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第5話 テディベア、姫様にあう

 クリスティーナたんと弟のロビンには家庭教師が数人ついている。

 文字の読み書きとか歴史とかも習っているけど、魔法の家庭教師もいる。

 今日、クリスティーナたんは庭で魔法の練習だ。


「イホロノハオニノオタエマド、ファイヤー!」


 クリスティーナたんが呪文を唱えると、巨大な炎のかたまりが空中に出現し、銅像に向かって飛んでいった。


 ところで、あのすっかりすすけちゃった銅像、ご先祖様の像だって誰かが言ってたけど、魔法の練習台に使っていいのかな。

 家庭教師が、クリスティーナたんに全力の拍手を送った。


「すばらしいです。クリスティーナ様。ただのファイヤーでこれだけの威力をだすとは」


 おれのゲーム知識によると、この世界では、ファイヤーの上にメガファイヤーがあって、その上にギガファイヤーがあるはず。

 クリスティーナたんはまだ小さいのに、魔法のいりょくは天才的だ。ゲーム本編のクリスティーナはすごく強い魔法使いだったもんな。


「それでは、今日の授業はここまでです。クリスティーナ様、本日はお友達が遊びに来られるとか?」


「はい。きょうはおともだちのコルネちゃんがあそびにくるんです」


 コルネ? 

 どっかで聞いたことがあると思ったら。あのゲームの主人公の名前が、コルネ姫だった。

 そういえば、主人公とクリスティーナって昔から知り合いって設定だったっけ。


 数時間後、おやしきにコルネ姫が到着した。


「クリスー!」


 すごく元気のいい声でさけんで、コルネ姫が元気いっぱいに走ってきた。


「コルネちゃん」


 そういえば、コルネ姫って、おてんば姫って設定だったなぁ。

 だけど、この二人が、将来、戦い続けることになるなんて……。

 だきあっている少女二人の間にはさまれてむぎゅっと押しつぶされながら、おれは泣きそうになって決意した。


 このとうとい友情は絶対におれが守る!


 あ、泣きそうになったのは、押しつぶされてちょっと苦しいからだよ。早くどいてくれないかなぁ。コルネ姫。


 おれの心の声が聞こえたのか、コルネ姫はすっと離れてクリスティーナのうでからおれをとりあげた。

 ん? ハグする? ハグ経験値ゲット? と思ったら、コルネ姫の顔が近づいてきた。


「チュッ あ、ハクチョウだ! あっちにハクチョウがいるよ!」


 いぃ!? い、い、今、おれ、な、なななにげなく、ほっぺにキスされた!?  そ、そんなバカなぁ!

 いや、おちつけ。おれ。

 幼女のほっぺにキスくらいで、うろたえるな。

 幼女なんて子猫や子犬と同じだ! 犬にペロペロなめられたのと同じだ!

 だいたい、この世界では、ほっぺにキスはただのあいさつだ!

 おちつけ。おちつくんだ。

 ......ギャー! おちつけなーい!

 おれのファーストキスがうばわれたぁー! 

 あ、いや、ほっぺにキスってファーストキスには入らないか。ふぅ。


 おれの中でピュアピュアな全おれがどよめいていた中、クリスティーナたんの手の中におれを戻すと、コルネ姫はまったくむじゃきに庭を走って行った。


「まってよ。コルネちゃん~」

「コルネさま~」


 クリスティーナたんとコルネ姫の侍女のジェーンも、コルネ姫のあとを追いかけて走り出した。

 コルネ姫は、今日、従者の男と侍女をひとりずつ連れてきていた。

 侍女のジェーンは、ゲーム本編でもコルネ姫といっしょに行動していたけど、コルネ姫とあまり年齢の変わらないまだ幼い少女だ。

 従者の男は目つきが鋭くて、ちょっといやな感じがする。


 走って行ったコルネ姫は白鳥のいる小川近くで立ちどまって、子羊とたわむれだした。クリスティーナたんとジェーンが追いつくと、コルネ姫は言った。

 

「クリス、きょうはなにしてあそぶ? かけっこ? かり? バトル?」


「えーっと……その……」


 うわっ、この脳筋系姫様、せんたくしがちょっとおかしいぞ。

 インドア派のクリスティーナたんがドン引きしてるじゃん。どれもやだって言いたいのに言えなくて困ってるじゃん。


「じゃ、まずは、かけっこね。よーい、ドン!」


「もうつかれたよぉ~」


 クリスティーナたんの声を聞かず、コルネ姫は元気よく走り出した。


「ひめさま、まってくださーい」


 ジェーンもコルネ姫を追いかけて走っていき、クリスティーナたんはハァハァ苦し気に後をおいかけた。


 数十分後。

 コルネ姫におれ達は追いついた。コルネ姫はさわやかな顔をしているけど、クリスティーナたんは苦しそうだ。


「ふぅー。クリスちゃんのおうちのおにわはひろくてきれいだからランニングがきもちいいね。モンスターとかでてこないかな」


「はぁはぁ……モンスターは……はぁはぁ……いないよ……はぁはぁ……」


 この家、よく暗殺者とかゆうかい犯とかが出没するけど、さすがにモンスターはいないよ……と思ったら。


「キャー!」


「いたぁー!」


 でたぁー! 

 なんか人の4倍くらいに大きくて、紫色でぷよんぷよんしていて、うにょーっとした手がはえているモンスターが出てきたぁ!


「モンスター! とりゃぁー!」


 コルネ姫がさっそく突進していった。


「ひめさまぁ~」


 ジェーンもそう叫んで追いかけて行った。


 コルネ姫はモンスターをなぐったけど、モンスターのぽよんぽよんした巨体に跳ね返された。

 いくらゲームの主人公といったって、コルネはまだ子どもだもんな。

 ちなみにゲームの中のコルネは変身ができて、物理特化モードと魔法特化モードを使い分けられる。ちゃんと服装も変わるし変身シーンも用意されてたぞ。

 でも、まだ今のコルネ姫にはそういう力も戦闘能力もなにもなさそうだ。


「ひめさまぁ。このモンスターにぶつりこーげきはきかないのですぅー」


 ジェーンがまだ子どもなのに、しっかりした情報を伝えた。

 だけど、その時、紫色のうにょうにょした手がすばやく動き、コルネ姫とジェーンをつかまえた。


「はなせー!」

「うわぁ~ん」


 コルネ姫とジェーンは、うにょーっとした手に持ち上げられ、空中であばれているけど、何もできていない。


 まったく、しかたがないな。

 ここはおれというおとなの出番だな。

 テディ様にまかせろ! ……あれ、でも、おれ、テディベア、なにか攻撃スキル持ってたっけ?

 その時。


「ファイヤーボール!」


 クリスティーナたんが魔法をはなち、巨大な火の玉をくらった紫色のモンスターは苦しそうに動めいた後、コルネ姫とジェーンをはなした。

 さっすが、クリスティーナたん!


 だけど、次のしゅんかん、なんと、モンスターがばくはつした。



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