第14話 テディベア、強盗にハグ
ガタゴトガタゴトゆれながら、馬車はずっとはしって行った。
林とかが続いていて、外をみていてもあまりおもしろくない。馬車の中には、他にも人がのっているから、おれはぬいぐるみのふりをして、とまっていないといけないし。
ひまだなー。あきたなー。
あ、夕焼け空がきれいだなぁ。もう夕方かぁ。
と、おれが空をながめていたら。とつぜん、馬のいななきが聞こえ、馬車がおおきくゆれて、止まった。
「な、なにがおきたんだ?」
とお客さんがざわついている。
「見てくるみゃっ」
と、ミャオリーが一番に言って、馬車からとびおりた。
クリスティーナたんもそれにつづいて馬車をおりた。
おりるとすぐに、馬車の前にたちふさがるようにいる、とくちょうてきな三人組のシルエットが目に入った。グラマラスなお姉さん、カピバラ人間、インコ人間.......あー、あの3人組だ。
「ばしゃばしゃ馬車といえばぁ?」
「水浴びでやんす! 」
「あ、バシャバシャ水浴びきもちいーわー、って、ちがうでしょっ!」
「あ、そーだったでやんす! バシャバシャ馬車強盗でやんす!」
「アマードロ一家の登場だす!」
なんかまんざいみたいなことしながらアマードロ一味がまたでてきたー……。
「ここはミーにまかせるみゃっ」
ミャオリーの声が聞こえた3秒後、アマードロ一味の三人は、早くも地面に転がっていた。
「う、うごけないよぉ……」
「か、からだがしびれるでやんす!」
「こりゃもうだめだす!」
暗殺成功率0%の元暗殺者ミャオリーは、とくいげに言った。
「とくせいマヒ針みゃっ!」
「すごいね! ミャオリー!」
クリスティーナたんがミャオリーをほめて手をたたいた。
ミャオリーって、あっさりおれにふみふみされてたけど。実はほんとに強かったんだなー。
馬車の運転手さんが、せっせと動けないアマードロ一味をひもでしばりあげた。
あっというまに一件落着。
ミャオリーがうるさくいった。
「ミャー! くまさまー! ミーに、ごほうびハグちょうだいみゃっ」
しょうがないなぁ。おれはミャオリーにハグしてやった。うん、ふわふわ。ミャオリーの毛っていつもふわふわ。
「ミャ~。ポワンとして最高ミャー」
それを見ていたアマードロ一味が言った。
「な、なんだかとってもきもちよさそうでやんす」
「気になる、気になる、大きな木みたいに気になるねぇー」
「テディベアに、ハグしてみたいだす」
なんか、すんごい視線を感じるー。ま、せっかくだから、こいつらからもハグ経験値をもらっておくか。
それに、猫人のミャオリーがすっごくふわふわだから、インコ人間とかカピバラ人間も、どんなさわりごこちか気になるー。
というわけで、おれはアマードロ一味にハグをしていった。
ふわっ ……インコ、やわらかっ
「はうあ、こ、心が、あたたかいでやんす」
ごわっ ……カピバラっていがいと毛がかたい。
「ポワンとするだす!」
むにっ ……おっおとなのおねえさんっ
「は、はわっ、む、胸が熱く……こ、これは、恋?」
さて、しばりあげたアマードロ一味ものっけて馬車はまたぶじに走り出した。
ところで、他の乗客もようすをみていたらしく、馬車にもどったら、おれが動くことがばれていた。向かいの席のおばちゃんは言った。
「それ、ぬいぐるみじゃなかったんだねぇ。かわいいペットだねぇ。なんていう生き物だい?」
「テディだよ」
「へぇ。きいたことのない生き物だねぇ」
というわけで、おれはもうペットのテディとして、自由にうごくことにした。
しばらくして、ぶじ馬車はプーマスの町についた。
プーマスは港町で、空をカモメがとんでいた。
そのとびかうカモメを見て、ミャオリーが言った。
「そうみゃっ。メアリが心配してるかもしれないから、家にカモメールを送るみゃっ」
「カモメール?」
「カモメール、しらないみゃー? ほら、あそこにカモメールとペリカーン便のお店があるミャー」
郵便屋さんみたいなお店があって、そこの3階あたりにある大きなまどから、カモメやペリカンが中に入っていく。
よく見ると、あのお店にでいりしているカモメやペリカンはカバンをかけていて、ただの鳥じゃない。
クリスティーナたんはうなずいた。
「うん。メアリはきっとしんぱいしてるから、おてがみをおくるね」
うーん。しんぱいなんてもんじゃないだろうなぁ。いまごろ、クリスティーナたん行方不明、ってなってておうちはたいへんだろうなぁ。
しかも、別の町から手紙が届いたら、びっくりするだろうなぁ。
カモメールのお店では、受付の人も鳥人だった。手紙もそこで売っていたから、クリスティーナたんは、手紙をかって、
「おとうさま、メアリ、しんぱいしないでね。ミャオリーといっしょにおかあさまをさがしにいくの。 クリスティーナ」
と書いてカモメールでおくった。
それから、宿屋を探したんだけど。これがうまくいかなかった。
「今日はもういっぱいだよ」とか、「うちはミャオは泊めないよ」とか言われて、宿がなかなか見つからないのだ。
広場のふんすいのところにクリスティーナたんとミャオリーはすわった。きれいな公園だけど、もうあたりはすっかり暗くなっている。
「こまったね」
「みゃー。宿がみつからないのはミーがきらわれ者だからみゃー」
ミャオリーはすっかりしょげかえっていて、耳までたれさがっている。
「ミャオリーのせいじゃないよ」
「クリスティーナはやさしいミャー。でも、みんなミャオのことが嫌いみゃー」
たしかに、ミャオ族はあちこちできらわれているみたいだ。馬車にのるときもことわられかけたし、宿屋でもことわられるし。
その時、ふとった男がちかづいてきて、話しかけてきた。
「おじょうちゃんたち、泊まるところがなくて、困ってるの? 家出? うちに泊めてあげようか? むふふふ」
「いいのかみゃっ?」
ミャオリーはパッと顔をあげ、ふとった男はニタニタと笑った。
「うん。とめてあげるよ」
「やったみゃっ!」
ちょっと待てぇい!
見知らぬ男の家に泊まるとか、そんなのだめだめ。
犯罪のにおいしかしない!
テディさんは許さないぞ!
「さ、うちにおいで」
ダメダメダメー!
知らないおじさんについてっちゃだめだから!
こいつぜったい犯罪者だから!
おれはあばれたんだけど。
むくなクリスティーナたんとおばかなミャオリーは男を信じてついていってしまった。




