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第2話 テディベア、スキルに気づく

 さっき会ったあの天使みたいな少女は、ゲームのクリスティーナより、ずっとおさない。

 どうやら、おれはあのゲーム本編の物語が始まる何年か前の時点にいるらしい。

 クリスティーナが悪い魔法使いにゆうかいされてひどい目にあわされる前の、まだ幸せな幼少期に。

 これから、どこかの時点でクリスティーナは家族を殺され、ゆうかいされてしまう。そして、その先、悲劇的で絶望しかない人生を送る……そんなの、いやだ!


 あのゲームをやっていた時からおれはクリスティーナ推しだったけど、そうじゃなくても、あんな天使のような笑顔を見た後で、あの子がそんなひさんな人生をたどるなんて、そんなのありえない!


 クリスティーナたんは、おれが守る!


 おれが決意をかためて、うでをあげると、鏡の中のテディベアも手をあげた。

 かわいい。かわいいけど、この現実……。


 おれ、テディベア。

 なんで? なんで、テディベアなの?


 でも、きっと、ファンタジーの世界だから、テディベアでも色々できるよね?

 転生特典、色々あるよね?

 そうだ、「ステータスオープン」って言ってみよう。

 言ってみたけど、ステータスは見えない。というか、声がだせない。

 ぬいぐるみだから、しゃべれない。うごけるけど。


 ゲームの世界だから、ステータスあるはずなのになぁ。

 うーん。どうやったらステータスが見られるんだろう。

 おれはこまって両手で頭をかかえた。

 すると、ピコンっと音がして、ステータスがあらわれた。


 え? このポーズでステータスオープンするの?

 てか、ステータスみるたびに毎回このポーズとるの?

 かわいかったけどね。鏡にうつっていたテディベアはかわいかったけどね。


 さて、おれのステータスは


 職業:テディベア

 HP:-、MP:-、

 STR:-、DEF:-、INT:-、AGL:-、DEX:-、CRI:-

 スキル:いやしのハグ(HP回復(小)、MP回復(小))

     移動力Lv1 (秒速5cm)

 スキルポイント:1


 なんかステータス、ぜんぶ横線だけなんだけど。

 どういうこと? これ。


 いや、でも、冷静に考えれば、テディベアって、プレイヤーじゃないし、敵キャラじゃないし、モブキャラですらない……むしろ道具とか背景オブジェクト……そっかぁ、道具だから、ステータスとかないのかぁ。

 って、なっとくできるかぁー!


 いちおうスキルはあるけど……。くっ。びみょうな回復スキルだけでクリスティーナたんを守らないといけないのか……。90年代RPGゲームにありがちな鬼畜(きちく)な難易度をはるかに超える無理ゲー……。


 いや、でも、おれは転生者。転生前のゲームちしきがあるじゃないか!

 この頭でがんばれば、きっとどうにかなる! 

 あー、でも、おれがゲーム開始前のクリスティーナについて知ってるのって、家族が殺されたってことだけ……


「テディー!」


 ドアが開いて、いとしのクリスティーナたんが帰ってきたー!

 クリスティーナたんはおれをぎゅっとだきしめ、おれをかかえて走りだした。


「お嬢様。ろうかを走ってはいけません」


「はーい」


 かぁいい。クリスティーナたん、かぁいい。

 このむじゃきでかわいい子が、あんな暗いぜつぼう的な目をした少女に変わってしまうなんて……。

 やっぱり、なんとしてでもおれが守らねば!


