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17-2 レア・ヨンドウ

「ん、……んぅ」


 プラチナは目を覚ました。

 ぼんやりとした視界に映るのは一枚薄膜でも隔てたような街中の風景。古びた赤い三角屋根の家々が数多く密集している知らない街並み。


 きっと、さっきまでは夢を見ていたのだ。バルガス・ストライクが死んでいたなんて悪い夢だ。

 だって最も信じられるエネルを筆頭に、皆が言っていたじゃないか。バルガスは逃亡したと。

 だからスターは落ち込んでいる。ずっと探していた人がまた行方不明になれば気持ちも落ち込んでしまう。


 しかしだ。それは死んでしまっていた場合でも成立するのではないか。

 ずっと探していた友達が死んだからスターは沈んでいる。もうこの世を去ってしまった以上、会えないし話せない。だからあの時から今日までずっと元気がない状態が続いている。

 そう考えると既視感を感じた。自分も母とアルマンを亡くしている。アルマンは最期の言葉を聞けてすぐに立ち直る事ができたけど、母オリビアに至っては長く塞ぎ込んでいた時期があった。今のスターのように。


 まどろんでいたプラチナは覚醒していく。目を見開いてぼやけた視界をはっきりさせた。

 夢ではなく現実だった。何やら石畳の地面に浮く、弾力性がある球体の中に自分は囚われ横になっていた。

 プラチナは勢い良く上体を起こした。


「あ、起きたの? ふふっ、お目覚めはいかがですか王女様?」


 真っ先に目に入ったのは着替え中のレア・ヨンドウ。先程の少女服とは違い黒のインナーを着込み、準備を整えている。

 プラチナはその光景を凝視した。外見は少女の姿ではなく成長している。長い茶髪はそのままで自分と同年代ぐらいの外見だ。


「どうかした? 凄い顔してるよ」


 着替えながらの声掛けにプラチナは困惑した。


「あなたは……レア、ちゃん?」

「何で疑問系? ……ああ、変身呪文で子供の頃の姿に化けてたんだよ。ずっと発現し続けるのは疲れるし人質を取れたのなら元の姿に戻るでしょ?」


 その言葉を聞いてプラチナは事態を把握し、心の底から己を恥じた。不甲斐なさと自責の念が胃で混ざり合い不快感が込み上げてくる。

 シンシアはきちんと注意してくれたのに。なのに自分は囚われの身になって……。


 視線を動かせば陽光を反射している巨石、モノリスが近くに鎮座していた。

 事前に聞いていた通り、縦に長い真四角真っ黒な物体で厚みもある。

 棒人間やヒトガタとは違う愛嬌のないのっぺらぼうの死者達。コミタバの非人道的オーバーパーツである事は間違いない。


 つまり、太陽の騎士団が最大級の警戒をする犯罪組織コミタバが動き出したのだ。

 そしてこのレアもコミタバの一員。着替え終わった姿を目にすればデイパーマーと同じ黒のコートを身に纏っている。


「さてさて……」


 プラチナは味方が誰もいない恐怖を押し殺し、歯を食いしばって冷静になろうと努めた。意図的にバルガスの事を頭の片隅に追いやった。

 今の所手足は拘束されていない。半透明なシャボン玉らしき中に捕まっているだけで、何か危害を与えられてはいない。呪文を発現して逃げる事はできるだろう。

 しかしまずは状況把握が先だ。逃げ先と具体的な逃走手段を模索して、タイミングを見計らいこの場からの脱出方法を考えなければならない。


(ここは一体……?)


