第15話 テディベア、海を見る
暗い夜道を歩いていってしばらく。周辺のふんいきの悪い、あまり家の多くない一画で男は立ち止まった。
「ここだよ。おじさんの家は。むふふふふ」
クリスティーナたんたちは、小さなきたない家の中にいれられた。
あやしいおじさんの他に家族が住んでいる感じもない。
これ、やっぱ、まずいぞぉ。
「みゃー。つかれたみゃー」
ミャオリーはなにもうたがってなさそうに、ねむそうにそう言って、のびをした。
「先にベッドで寝ていていいよ」
あやしい男はニタニタ笑いながらそう言ったけど、ベッドは一つしかない。
ミャオリーはベッドにとびこんで、「このふとん、くさいみゃー」とむにゃむにゃ言っていた。
どう見ても、これ、やばいやつ。
一刻も早く、クリスティーナたんをここから脱出させねば。
おれはクリスティーナたんをぽふぽふたたいて、ドアの方に手をのばした。
「どうしたの? テディ」
おれはクリスティーナたんからとびおりて、ドアにかけよった。だけど、ドアは開かなかった。ドアはかんぬきでしめられている。さらに南京錠もついている。
「フフフフフ。おじょうちゃん。ここから逃げられると思うなよ?」
あやしい男が上半身はだかになりながら、そう言ってニタニタ笑った。こいつ、さっそく本性をあらわしたな。
「みゃー? うみゃむみゃ……」
なのに、ミャオリーはベッドの上で丸くなってねむりかけている。
つかえない護衛め!
ここはやっぱり、おれの出番!
おれはあやしい男にむかってジャンプした。
ベアハッグ! ……と思ったんだけど、おれは男にうでで振り払われた。
えー! ベアハッグって、ふせがれちゃうこともあるのー?
ふりはらわれたおれは、ぽーーんと飛んでいった。
「テディ!」
「フフフフフ。さぁ、おじょうちゃ……」
クリスティーナたんがさけんだ。
「テディをいじめないで。イホロノハオニノオタエマド、ファイヤー!」
男が大きな火の玉に包まれた。
「うぐぅぉおーーーーっ」
そういえば、クリスティーナたんって天才魔法少女だった。
ただのファイヤーなのに、すごい火力だ。
これ、あの男を焼き殺しちゃうかも……
数秒後、炎は消え、男はこんがりやけど状態で床に倒れていた。
おれは、おそるおそる、こげくさい男にちかよって観察してみた。
うん、死んではいないな。かろうじて、息はしている。
にしても、さすが、クリスティーナたん。未来の天才悪役魔法少女。
こんなにちっちゃいのに、ザコだったら、今でもしゅん殺できるんだね。
クリスティーナたんはベッドで寝てしまったミャオリーをゆさゆさゆすった。
「ミャオリー。おきて」
「みゃー?」
クリスティーナたんは、ねぼけているミャオリーにもうしわけなさそうに言った
「ごめんね。あのね。あのひとがテディをいじめるから、まるこげにしちゃったの」
「みゃー?」
ミャオリーはあくびをしながらのびをして、それから床に倒れている男を見た。
「どうしよう……」
心配そうなクリスティーナたんに、ミャオリーはあかるく言った。
「ミャー。だいじょぶミャー。よくあることミャー。気にしなくていいみゃっ。こういう時は、逃げるみゃっ。」
よくあること? と、思ったけど。
ま、ここはいますぐ立ち去るのが一番だよな。
まるこげ男は自業自得だし。
ミャオリーがカギをあけて、ドアをあけ、二人とおれはの、夜空が広がる戸外に出て行った。
だけど、家の外に出たら。おれたちは、すでに黒い服でふくめん姿の怪しいやつらにとりかこまれていた。
ふくめん達のリーダーのような男が言った。
「ミャオーテ、貴様は何をしているのかな? イヒッ」
「みゃー………」
こいつら、暗殺者ギルドの奴らだ。
ミャオリーひとりじゃどうしようもないだろうし、これは、さすがにまずい。と、おれが思っていたら。
変な奴らが乱入してきた。
「ややややや? 闇夜にまぎれて逃げようと思ったら、でやんす!」
