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始まり。
いつもと変わらない朝が来た。
鳥の声が響き、風鈴が揺れ、神社の境内に光がさしこむ。
見渡せばそこには、いつもと同じ景色が広がっている。
そんな普通の朝に、全てが変わった。
霊夢は、いつものように手をかざし、お祓い棒を手に取る。
指先が、ぴたりと止まった。
そこにあったのは、完璧に整った日常に紛れ込んだ、小さな異物だった。
違和感の正体はすぐにわかった。
けれど、彼女はそれを認識するのを拒んでいた。
霊夢は眉をひそめながら、お祓い棒を握りしめ、ゆっくりと手を振った。
しかし、何も起きない。 空気は動かず、結界の気配も霊力の光も、どこにもなかった。
「......おかしい。」
そう呟いて、もう一度お祓い棒を構える。 必死に霊力を流し込む感覚を思い出そうとする。
けれど、何も掴めなかった。
頭の中がじんわりと冷えていく。
まるで世界が彼女を見放したかのように、力は消えていた。