 プラチナは周辺に気を配った。

 人の気配は全く感じない。少し遠目には城壁のような高い壁が周りをぐるりと囲っている。自分は今、何やら大きな砦だと思われる建物の屋上にいる。


「ここはホムラン。太陽の騎士団が所有する実戦訓練用の小都市だよ」


 周囲に目を走らせていたプラチナの意図を察してレアが言った。


「聞いた事がない? お兄ちゃん達、ハゲが治る洞窟を見つける前はこの城壁都市で活動してたって」

「ここが、ホムラン……」

「ちなみに常駐していた管理の人達は皆殺しにしたから誰もいないよ」


 レアは友達に伝える軽い声色でとんでもない事を口にした。全く悪びれる様子はない。

 言葉を聞いて固まるプラチナにレアは親しげに続けた。


「大丈夫、安心して。人質に取ってるだけで危害を加えるつもりはないから」

「っ……」

「むしろ逆。私はね、プラチナを助けてあげたんだよ。スターお兄ちゃんから」

「は?」


 意味不明な物言いにプラチナの困惑は深まる。

 レアはモノリスの兵隊が持ってきた椅子に腰を下ろした。更に大きな花びらのような形をしたスピーカーらしき物体も置かれた。拡声器だろうか。

 

「暇だし助けが来るまで自分語りでもしてあげる。目的とか動機とか、気になるでしょ?」

「……二人は知り合い」

「そう。アカムのハルシア孤児院。戦争が始まる前はお兄ちゃんと私、そこで一緒に暮らしてた」


 プラチナが聞いたレアの境遇は嘘ではなかった。彼女は両親と親戚の死を経験していた。


「遠い遠い親戚の元へ行く事になってある日突然、人が大勢いる縁もゆかりもない土地に連れられ置き去りにされた。アイスを買うからそこで待っててって。で、一人ぼっちで寂しく泣いてた所をお兄ちゃんが保護してくれた」


 あの時は本当に嬉しかったなあ、とレアは目を細めて声を漏らした。そのしみじみと思い出している表情は運命的なものを感じているようにプラチナには見えた。


「それからは孤児院で世話になって幸せだった。皆同じような境遇ですぐに馴染めたし、仲良く新しい家族だと思える暖かな時間を過ごせたよ」


 でも……。


「そんな皆をお兄ちゃんが全員殺しちゃったのでした。わーパチパチ……パチパチ……パチ。いや笑えねぇ」


 アカムとドバードの戦争の最中に、孤児院を運営していたクレアが高熱にうなされたスターを連れ帰った。

 孤児院にいた孤児達全員でベッドに横たわるスターを看病しながら、早く良くなってと見守った。

 すると不意に、スターはむくりと身体を起こして爆裂剣を爆発させた。丁度水汲みに向かう途中だったレアは吹き飛ばされるだけの最小限の被害で済んだ。


「それからはお兄ちゃん、剣を発現してバッタバッタと斬り殺してた。爆発に巻き込まれて虫の息になった家族を次々とね」


 部屋の外の廊下まで叩きつけられたレアは、ふらつきながら逃げ出した。突如として起きたスターの凶行に逃げるしかなかった。

 しかし最後の一人になったレアはスターに追いつかれた。レアは意味もわからず必死に問いただすとスターはこう答えた。


『……ただのアップだ。ずっと寝てたし身体を動かして慣らさないとな』


 レアは冷静になろうとして息を吐いた。


「それが動機。……要は復讐。私はその後見逃された。どうにかしてお兄ちゃんに対して、どれだけ嫌な思いをさせるかを考えて今日まで生きてきた」


 プラチナは状況把握を忘れ、思わず拒絶した。


「それは嘘。スターがそんな事をするはずがない」

「ははは、部外者が当事者の私に向かって嘘だって言うんだ。その言葉だけで侮辱になっているのが分かってる? てか私とお兄ちゃん以外に孤児院の家族がいない事に気が付かない? 十数人は身寄りがない子供がいたんだよ? 五年前の戦争での生き残りが騎士団やら何処かに生きていてもおかしくないよねえ?」


