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11-2 ウイタレン 召喚生物愛護の街

 ウイタレンは五年前の戦争を経てもなお、存続している街である。

 ハゲが治る洞窟がある街から汽車で一時間、雑木林を超えた先に広がる大平原と隣接する形で、街ができていた。


 存続の理由は召喚生物の愛護に力を入れている街だったからだ。

 アカムとドバードを中心として広がる戦火の拡大を、街の住人と共存していた召喚生物達とで協力して乗り越えた。

 それ以降も街は変わりなく愛護に力を注いでいる。ウイタレンとはそういう街だった。


 程なく汽車は街中の線路上で減速し始め、時計台が併設されている大きな駅に停止した。

 他の乗客が行き来するプラットホームで、駆除任務にやって来た騎士団員達を一人の女が迎える。


「そう言えば、一年振りぐらいになるっすかね? 本部から支部に異動したわけだし」

「大体それぐらいじゃない? わらわ知らんけど」

「その一人称も、一年振りに聞いたっす」


 同じ団服姿で糸目。長髪で見た目麗しいウイタレン騎士団支部の支部長、オーハマーだった。


「プラチナの話は私にも伝わってるっす。オーハマーです。どうぞよろしく」

「よ、よろしくお願いします……」

「そんなに畏まらなくても良いんすけどねぇ。まあ初対面だし仕方ないか」


 プラチナの態度に、オーハマーは糸目そのままで肩をすくめた。


 騎士団の影響が及ぶ街や村には騎士団支部が大体存在する。情報収集や各地の復興の手伝い、本部から任務でやって来る団員の協力や下準備を担っている。

 ここウイタレンでも支部あり、街の運営にも微力ながら携わっていた。


「微力、何ですね……」

「あまり大々的に首を突っ込むのも嫌な顔されるから、困り事の解決とか補助くらいなんすよ」


 オーハマーの先導の元、棒人間のヤマチも含めて街中を歩いて行く。まずは街のトップに駆除任務に就く話を通さなければならない。

 プラチナは歩きながら市街地にある店々や家屋を眺めた。召喚生物の愛護に力を注ぐ街だけに、今まで見た事のない召喚生物も普通に散見される。

 ファングに棒人間、何やら木で絡み編み込まれた穏やかな雰囲気を纏った龍、四足歩行で地を這う眠そうな緑色のトカゲ。住人と共存していた。

 プラチナはエネルに尋ねた。


「エネルちゃん、あれも召喚生物?」

「そうだよ。モクリュウとコモドドラゴン。呪文でこの世界に発現した生き物達」

「モクリュウは分かるけど、コモドドラゴンって赤い鱗じゃないの? 色が緑だし大きさも全然違くて……」

「それは特殊個体なんだけど……オーハマー、今回の駆除対象にギネスファングはいる?」

「いるっすよー。やっぱファングは発現できる人間が割合多いっすから」

「なら後でね。挨拶を済ませてから特殊個体についても説明するから」

「分かった」


 一行は三階建てのコンクリートで造られた建物に到着した。行政を担う役所であり、用事のある街の住人達が度々出入りしている。

 ヒカリとジクルドとは一旦別行動になった。先に騎士団支部に荷物を置き、任務の準備をするとの事だ。


「それじゃ、騎士団支部でね」


 人数分の荷物を持った二人とヤマチを見送って、残りの四人が役所内に入る。

 一階は手続きをする住人でごった返し、二階も別の手続きをする住人がいて三階へ。既に騎士団が来る話は通されているためスムーズに執務室前に辿り着いた。

 扉をノックする前にオーハマーが言った。


「そうそう、中にいるカーモン・ハワード氏は顔面には傷跡があるってのを伝えとくっす。だから顔を見てのリアクションはノーでお願いするっす」


 スターが首を傾げた。


「カーモン氏の顔に傷が? 一体いつ?」

「時期は五年前の戦争でこの街を防衛した時に。それから一年くらいは仮面を付けて活動していたらしいっすけど、今は素顔を晒しているっす。……まあ彼は辟易としてるんすよ。その仮面は何なんだ、その傷跡はどうしたの、とか。一々聞かれて同じ説明をするのが億劫になっちゃって」

