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第6話 テディベア、幼女をたたきまくる

 モンスターがばくはつしたら、ベタベタしたむらさき色の液体がたくさんふってきた。


「うひゅっ! なんかくさい!」

「あーん。なんかベタベタするぅ」


 コルネ姫とジェーンが叫んだ。

 ベタベタするだけならいいけど、なんかジェーンの顔色がむらさきになっていくような。コルネ姫も、クリスティーナたんも。


「うぅ……」


 みんな苦しそうだ。

 あ、これ、毒? 

 クリスティーナたんたち、みんな毒にやられちゃったんだ。


 少女たちが苦しそうにたおれていく。コルネ姫の従者の男とクリスティーナたんの乳母のメアリが、あわてて走ってきた。

 コルネ姫の従者は顔をしかめて言った。


「これは大変だ。ブシュープーリーンの毒液だ。イヒヒヒ。あのモンスターは物理攻撃はきかない上に、魔法で倒すと破裂して毒液をふりまくんです。なんだってこんなところにブシュープーリーンが。イヒッ」


 なんだそのいやなモンスター。おれのうろおぼえなゲーム知識には情報がないぞ。

 メアリは取り乱して叫んだ。


「ありえない。ありえません! 敷地内にモンスターがでるなんて。しかも、ブシュープーリーンなんてレアモンスターが!」


 レアモンスターなのか。だからおれも知らないんだな。

 きっと、暗殺をたくらんでる人達がモンスターをはなったんだね。

 あ、そんなことより、はやくクリスティーナたんたちを回復しないと。


 ぽふっ ぽふっ ぽふっ


 おれが、こっそり、もこもこまるいお手々でクリスティーナたんをたたいているあいだ、従者の男はわざとらしい感じで頭をかかえてしゃべっていた。


「なんてこった。ブシュープーリーンの毒には特別な解毒薬が必要で、10分以内に投与しないと死んでしまうっていうのに。イヒッ」


 ぽふっ ぽふっ ぽふぽふっ


「クリスティーナ様! 今、屋敷から解毒薬をとってまいります!」


 メアリはそう叫んで走っていった。姫様の従者の男はわざとらしくなげき続けていた。


「なんてことだ。彼女がここから屋敷に行って戻ってくるころには、きっと、10分がたってしまう。彼女にはあの子たちは救えないだろう。イヒヒヒ」


 ぽふっ ぽふっ ぽふっ


「あぁ、なげかわしい。イヒヒヒ。こんな幼い少女たちが……イヒヒ……死んでしまうなんて……」


 従者の男はつぶやきながら笑っていたけど、なんか最後の方にはうなだれていた。変なやつだな。


 ぽふっ ぽふぽふっ


 毒から回復したクリスティーナたんはおきあがり、コルネ姫を見ておどろいたように叫んだ。


「コルネちゃん!」


 それを見て、従者の男はうろたえた。


「イヒ? なぜ、起き上がって……? そんなはずは……。ブシュープーリーンの猛毒は……」


 ふぅ。テディパンチの状態異常回復がきいて、よかった、よかった。

 念のため、もうちょっと、クリスティーナたんをぽふぽふ叩いておこう。

 かわいいクリスティーナたんにへんな紫色が残っちゃったらこまるもんね。


「コルネちゃん」


 クリスティーナたんはポフポフしているおれをだいたまま、全身紫色になって苦し気な息をしているコルネ姫のもとにちかよった。


「コルネちゃん、ぐあいわるいの?」


 クリスティーナたんはコルネ姫のそばにすわってかなしそうに言った。


 ふぅ~。今日はたいへんだなぁ。


 おれはクリスティーナたんのうでの中からすべりおりて、コルネ姫の上にのると、こっそりコルネ姫にテディパンチをくらわせた。


 くらえ、テディパーンチ! 


 ぽふっ ぽふっ ぽふぽふっ


「ううゅ?」


 あれ? クリスティーナたんの時より回復が早いな。コルネ姫はすぐに元の色にもどった。コルネ姫には毒耐性とか主人公補正とかあるのかな。


 コルネ姫はぱっちりと目をあけて元気よくおきあがった。


「コルネちゃん、よかった……」


「ジェーン! むらさきになってる! だいじょうぶ!?」


 クリスティーナたんとコルネ姫は、のこるひとり、ジェーンのそばにかけよった。


 はぁ、いそがしいなぁ。

 おれはジェーンの横におりて。


 テディパーンチ!


 ぽふっ ぽふっ ぽふっ ぽふっ ぽふっ ぽふっ ぽふぽふっ ぽふっ ぽふっ


「うぅ~……」


「ジェーン!」


 ジェーンがめざめて、クリスティーナたんとコルネ姫がよろこんでいる後ろで。


「な、な、なぜだ……、ブシュープーリーンの毒がきかないなんて。イヒーっ、バレる前に逃げねば」


 と、つぶやいて、あやしい従者は姿を消した。


 それから、15分くらい後。メアリがボサボサの髪の毛で服があちこち切りきざまれた状態で、とにかくすんごいぎょうそうで到着した。


「お嬢様ぁー! 途中でなぜか出現したモンスターのむれにおそわれておそくなり……お嬢様?」


 その時、おさない少女たち3人は何事もなかったように、草原でごっこ遊びをして遊んでいた。


 クリスティーナたんはふしぎそうにメアリにたずねた。


「メアリ。どうしたの?」


「お嬢様、ブシュープーリーンの毒は?」


 クリスティーナたんは、えがおでこたえた。


「どく? みんなむらさきになっちゃったけど、もとにもどったの」


「いったい、なぜ解毒薬なしに……?」


 ぼさぼさ頭のメアリは、たましいがぬけたみたいにぼうぜんとして、へなへなとその場にすわりこんだ。


 その間も、コルネ姫とジェーンはごっこ遊びを続行している。


「よくぞ、マオーをたおしてくれた。ゆうしゃよ」


 とジェーンが言うと、コルネ姫が言った。


「はい。おうさま。まおうとーばちのほうしゅうをください」


「うむ。やくそくどおり、ひめをおまえにやろう」


 そう言って、ジェーンはおれをコルネ姫にわたした。

 このごっこ遊び、コルネ姫が勇者役で、クリスティーナたんが魔法使い役で、ジェーンが王様役で、そしてなぜかおれがお姫様役なのだ。


「では、ひめさま。やくそくどおりけっこんしましょー」


 え? ちょっ、勇者様? 展開はやすぎ!


 と、おれが心の中でつっこんでいたら。


 チュッ


 キャーッ! 

 キスされたぁー!

 しかも、こんどは口にー!

 おれには、くちびるとかなくて、ただもふもふな布地に糸で線がひいてあるだけだけどぉ!

 うばわれちゃったー! おれのファーストキスがぁー!

 この勇者めぇー!


 いや、おちつけ、おれ! おちつけぇ! 

 ちびっ子にキスされたくらいでうろたえるなぁ! 

 キャーッ!


 ちなみに、あとで本物の姫様の従者がはだかでしばられているのが見つかったそうだ。

 暗殺者が従者にいれかわってたぽいってさ。

 なにはともあれ、クリスティーナたんになにごともなくて、よかった、よかった。


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