 プラチナは言葉に詰まった。レアが言っている事が正しければ一人や二人、騎士団にいてもおかしくはない。

 しかしそれは可能性の話だ。孤児院にいたスターとレア以外が既に死んでいても、それもまたおかしくはない。

 それくらいレアの動機はプラチナにとって信じがたい話だった。


 冷めた視線を向けてプラチナを見ていたレアは、切り替えるようにふふふと笑った。


「危なかったねえ。あのままお兄ちゃんの近くにいたら殺されてたんだから。……それと危害を加えない理由はもう一つある」


 レアは続けた。


「プラチナは私の気持ちをスカッと痛快にしてくれた。そのお礼も兼ねてるんだよ」

「は……?」


 またしても意味不明な物言いにプラチナは混乱した。何故コミタバにそんな事を言われなければならないのか。


「私は感謝してる。プラチナはお兄ちゃんに嫌な思いをさせてくれたから」

「何を言って……?」

「ほら、思い出して。ウイタレンでの夕暮れベンチ。決意表明。実はあの時私も聞いてたんだ」


 お兄ちゃんは間違いなくスターの事。決意表明といえば駅のベンチで伝えた自分のスタンスの事。

 それが何故感謝になるのかプラチナは分からなかった。

 眉を顰めて警戒するプラチナにレアは気分良く言った。


「ふふふ、バルガスおじさん殺した相手が役に立ちたいとか恩返ししたいとか決意表明をする。いやー、隣で座ってたお兄ちゃんは一体どんな気持ちでそれを聞いてたんだか」


 プラチナは胃に冷水をかけられたように血の気が引いた。口の中がカラカラに乾き、目の奥が熱くなっていく。


 レアは変わらず上機嫌でプラチナを見据えた。


「その様子からして……やっぱ知らされてないんだ? バルガスおじさんが既に死亡している事実を。いやいや、あれは死ぬでしょ。アノマリーが解除寸前に巨大電撃玉をぶち当てられたんだから。しかもその後に高所からの落下。プラチナはお兄ちゃんを二回も嫌な……あ、泣いちゃった」


 プラチナはぼろぼろと涙が溢れるのが止められなかった。嗚咽と共に崩れ落ち、カチリと歯車が合わさったように合点がいった。


 落ち込み続けるスターの姿。

 わざわざ確認を取って、祭りの後でと言葉を濁すエネルやシンシア。皆。

 自分を救ってくれた恩人への罪悪感。恩を仇で返した自分だけが何も知らずに陽気に日々を過ごしていた。

 スターはバルガスが生きてて良かったと言ったのに。それを台無しにした自分が元気付けようとしていた。何が、何がスタンスだ。


「無様な王女様だねえ。足手纏いの馬鹿人質。恩返しとか役に立ちたいとか決意したのに」


 それも含めてプラチナの胸に重くのしかかる。罪悪感で頭がおかしくなりそうだった。感情の濁流に抗えず飲み込まれていく。


「おっ」


 その時、今いる建物から少し離れた場所。城壁付近で爆発が起こった。

 レアが座っていた椅子をほっぽり投げて立ち上がる。


「来たね、お兄ちゃん。勢い任せに突出しちゃって」


 爆発は断続的に続く。徐々に音が大きくなって近づいてくる。


「先行するお兄ちゃんを皆がフォローしてる。あ、ベネット・ウォーリャーが吹き飛ばされた。あれは分身体だけど自分のせいでその他仲間が死んだら……くくっ、お兄ちゃんはどんな顔をするのやら」