「そうか、今の俺の質問みたいにか」


 ウイタレンの街のトップであるカーモンは五年前の戦争以前から、召喚生物愛護の活動に精を出していた。

 召喚生物を雑に扱う人間もいれば、愛情を注ぐ人間も無論いる。彼はそんな人達を集め街のトップとなっても、変わらずに活動していた。

 その人物像は新聞にも特集された事があり、傷のない顔写真も掲載された。プラチナ以外もそれは知っていた。


「それじゃ、中に入るっすよー」


 オーハマーが扉をノックした。男の声が返ってきてドアノブを捻る。

 書斎のような室内に、一人の男が執務用の机で書類業務をしていた。事前にオーハマーが話したように、顔に傷跡がある白髪短髪の初老の男だ。

 傷跡は左頬に火傷の跡、右の耳元から喉筋まで切り傷らしき線、額にも横一文字の切り傷が確認できた。見るからに痛々しい。


「…………………………ぁ」


 入室の許可を出したカーモンは顔を上げて固まっていた。微動だにせず、無言のままで。何やら唖然としてやって来た騎士団を見ている。


「カーモン氏? どうしたっすか?」


 オーハマーの声かけを経て、やがてカーモンは上ずった声で返した。


「こ、これは失礼を。どうぞお掛けください」

「いや、めっちゃ動揺してないすか? 何か問題でも……?」

「えっ、と…………その、率直に申し上げますと」


 カーモンはエネルとプラチナの顔をチラリと見て、申し訳なさそうに口を開いた。


「この度の駆除依頼で派遣された騎士団の方々に、お若い少女二人が見受けられまして……その大丈夫かなぁ、と」

「あぁ、そういう事っすか」


 一人は百年以上この世にいる剣で、もう一人はアノマリーの呪文を発現できるゾルダンディーの王女とは知らない。初見のカーモンの反応は納得できた。

 オーハマーは安心させるように言った。


「確かにそう思われても仕方ないっすね。でも大丈夫。きちんと考えて遂行できる人員を連れて来てるっすから。どうかご安心を」

「いっ、いえ、こちらこそ申し訳ありません。太陽の騎士団が派遣した人員に間違いがあるわけがありませんよね。勝手な事を言って本当に申し訳ありません」


 突如生じた僅かなわだかまりは解消された。エネルとプラチナが腰を下ろし、残り二人がソファの両脇に立つ。

 カーモンが入れたお茶が湯気立つ中、エネルが切り出した。


「それでは内容確認のため、今一度任務の説明をお願いします」


 敬語を話すエネルを初めて見聞きしたプラチナは驚いた。落ち着きを取り戻したカーモンが頷く。


「皆様がご存じの通り、このウイタレンは召喚生物愛護の街。五年前の戦争以前では街に隣接する大平原で召喚生物達の催し物をいくつも行っていました」


 ファングランや棒人間友情コンテスト。モクリュウ森林浴や飼っている召喚生物達とのハイキングなどがよく行われ、世界各地からの召喚生物の愛好家が来訪したりした。

 そしてその催し物で得た利益は街の税収になっていた。


「戦争からの復興もほぼ終わり、そろそろ前のように大平原で催し物を開こうと計画が上ったのですが、そこで一つの問題が立ちはだかりまして……」

「召喚生物達の増加ですね」

「はい」


 エネルの言葉にカーモンは沈痛な声で頷いた。


「当時は世界規模で治安が悪化し、国も滅びたりして人々には余裕がありませんでしたから。その皺寄せが彼らに向いたりもしました」


 元々いた召喚生物達は大平原の向こうの、人が滅多に立ち入らない奥地で生息していた。しかし戦争の皺寄せにより野生化や悪性召喚生物が増加し、その生息圏は催し物が行われていた大平原まで広がってしまった。


「騎士団に依頼する前に、我々だけで駆除を成そうとしたのですが、愛護の街だけあって拒否する者も多く、しかも悪性となったファングの特殊個体も複数確認されたのです。他にもいるかもしれないと考えると無理と判断せざるを得ませんでした」


 召喚生物の特殊個体は、通常よりもサイズや身体能力、知能が高い個体になる。ウイタレンにも駆除専門の組織はあるが、それらを他の悪性と一緒に駆除するのは危険度が高かった。