 決心しながら、おれがつれてこられたのは、子ども部屋だった。

 クリスティーナたんは弟のロビンとおれといっしょにおままごとを始めた。


「わたしはおかあさま、ロビンはおとうさま、テディはあかちゃんね」


 と、役をせつめいされた。

 そういえば、クリスティーナには弟がいたんだな。ゲームには出てこなかったから、きっとゲーム開始前に殺されてしまったんだろう。かわいそう……。


「あなた、いつかえってくるの?」


「いちゅになりゅかな。いまはこくおーへいかのこーけーしゃあらしょいでもめていて、いしょがしからな」


 ロビンは4歳くらいかな。まだまだしゃべるのが、たどたどしい。

 セリフはみょうにおとなびているけど。たぶん、ふだんそんなおとなの会話をこっそりきいているんだろう。

 おままごとをしているふたりを下からながめながら、おれは思った。


「バイバイのまえにテディをだっこしてね」


 クリスティーナたんはおれをロビンにわたして、ロビンはおれをぎゅーっとした。


 やっぱり、おれはこのふたりを守りたい。

 会ったばかりの子どもたちだけど、元のテディベアの心もあるのか、おれはとにかくこの子たちを守りたいって感じた。


 いや、この二人だけじゃだめだ。

 二人の両親も守らなきゃ。

 親のいない人生はつらいことが多いから。

 前世のおれみたいな思いはしてほしくない。

 この子たちには幸せな人生を送ってほしい。


 赤ちゃん役のおれがボーっとそんなことを考えている内に、メアリともう一人女性がやってきた。

 

「クリスティーナ様、ロビン様、お勉強の時間です」


 あの人は家庭教師みたいだ。


「はーい」


「テディはここに置いていってください」


「えー。テディもおべんきょうしたいよね?」


「テディはお勉強は嫌いです。さ、テディはここに置いて」


 うん。おれ、勉強はきらい。

 置いてって。

 人がいないすきに、こっそりあちこち見て回りたいから。


 家庭教師がおれをだきあげて、床にしかれていたタオルの上においた。

 クリスティーナたんとロビンは、しぶしぶ、おれを置いてお勉強しにでていった。


 子どもべやからは人がいなくなった。

 さぁ、でかけよう!

 今のうちに情報収集だ。


 おれは、むっくりおきあがって、そーっと子どもべやをぬけ出ようとした……んだけど。

 あれ? ドアノブがとっても高いところにあるぞ? 

 おれ、テディベア、とても小さいから、手がぜんぜんドアノブにとどかない。

 ジャンプしようとしても、ぜんぜんジャンプできないし、それどころか、ころんとうしろにひっくり返ってしまった。


 こまったぞ……。テディベア、ドアも開けられないなんて。これじゃ、へやのそとにでられなーい。

 おれはすわりこんで頭をかかえた。

 頭をかかえたひょうしに、もういちどステータスが見えた。


 職業:テディベア

 HP:-、MP:-、

 STR:-、DEF:-、INT:-、AGL:-、DEX:-、CRI:-

 スキル:いやしのハグ(HP回復(小)、MP回復(小))

     移動力Lv1 (秒速5cm)

 スキルポイント:3


 ん? よく見ると、スキルポイントっていうのがある。

 そういえば、このゲームは、スキルポイントでスキルをおぼえたりレベルアップさせたりするんだった。

 ステータスの成長は固定で、レベルアップするごとに勝手にステータスがあがっていくから、自由に選べて重要なのはスキルなのだ。

 スキルポイントはレベルアップ時に1つしか増えないから、しんちょうに使い道を選ばないといけない。


 スキル……移動力Lv1 (秒速5cm)ってとこの横に、よーく見ると、うっすらかすかに「次のレベル必要スキルポイント2」という文字が見えた。

 スキルポイントで移動力があげられるっぽい。スキルポイントを2……使うしかないな。

 秒速5センチじゃ生きていけないもん。ろくに動けやしないもん。

 ま、ぬいぐるみはふつうは動かないんだけど。


 おれは丸っこいぬいぐるみのおててを動かして、スキルポイントのところを押して、レベルをあげたいスキルのところを押した。指がないから、おしまちがえそうで大変だ。

 移動力のスキルが上がった。


 移動力Lv2(秒速50cm。ジャンプ力(小))


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