 狂気的な声もプラチナには聞こえない。

 シャボン玉の中で泣きじゃくっている人質を一瞥して、レアはプラチナへの興味をなくした。




 ホムランは昔ながらの城塞小都市だ。直径約二キロの円の壁の中に建物が密集している。

 五年前のハゲが治る洞窟が見つかる前は、その防衛適性の高さから復興を目指す拠点として活用していた。

 しかし今ではモノリスの兵隊が襲い掛かってくるコミタバのテリトリーと成り果ててしまった。


 城門を越えホムランに突入した直後から建物の物陰、騎士団の死角を狙い彼らは操られ接近してくる。


 モノリスが死者達を使って発現してくるのは自爆呪文。無論それ以外にも発現させる事は可能だが、コミタバは基本的に自爆呪文ばかり多用し死者を特攻させる。

 理由は被害を被る生者のリアクションが面白いから。これまでのコミタバとの戦いで騎士団はそれを把握していた。


 その非人道的な行いがスターの神経を逆撫でする。プラチナの奪還とモノリスの破壊を目指し、我先にと突っ込んでいく。

 スターは明らかに冷静さを失っていた。レスティア王救出時のように盾手裏剣を発現しない。


「ヴァニラ、上! 一緒に唱えて!!」

「っ、エネルあなたも唱えるだけ唱えなさい!!」

「分かった!!」


 三階建て家屋の屋根に待機していた死者達にエーテルが気付いた。飛び降りダイブをしてきた瞬間に三人が同時に呪文を唱える。


「「「ブロレジ・ブロレジション!!!」」」


 半透明に光り輝く障壁が共唱呪文により発現され、十数人による自爆をギリギリで阻んだ。

 しかし特攻してくるモノリスの兵隊達は、周囲からまだまだ押し寄せてくる。


「これはまずいですね……。おそらく大量の兵隊達が既に配備されている」


 残り僅か五体にまでになったベネットの分身体が呻く。スターを庇い今も一体吹き飛ばされ数を減らした。


「建物の屋根を伝っての移動を提案します。前後左右上からの自爆より、足元からの方が対処が楽なはずです」


 話を聞いていないスター以外の全員に異存はなかった。一番先頭にいるスターをジクルドが無理矢理担ぎ上げ肉体強化呪文で跳躍する。

 ホムランは三角屋根の建物が密集する城壁都市。屋根伝いの移動が容易だった。


「見つけた!」


 屋根に着地してすぐ、周囲を見回したエネルが叫んだ。指を差して情報を伝達する。


「ホムランの役所だった施設! その屋上!!」


 全員が遠目から視認した。ホムランの中央付近にある一際大きな建造物。確かにプラチナらしき人物がシャボン玉の拘束呪文の中に囚われている。


「レア……!」


 スターが一目散に駆けつけようとした。それをベネットが前に割り込み冷静に嗜める。


「スター、いい加減落ち着ついてください。焦っては事を成せません。隣にいるのがレアですか?」

「っ……そう、だ。大人びている……!」

「変身呪文で化けていたのでしょう。それに近くにある物体はモノリスとスピーカー?……いやそれより移動を、下で足止めしている私も限界です」


 地上ではヴァニラの氷の兵隊達も敵の接近を押し留めていた。だが多数に抱きつかれ自爆され数を減らしている。

 騎士団は屋根伝いの移動を開始した。その直後、レアの声が花びらの形をしたスピーカーから都市全体へと流れてきた。

 目を凝らしてみれば集音マイクらしき物を左手に持っている。


『イエーイ! お兄ちゃん見てるぅ聞こえてるー?』

「レア……!」

『レア・ヨンドウちゃんでーす!!』


 今度はヴァニラとジクルドがスターの動きを止めた。


『来てくれて嬉しいよー。これでお兄ちゃんに復讐ができる』


 復讐、とレアは口にした。スターの困惑は更に深まった。

 スター的には死んだと思っていた孤児院の家族、レアが生きていた。だが当時の子供の姿のままでモノリスと共に強襲してきた。プラチナを人質に取りコミタバの黒コートを身に纏っている。意味が分からない。


『大丈夫安心して。人質を餌に仲間を殺せなんて野暮な事はしない。ただ……今ここで人質を殺してやる』

「なっ!?」

『アクセル・ボルトティア』


 レアは右手を空へと掲げ呪文を唱えた。その先に発現するのは金色に帯電する電撃球。


『どうして皆を殺したとか聞きたかったけどさ、あーだこーだ時間をかけて阻止されたら目も当てられないでしょ? だから距離があるうちにさっさと決めちゃう事にしました!』


 アクセル・ボルトティアは呪文を吸収して電撃球の威力を増大させる呪文。シャボン玉の拘束呪文もブロレジの障壁も吸収でき、身体に発現できる肉体強化の効果も着弾と同時に多少吸収する。

 要するに回避以外に電撃球を凌ぐ手立てはない。


 レアはプラチナの方を向いた。


『危害を加えないって言ったのは嘘、ごめんね。でもアノマリー発現して騎士団に戻っても全然構わないよ。バルガスおじさんを殺されて悲嘆に暮れるお兄ちゃんの元へね』


 狂気的に言葉を吐くレアに対してプラチナは動けずにいた。

 青空を背景に光り輝く電撃球はバルガスを殺害してしまった呪文と同じ。涙でくしゃくしゃになった顔で見上げて固まるだけ。


「レア!! 待て!!」

『いいや待たないっ! 殺すね!!』


 スターの悲痛な静止声もレアには届かなかった。騎士団の誰もが距離が遠すぎて間に合わない。

 

