自然状態の問題点とそれを解消するための政府の設立方法について考察する。
次は、なぜ、そしてどのように政府ができたのかについて考察する。
この自然状態には、社会的分業が成立せず非効率な労働しかできないという弱点があった。故に人々は、社会的分業を成り立たせるために通貨、および通貨を管理する主体としての政府を求めた。
故に人々は社会契約を結び、政府を設立した。この時、人の自由を侵害したものを裁く権利は政府に委ねることとなった。そして、この時点では誰のものでもない土地を政府の所有にし、政府が所有する土地を使用する人に対して土地の使用料(地税)を求めた。また通貨を介して自身の労働力や所有物を売る人や法人に対して、そのことで発生する利益や収益に対して税金(消費税や所得税、法人税など)を課した。そしてこの税金は政府が発行する紙幣で支払われる必要があるものとした。さらに、政府が発行する紙幣の偽造は重罪とした。そして、政府は、人の自由と権利を守るために警察官を雇った。その警察官には政府が発行する紙幣が支払われた。また、国民には一定の額の政府が発行する紙幣が支払われた。
こうすることで、土地を利用したい人とそうではない人たちとの間で、また単純に人の所有物が欲しい人たちの間で所有物や労働力の売買が行われるようになった。この時初めて、人々は市場に参加する権利を得ることができた。
また、政府が国民の権利を奪わないようにするために政府は民主的に運営されるものとし(参政権)、さらに国民には自分たちの権利が政府によって侵害された時に政府を倒す権利(抵抗権)が認められた。民主主義的な政府が設立される理由は、権威主義的な政府の下では国民は権力者に生殺与奪権を握られてしまうからである。権威主義的な政府では権力者の道徳観次第では国民の自由と権利は守られないという問題点があるため、国民の自発的な社会契約では民主主義的な政府しか作られない。故にここで作られる政府は必ず民主主義的な政府となる。
ところで、民主的な政府が成立するためには教育が必要不可欠である。文字が書けない国民がいたら選挙が成り立たないし、有権者が政治的な知識を知らなければ選挙の候補者の言っていることがわからないためまともな選挙が成り立たないからだ。故に政府には国民の教育を施す義務が発生した。(国民にとっては、教育を受ける権利が発生した。)
ところで、納税の義務は国民の権利を侵害してはいないのだろうか? 実際には、国民の権利は侵害されていない。なぜなら、多くの土地は労働の産物としては獲得できないものであるので多くの土地に対しては所有権は主張できないし、また所有物の所有権の中には所有物を売買する権利は含まれていないからだ。所有物を売買する権利は市場に参加する権利の中に含まれているが、市場に参加する権利は税金の支払いを前提にしている権利である。故に納税の義務は国民の権利を侵害していない。
政府があることで成立する権利は以下のものがある。
・市場に参加する権利
・参政権
・抵抗権
・教育を受ける権利
逆に、政府に委ねられた権利は以下のものである。
・人の自由を侵害した人を裁く権利