「みちゃっただす! ちっちゃな女の子とクマさまがいじめれてるだす!」
「よよよ、くまちゃまをいじめるやつは、あたしたち正義の悪党、アマードロ一家がゆるさないよ!」
なんか、元気よくアマードロ一味がでてきたー。
あの三人は、町についたあと、けいさつにつれていかれたはずだけど。逃げ出してきたようだ。
「くま様を、助けるでやんす!」
「まもるだす!」
「さぁ、やるよ、あんたたちー!」
助けてくれるなら、なんでもいいけど。
「イヒッ? 変なやつらめ。やってしまえ!」
暗殺者たちは、いっせいにアマードロ一家におそいかかった。
「あーれ~!」
「でやんす~!」
「だす!」
三人組はあっという間にやられて、逃げだした。
いつ見ても、やっぱり弱いなぁ、あの3人組。
だけど、実は、アマードロ一家が逃げ去った時には、ふくめんの暗殺者も一人を残して全員地面にのびていた。
「イヒーッ! ミャオーテめ!」
一人残った暗殺者のリーダーっぽいやつはくやしそうにじだんだをふんでいる。
敵がアマードロ一家に注意をむけているすきに、ミャオリーが背後からどんどんたおしちゃっていたのだ。
アマードロ一味は、おとりとして役にたってくれた。
「ミャオーテ! 貴様! 仕事がなくて路頭に迷っていたお前をすくってやった恩を忘れたか!」
ミャオリーは耳のうしろをかきながら言った。
「みゃー。たしかにあの時はコンニールとギルドにたすけてもらったみゃー。でも、ミーはくま様とクリスティーナが好きなんだミャー。だから、ごめんだみゃっ」
「気まぐれミャオめ! おぼえていろよ! イヒーッ!」
暗殺者ギルドの男は逃げ去った。
ふぅ、これで一安心。
と思ったんだけど、その時。
「脱走者は向こうに逃げていったぞ」
って声が聞こえてきた。アマードロ一味を追いかけてきたけいさつっぽい。
おれたちは関係ないから堂々としていればいいはずなんだけど、なぜかミャオリーが、
「ミーたちも逃げるみゃっ」
と言って、クリスティーナたんをつれて逃げ出した。
クリスティーナたんは、さっき男をまるこげにしたから、悪いことしたっておもいこんでるのかも。
完全に正当防衛だったけどね。
「ミーは夜も目が見えるからまかせてみゃっ」
そういうミャオリーを信じて、暗い夜の町を走り続けてしばらく。
波の音が聞こえて海のにおいがこい場所、たぶん港に入りこんだ。
さらに進んで行き、なにかのたてものっぽいところに入ったところで。
「ここに朝までかくれるミャー」
ミャオリーはそう言って、そこにある大きなぶあつい布らしきものをもちあげた。
ミャオリーとクリスティーナたんはそのおおいの布の中に入って、箱の間にかくれた。
どういうばしょかよくわからないけど、たしかにこの布のなかにかくれていたら、みつかりそうにない。
気温もちょうどいい。
はぁ、つかれた.....。
おれたちはみんなすっかりつかれていたから、すぐに眠ってしまった。
ZZZZZ......
んー
ゆれてるー
ゆれてるなー
ゆれるイス?
ゆりかご?
とか思いながら、おれは目ざめた。
光がさしこんでいて、海の臭いがする。
そっか。おれたち、港にかくれたんだった。
あれ? クリスティーナたんがいない。
あ、クリスティーナたんはおおいの布の外に出てるぞ。
クリスティーナたんの足だけ見える。
おれはクリスティーナたんのところにいくため、もぞもぞと布の下からはいでた。
「テディ……」
クリスティーナたんは布からでてきたおれをだき上げた。
けしきがよく見える。
海鳥が飛びかう大きな青い空と、広い広い青い海。
海は広いなぁ、大きいなぁ、.......あれ? 海、広すぎない? どこを見ても海しかない......
クリスティーナたんはおれをだっこしたまま、ぼうぜんとした声で言った。
「どうしよう。テディ。わたしたち、うみのうえにいるよ?」




