。
彼らはこの世界において、飛行手段で移動をすることが可能である。
彼らに翼などは生えていないが、魔力の力により空を飛ぶことを可能としている。
飛ぶ速さは魔力の開放値により変わり、アギエル達の最高速度は戦闘機並みの速度で移動が可能である。
戦闘跡地から北へ移動すると、禍々しい魔素に覆われた城があり、城全体には大きな結界が張られていた。
「どうやらここに奴がいると思うが、この結界はとても厄介そうだ」
第1王子のアギエルが言った。
「この禍々しい魔素はとても不気味ですね。どこからこんなに多くの魔素が集まっているのでしょう。理解出来ない現象が起こっています。親玉はベルゼブではないのかもしれませんね」
「兄上がパパっと倒せば問題解決。ちゃちゃっとやっちゃって早く城へ戻ろうよ」
第2王子が言うと、第3王子も言葉を口にした。
「本当に面倒な事が続くなぁ。でも、ここまで来たからには問題を解決させなければやっぱりダメだよな。しゃーない。とりあえず結界をぶっ壊して奴を捕まえる!」
第1王子のアギエルは方針を決めた。
「この結界はかなり厄介そうだが、俺の魔力の前では無力である事を教えてやる」
「魔力全開放!インフィニティ デトネーション」
アギエルの拳から放たれる無限の衝撃波と超音速燃焼波が大きな音を立てて結界を崩壊させる。
「さあ、奴を捕まえるぞ!」
アギエル達は城内へと移動する。
城内には、多くの魔族が待機していると思われたが、予想に反して魔族の反応が全くなかった。
城の玉座の間に向かうと禍々しい魔素を周囲にまき散らすベルゼブが奇妙な儀式を行っている最中であった。
ベルゼブがいる床には大きな術式が描かれており、所々にベルゼブの配下であろう魔族達の死骸が置かれていた。
「我は冥界の使者なり。我を邪魔する者はルシファー様の名のもとに裁きが下るであろう。即刻この場を立ち去れ!」
「「「 は? 」」」
アギエル達はこの場所の状況とベルゼブの言葉をすぐに理解することが出来なかった。
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