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第7話 テディベア、お祭りに行く

 お庭の白いテーブルの上、美しいとうきのポットとティーカップが、ところせましとケーキとサンドイッチがのった皿のよこでゆうがにたたずんでいる。

 天使のようにかわいい少女が、ケーキをのせたスプーンをおれの前にもってくる。


「はい、テディ。あーん」


 あーん。


「おいしい? テディ」


 うん。とてもおいしいよ。クリスティーナたん。おれ、しあわせー。


「お紅茶もどうぞ」


 はーい。


 といっても、もちろん、おれには口ものどもないし、ないぞうもないぞー、だから、実際には食べたりのんだりはできない。


 ケーキはとてもおいしそうだから、食べられたらなぁ、と思うけど。

 クリスティーナたんのえがおだけでも、おれはしあわせすぎて満腹だ。

 このえがおを、おれはぜったいに守るんだ!


 パーン パーン


 どこかから、はでな音がしていた。


「なんだろね? このおと」


 そばに立っている乳母のメアリがいつものきびしそうな顔のまま言った。


「お祭りの音でしょう」


「おまつり? わたしもいきたい」


「残念ながら、今日は外出はできません。奥様がご不在のままですので。奥様がお帰りになられるまで、お嬢様はお家にいなければいけません」


「えー。おまつりいきたーい」


「だめです」


 メアリは血も涙もない顔できっぱり言った。

 子どもなら、お祭り行きたいよな。

 クリスティーナたんは悪者に狙われがちだから、メアリがだめっていうのはわかるけど。

 どうせこの家にいたってねらわれまくりなんだから、お祭りくらいいかせてあげればいいのに。




 数時間後、おやしきの中。

 お出かけ着に着がえたクリスティーナたんがおれをかかえて、いたずらっぽい笑顔をうかべながら、口のところで人差し指をたてて、しーっとおれに言った。


「こっそりだよ。テディ。メアリにみつかったらだめだからね」


 え? お祭り行くの? クリスティーナたん。


 クリスティーナたんは小さなつえをふりまわして呪文をとなえた。


「カミゴエメナカイゴミメエウナシイロ!」


 クリスティーナたんはそのままろうかに出て、正面玄関にむかって歩いて行った。とちゅうでメイドのエリーとすれちがったけど、エリーはおれたちの姿が見えていないみたいだった。

 さっきのは姿をかくす魔法なんだね。


 さすがクリスティーナたん。

 こんなに小さいのに、いたずらするのにすごく便利そうな魔法を使いこなしちゃってる。


 クリスティーナたんは馬小屋に入りこみ、小さなポニーを馬小屋から出した。


「ポポ、まちまでわたしとテディをつれていって」


 ポニーは低くなってクリスティーナたんを背中にのせると、ポコポコ歩き出した。

 ポポのスピードはゆっくりで、歩くのとあまりかわらなさそうだけど、ちゃんとかってに進んでいく。


 そうして、クリスティーナたんはだれにも見つからず、ぶじにお祭りの行われている町までたどりついちゃった。

 クリスティーナたん、ちっちゃいのに有能すぎる。けど、かってに来ちゃってだいじょうぶかなぁ。


 クリスティーナたんはポニーに手をふった。


「バイバイ、ポポ。おうちにかえってね」


 ポニーはひとりで帰って行った。

 町には仮装をした人達がたくさんいて、広場では大きなたき火が燃えていた。炎の神様にちなんだお祭りらしい。

 大通りには出店がたくさんでていて、おいしそうなおかしやパンや小物を売っていた。


 クリスティーナたんの魔法はもうとけているらしく、お店の人達が次から次へと「おじょうさん、おひとついかが」みたいに声をかけてくる。


「たのしいね。テディ」


 うん。たのしいね。

 おれはクリスティーナたんの笑顔とお祭りの様子に夢中になって、いつのまにか心配するのを忘れていた。


 そのしゅんかん、突然、おれの視界がぐちゃぐちゃになって、おれはくるくるとまわって地面にたたきつけられて転がった。


「テディ!」


 牛のような(かぶと)をかぶった大柄な男がクリスティーナたんをこわきにかかえて、人ごみの中を走って行く。


 ああ、クリスティーナたん! 

 待てー!


 おれは、さらわれたクリスティーナたんを追いかけようと走ったけど、すぐに人の足にぶつかってはねかえされてしまった。

 人が多すぎて、うまく追いかけられない。それでなくても、おれの走るスピードはあの男よりずっとおそい。あっという間に人ごみの向こうにクリスティーナたんをさらった男の姿が見えなくなってしまった。


 ああ! どうしよう! クリスティーナたんがゆうかいされちゃった!

 おれがついていながら、おれには何もできなかった。

 おれが守るってちかったのに。


 おれが地面をたたいてくやしがっていると。


「あ、クマだ」


 おれの体が持ち上げられた。小さな子どもがおれをだっこしている。


「にいちゃん、このクマだっこすると、ポワンとするよ」


「え?」


 少し大きい子どもがおれをうけとって、だきしめた。


「ほんとだ」


「わたしも、わたしも」


 子どもたちが集まってきて、おれは次々に子ども達とハグをかわした。

 そして、気がついた。


 そうだ! スキルポイントだ。

 ハグしまくってスキルポイントをためたら、移動速度をあげられる。他にも使えるスキルがあるかもしれない。

 おれはみずから近くの人にとびついた。


 ハグ!


「きゃっ、なにこのぬいぐるみ?」


 ハグ!


「おふっ なんか気持ちいぃ……」


 オラオラオラー! ハグハグハグー!


「わぁっ」「あんっ」「あはっ」


 人はたくさんいるから、ハグしまくりだ。


 スキルポイントをためたおれは、移動力のレベルをあげて、それから、おぼえられるスキルを片っぱしからおぼえた。

 その中に「くまのついせき」というスキルがあった。

 そのスキルを使用したら、クリスティーナたんのいる方向がなんかわかるようになった!

 これで、クリスティーナたんを見つけられるぞ。


 まってて。クリスティーナたん。今、おれが行くから!


 おれは、クリスティーナたんのいるほうへむかって、全速力で走り出した。スキルのおかげで、だんだん、クリスティーナたんに近づいていくのがわかる。

 あのやぶをこえれば、クリスティーナたんがいる。


 おれはやぶを全力で走り抜けた。

 クリスティーナたんのすがたがみえた。


「テディ!」


 クリスティーナたん!


 おれはクリスティーナたんのむねにとびこんだ。

 よかった。ぶじで。


 ほっとしたおれは、なぜかどこかから、突きささるような視線を感じるのにきがついて、かおをあげて、あたりを見た。

 そばにジャックがいて、なんかおばけでも見るようにこっちを見ている。

 それから、むこうに恐ろしい顔でムチを手にして立っている乳母のメアリがいる。


 なんだ、あのふたりがクリスティーナたんに追いついていたのかぁ。

 それにしても、なんでふたりとも、あんな怖い顔をしてるんだろう。

 おばけでも見たみたいな顔で、おれの方を見ているぞ。

 と思ってから、気がついた。


 おれ、テディベア。さっき全力で走ってたよね?

 走ってるの見られちゃった.......?


 


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