第 壱 章 中学一年生 放課後の教室で担任教師と
第 壱 章
中学一年生 春 6月上旬
姫魂冥衣花は放課後
担任の神楽神子(23才)先生と話していた
その時、冥衣花は中学一年生。学校に入学してすぐだった
めいかは神子先生に言った
「みこ先生、来週から始まるプールの授業ですがわたしだけ
プールサイドにいてもいいでしょうか」
「いいよ、当日でも言えば見学できる
休んだ分はまとめて夏休みにしてもらうから大丈夫」
「今年の夏は、ご厚意に甘えプール、遠慮しておきましょう」
「ご厚意に甘えて遠慮するねって言うとあざとくて可愛い感じするし、
ここはお嬢さまな雰囲気の女子校だからその立ち居振る舞いは素敵ね
でもダイレクトに言うと、わたしプールさぼりますってことよね」
「サボると言うとダイレクトなので、今年プールの授業お気持ちだけ頂きます、
ありがとうございました、という相手に配慮する和のこころで」
「入りたくないってこと?めいかちゃん」
めいかは言った
「さらに遠回しに言うならば、
あなたの事、お友達としては好きだけど、
わたしたち今の関係のままの方がいいと思わない?」
「遠回しじゃなくていいのよ、お断りの内容にさっき異性の好意は
なかったね。そういうセリフ言ってみたいね
でも体育の先生をがっかりさせたくないっていう、めいかちゃんの思いやりは
わたしもよく分かるのね。だからダイレクトで大丈夫」
「学校運営側による一方的な水泳教育を断固拒否する」
みこ先生は言った
「急に口調がドイツの自治権要求運動みたいになってしまったから、
その口調で体育の薄氷美水(28才)先生に伝えると大変
遠回しな表現に戻そうね
理由があるんでしょ。一緒に解決しよう」
「わたしには、外気にさらし保存するため不自然に消毒された水は
そぐわない感じがする」
「つまりその白い肌が荒れる?」
とみこ先生は聞いた
「私のお肌が美白であることや、私の美肌に少し何かあるだけなら、
クラスの和を調和させる事を優先したいのですが
問題は友人を含めたクラスメイトに何かあったとき 」
「クラスメイトもみんな美肌よ、めいかちゃん。12才でしょ
わたしは23だから入浴後の肌のケアにも時間をとるようにしてる
でもマクドナルドのフライドポテト食べると必ず次の日、にきびができる
それは10代の時はなかったことなのね」
「わたしがプールに入ると、
文部科学省に提出される予定の中央教育審議会27次答申の内容に影響が出ます」
みこ先生は聞いた
「どう変わっちゃうの、それ」
「わたしとわたしのクラスメイトに起きたことが具体例としてそのまま載ると思う」
神楽神子は考えた
薄氷美水先生にこれを強引に受け入れさせるのは無理がある
しかもあの先生は、生徒を女性としてライバル視し、自らは三十路も近い
そして美水先生のライバル相手、めいかちゃんは、
黒いめがねと地味な髪型で目立たないだけで明らかに可愛く美しい10代の少女
美水先生が、めいかちゃんの説明を美容に関することと受け取ったら大ごとだ
みみ先生はめいかちゃんの美白美肌を台無しにするため、
プール用水の塩素消毒濃度を飽和状態まで上げかねない
医学的な理由をでっち上げるか、この女の子の本気を目の前で見せつけるか
みこ先生はめいかに聞いた
「めいかちゃんのお父さま、お医者さんよね。消毒されたプールの水のアレルギーって
ないか聞いてみて
それとも、尾てい骨複雑骨折って診断書いてもらう
わたしは宗教的、思想的理由でめいかちゃんがプールに入らないですむ方法を探すわ
たしかイスラム教のコーランの中でムハンマドは女性の肌の露出に関する掟を
ラマダンの時期に限って、」
そのようにしてふたりは別れた。帰り際、みこ先生は
「もう遅いから気をつけて帰ってね」
と言った
めいかもみこ先生に言った
「みこ先生も帰り道、特に最寄駅から自宅までの帰り道、
コンビニ近く、後方スーツ姿の41歳男性に気をつけてください」
みこ先生は理由を聞きに戻ってきた