 今にもプラチナに振り下ろされようとする威力増大前の電撃球。

 それを阻止したのはギリギリで到着したオーバーパーツ、コモドドラゴンの剣だった。


「きゃっ!?」


 突如として発生した衝突音にレアは怯んだ。左側面から前触れもなく起きた現象に呪文の発現を解除してしまった。


 慌てて首を振ると、いつの間にかに駆けつけたモノリスの兵隊達がブロレジの障壁を展開していた。

 防いだのはコモドドラゴンの剣の斬撃。丁度赤い刀身が陽光を反射して宙に浮いて接している。


 コモドドラゴンの剣は障壁から距離を取った。剣の持ち主である存在はステルス呪文を解除し姿を現した。


「っ、誰だよ邪魔しやがって……モノリスっ!!」


 見知らぬ目出し帽にレアが吠えた。即座に巨石から溢れ出てきた兵隊達が襲い掛かる。


 太陽の騎士団は全力で急行しながらライネルだと思われる男が対処する姿に驚愕した。

 接近して自爆しようとする死者達の身体に、肉体強化呪文を駆使して次々と触れて無力化していく。死者達は自爆するよりも早く光の粒子に変化され問答無用で霧散する。

 これには騎士団だけではなくレアも心底驚いていた。


「ちょっ、何なのこいつ……!」

「ホワザブ・レブス」


 ライネルが目出し帽を脱ぎ捨て口から煙幕呪文を発現させた。白煙により辺り一面の視界が遮られる。

 レアは直後に投擲されたコモドドラゴンの剣を慌てて回避して……。


「デュクシ」

「うっ!?」


 そしてすぐ、背後にいたライネルにより意識を刈り取られ地に伏せた。


 ライネルの初見殺し。

 目出し帽を取り素顔を晒して注意を引き、煙幕で更に注意を分散させ剣を標的に投擲、対処した刹那にショートワープ呪文で背後に移動し首トン呪文で無力化。

 流石のレアも直前に驚愕した手際の良さも相まって、この攻勢には対応しきれなかった。

 

「ラ……イネ、ル」

「プラチナ様」


 電撃球と同時にシャボン玉も解除されプラチナも自由になった。宙から地面に落ちてへたり込む。

 数秒後、騎士団もブロレジの障壁を足場にしてこの場に到着した。


「隠れ家の合流時に決めた合言葉は!?」

「『レスティア王』という問いに対して『加齢臭やばい』です」


 エネルの本人確認にライネルが答えた。騎士団もプラチナも彼は本物だと思った。


 エネルがプラチナの元へ、スターがレアの元へ駆ける。その間にベネットが尋ねた。


「モノリスの兵隊を無力化していましたが……あれは?」

「ゾルダンディー門外不出の死体処分呪文です。死体に触れて唱えれば光の粒子となって消える。私は裏方ですから」

「そんな呪文が……。何故救援に?」

「シンシアからの緊急要請です。ギリギリで間に合いました」

「なるほど……」


 ライネルは剣を拾いながらスターに抱き抱えられたレアを見た。レアは糸切れた人形のように脱力し気絶している。


「殺害ではなく気絶でよろしかったでしょうか? 接触時の経験不足のような反応から気絶に切り替えましたが……」

「ええ、殺したら殺したでスターは悔やんでしまう。コミタバの情報を引き出すためにもベストの選択をしたかと」


 ベネットはスターを見た。彼は今何を思っているのかと思う。

 スターは混乱の渦中にある。彼の心が壊れないようより慎重に尋問しなければならない。ビルのためにも。


 だが今は一件落着だ。プラチナが人質になった事に関しては誰も死なずに済んだ。これ以上の結果はないだろう。


「いや、常駐していた彼らの安否は……?」


 そう考え直したベネットの耳に、全員の耳に、この場にいる誰でもない笑い声が響いた。


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