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第3話 テディベアVS毒薬

 おれは何回かジャンプして、ようやくドアノブをつかみ、ドアを開けた。

 ふぅ。小さなテディベアの体じゃ、ドアを開けるだけでも大変だ。


 でもスキルで移動力を上げたら、走れば、まぁまぁな速さで移動できるようになった。まだまだ、ふつうの人があるくよりもおそいけど。最初の秒速5センチは部屋の中を移動するだけでもかなり時間かかったからなぁ。

 それにしても、このおやしきはりっぱで、クリスティーナたんの部屋も大きかったけど、ろうかはもうどこまでも続いているように見える……のは、ちいさなテディベア目線だからかな?


 ろうかをテディベアが歩いている、なんて、いくらファンタジー世界でもあやしいだろうから、おれは人に見つからないように、こそこそかくれながら進んだ。

 部屋のそうじをしているメイドたちの声が聞こえてきた。


「陛下の具合はかなり悪いらしいねぇ」

「およつぎ争いでお館様も大変とか聞きました」

「そうさ。お館さまは第一王子殿下の盟友だけど、あたしゃ、心配だよ。本来は第一王子があとをつぐもんだけど、今、権力をもってるのは断然、第二王子の一派だろ?」

「第一王子は今のお妃さまのお子様じゃありませんもんね」

「こういった政争じゃ、暗殺もよくあることだから。おえらいさんたちは権力が関わるとなんでもするんだから」

「いやですね」


 どうやら、クリスティーナたんの家族が殺された理由は国王のあとつぎをめぐる争いにまきこまれて、だったらしい。


 おれはそのままあちこち歩いてこの階をだいたい見た後、階段をおりて下の階に行こうとした。

 ところが、階段を2,3段おりたところでおれは転んでしまった。

 

 うわぁーー! 転がる転がる! まるっこい体で手足が短いから、とまらなぃー! 目が回るぅー!


 階段を転がり落ちていったあと、いったん平面になったんだけど、おれは、そこで、誰かにけられて、ふっとんだ。


「うん? 今、なんかけっとばしたか? 気のせいかな?」


 気のせいじゃない! かわいいテディベア様が、お前にけられてふっとんじゃったぞ!

 と、おれは空中をとびながら、心の中でさけんだ。

 しかも、けっとばされて宙をとんだおれが頭から着地した先は、また階段だった。

 おれはころんころん階段をころがり落ちていって、しばらく床を転がってからかべにぶつかってとまった。


 うー。ひどいめにあった。

 でも、あんなにはげしく転がり落ちたりけられたりしたけど、けがはしていない。

 人間だったら大けがしそうだけど。

 HPとか存在しないテディベアだから、だいじょうぶなの?


 まぁ、いいや。探索たんさーく。


 このフロアはちょっとうす暗くて壁も床も粗末なつくりだ。使用人用の場所なんだろう。なべや食材がならぶ調理場らしきところや、倉庫らしき部屋がある。

 おれがどんどん進んで行くと、勝手口らしきところが見えてきた。勝手口のドアは開いていたから、おれはそこから外に出た。


 外には男が二人いた。

 ひとりは、コックっぽいかっこうをしているから、このやしきの料理人っぽい。もうひとりは、野菜をのせた手押し車のところにいるから、食材を持ってきた農夫っぽい。

 ところが。とつぜん、農夫の男が小さな杖をとりだして、呪文らしきものをとなえた。


「ゾネウムサレンネオムハレナ」


 料理人はふらっと倒れて地面の上で眠ってしまった。


「ちょろい、ちょろい。イヒヒヒ」


 とつぶやいて、農夫の男は料理人のおじさんのそばに行き、顔に手を当てながら「カヘランスシナンゼヘナンクシノン」と呪文をささやいた。

 すると、農夫の男の姿は、顔も服も料理人そっくりにかわった。


 本物の料理人をしばりあげて手押し車の中にいれてかくすと、あやしい変身男はやしきの中へと入っていった。


 うーん。あやしい侵入者が入って行っちゃったけど、これ、いいの?


 おれはあとをついていった。

 あやしい男は調理場へと入って行った。

 そこには、あわだてられたクリームと、もう少しで完成するつくりかけのケーキがあった。


「ちょうどいい。このケーキを猛毒エッセンスでしあげてあげよう。イヒヒヒ」


 そうつぶやいて、あやしい男はケーキに毒薬っぽいものをふりかけて、その上にクリームをぬっていった。


「いっちょあがり。さようなら。イヒヒヒ」


 そうつぶやいて、あやしい男は去って行った。

 おれは調理場のなかでぼーっと考えた。


 うーん。このままじゃ、クリスティーナたんやみんなが毒殺されちゃうぞ。

 あのケーキをどうにかしなきゃ。

 だけど、ケーキは高いところにあって、おれがジャンプをしても、手が届かない。

 

 おれはいすによじ登って、そこからテーブルによじ登ってみた。

 おれはテーブルのはしからケーキがある調理台にむかってジャーンプ! したけど、おれは床に落っこちた。

 くそー! あとちょっとなのに。ジャンプ力がたりない。

 おれが床でくやしがっていたら。


「あぁー、腹へった」


 そういいながら、若い男が入ってきた。使用人っぽい服を着ている。まだ十代後半くらいだろう。


「ピーターおじさん、何かおれに食べるもの……って、おじさん、いないのかよ。あ、ぬいぐるみが落ちてる……」


 若い男はしゃがみこんで、床にたおれているおれを見た。


「このぬいぐるみ、むっちゃ、かわいい!」


 若者はおれを持ち上げてほおをすりすりしてきた。


「ふわふわー」


 それから、若い男はおれをぎゅっとだきしめた。


 ぐふぅっ! ……おれ、つぶれてる! つぶされてる!


 こいつ、実はすごい力が強いぞ。

 骨なしのぬいぐるみじゃなかったから、全身ふんさいこっせつしているところだ!

 ところで、マッチョ少年にしめあげられたせいで、ぐうぜんおれの両手が頭のところにきて、ステータスが開かれた。


 スキルポイント2


 あれ? なんかスキルポイントがふえてる。

 ちょうどいいや。移動力をあげよう。

 おれは移動力をLv3にした。


 移動力Lv3(秒速2m、ジャンプ力(中))


 よし。さっそくジャンプしよう。

 おれは若者のむねを全力でけっとばした。

 するんと筋肉質なうでを抜けて、おれは宙をまった。

 そして、おれは、かれいにケーキの上に着地した。


 よっしゃ! バッチリだ!


 おれはぜんしんクリームまみれになりながら、ケーキの上でぐるぐる転がった。


 ぐーるぐる、ぐーるぐる!


「あぁー! ケーキがぁー!」


 マッチョ少年が叫んでいた。

 ケーキはぐちゃぐちゃ。任務(にんむ)完了!


「ちょっと! ジャック! なにしてるの!」


 少女の声が聞こえた。若いメイドが調理場の入り口に立っていた。

 マッチョ少年はおれをゆびさして、言った。


「おれは何もしてないよ。このテディベアが……」


「キャー! 大変! これ、クリスティーナ様の大切なテディベアじゃない! こんなにクリームまみれにしちゃって! ジャーック! なにしてんのよ!」


「おれは、ぬいぐるみをだっこしただけだよ! ぬいぐるみがかってにケーキにダイブ……」


「ばかいってんじゃないわよ! こんなにケーキをぐちゃぐちゃにしちゃって!」


 ジャックはメイドにひっぱたかれた。

 ジャックをたたきまくった後でメイドは全身クリームまみれのおれをいそいでせんたく場に連れて行って、ごしごし洗いだした。


「さ、しっかり洗わないとね」


 ぐふぅっ やめろっ そんなに、ごしごし洗うな! 

 ぐふぅっ おぼれる! おぼれる! 

 早く水からだしてくれぇー!


 って、おれは叫びつづけたんだけど、メイドに声はとどかなかった。さんざん水責めにされた後で。


「ふぅ。よくしぼらないと乾かないわ」


 ぐほぉあ! そんなに押しつぶすなぁ! 

 ギョエェー! ねじるなぁー! 


 ひどいごうもんを受けて、それから、おれは庭に干された。なわでしばられてせんたくロープにつるされて。

 何このしうち。

 ひどすぎる。

 何時間も干され、夕方になって、おれはメイドによってクリスティーナたんのもとへ返された。


「申し訳ございません。クリスティーナ様。このばかジャックがテディ様をクリームの中に落としてしまって」


「おれのせいじゃないんです。そのくまがケーキにむかってジャンプしたんです」


「そんなわけないでしょ! ばかジャック!」


 ジャックはまたメイドにひっぱたかれた。

 クリスティーナたんは、まだしめっているおれをメイドから受け取って、だきしめると、やさしく言った。


「テディもケーキをたべたかったの? こんどいっしょにおちゃかいをしましょうね」


 あぁ、クリスティーナたんは、やっぱり天使だ。


 ちなみに、本物の調理人は、おれが干されている間に発見されたらしい。

 その日のディナーはいまいちだったらしいけど、誰も毒にはやられなかった。


 ふぅ。おれ、いい仕事した。


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