「それで今回、太陽の騎士団に依頼をお願いしたわけです。税収が増えれば街に、そして彼ら召喚生物達にも還元できますから」


 カーモンは悲しげに息を吐いて説明を締め括った。

 召喚生物を愛護する事に力を注いでいるのに、何故駆除をしなくてはならないのか。そのやりきれない気持ちが、顔にありありと滲んでいた。


 エネルが細かい所の確認を取った。


「事前の要望通り、悪性召喚生物のみで野生化した個体は駆除はしないという事で?」

「ええ、あくまで悪性のみで。野生化した彼らは真心を込めて接すれば、また友好的になってくれますから」

「対象となる召喚生物の事前情報については?」

「既にオーハマー殿が準備をしてくれました。詳細は彼女が」

「騎士団支部で三種類の対象を伝えるっす」

「駆除の他に地形の調査も同時進行で?」

「五年も放置されていた平原になります。整備計画を立てるためにもお願いします。それと点在する廃屋や施設の簡単な状態確認もできれば」

「流石に全ての駆除は不可能なので間引く、という形になりますが」

「……ええ、分かっています。ですがあまり痛めつけるやり方は、その」

「それについては勿論。楽に効率的に、苦痛は長くいたしません」


 その他細かい点を確認終えてエネルが立ち上がった。プラチナも慌ててそれに倣う。

 カーモンが深々と頭を下げて嘆願した。


「この度は心苦しい仕事を押し付けて申し訳ありません。ですがまた彼らの愛護、街の発展のために必要な事だと考え依頼した次第です。大変だとは思いますがどうか、よろしくお願いします」


 エネルが頷いた。


「ええ、それでは任務に取り掛からせて頂きます。失礼します」


 挨拶にやって来た太陽の騎士団四人は、扉を開けて執務室から出て行った。


 その四人が外に出て、役所から遠ざかるのを窓から眺めた後に、カーモンが黒の執務机に座って深く息を吐いた。


「ふぅー、いやマジで焦った。エネルの奴がやってくるとはな。そしてあの金髪のガキは一体何者だ? オリビアの奴にそっくりじゃねえか。まさか本人……?」


 カーモンはしばらく黙考していたが、肩をすくめて思考を取りやめた。


「いや、そんな感じはしなかった。だが駄目だ全然分かんねぇ。……さてさて、どうすっかな。手を出して藪蛇はゴメンだが、放置は気味が悪いし可能なら殺しておきたい。そろそろ運営ごっこ飽きてきたし、俺はいつでも逃亡できる」


 何の前触れもなく、カーモンの身体が床に吸い込まれていく。まるで足から順にすり抜けていくように。


「まあとりあえずは、騎士団の戦力確認からか。何ができて何が得意かを把握しねえと……」


 その言葉を残し、カーモンはその場から完全に消え去った。執務室内は物音一つしない、誰もいない静寂に包まれた。





「カーモンさんも、やっぱり気が進まない感じでしたね」


 騎士団支部に向かう道のりでプラチナが呟いた。エネルが返す。


「そりゃ長年髪が白くなるまで、召喚生物の愛護をやってきたからね。悪性になる理由も知ってるし駆除には気が進まないよ」

「うん……」


 オーハマーが口を挟む。


「でも誰かが駆除しないといけない仕事っす。甘えや同情は一旦無視するべきっすよ」

「そう、ですよね……うん」


 四人は騎士団支部に到着した。支部はウイタレンの郊外に隣接している、大平原との境界線付近に建設されていた。


「何だか……砦みたいな支部。あの煙突は物見台?」

「大平原から先は野生化や悪性召喚生物達が生息してるから、街に近寄らないように監視の役割を騎士団が担ってるんだよ」

「カーモンさんが言ってた通り、駆除する召喚生物はこの先の平原にいて……」

「うん。わらわ達五人が平原に出向いて、対象を探して駆除をする。あと地形と建物調査も」


 真四角の一階の一部分の天井が高い、コンクリート製の二階建ての支部だった。

 屋根には煙突のような物見台があり、プラチナが知らない騎士団員が暇そうに大平原を見渡している。車庫もすぐ近くにあって車が三台収納されている。


 入口から中に入った。十数人の騎士団員が働いている。ジクルドとヒカリの姿は見えない。

 オーハマーの案内の元階段を登り二階へ、バルコニー付きの支部長室に通された。平原を見渡せる。

 プラチナとエネルがソファに腰を下ろすと、スターが言った。


「それじゃあ俺は装備を整えてくる。プラチナに対象の説明を頼む」

「了解っす」


 スターが部屋を出て、任務の資料がテーブルに置かれた。


「写真に写ってる召喚生物達の駆除をお願いするっす」


 プラチナは写真が添付されている資料を手に取りじっくりと眺めた。悪性かどうかの見極め方が書かれている。

 駆除する召喚生物の種類は三つ。


 一つ目。悪性召喚生物になってしまったファング達の駆除。山林や平原、山小屋らしき空き家がある写真にその姿が複数体、中距離から撮られていた。群れている。

 犬というよりその姿は最早狼だ。普段見るファングよりも体躯が大きくなって、可愛らしさや人懐っこそうな雰囲気は何処にもない。プラチナでも分かるぐらいに、獰猛で危険性を孕んでいた。

 見極め方はファングの瞳。憎悪で黒く濁っているかどうか。


 二つ目。悪性召喚生物になってしまったモクリュウの駆除。木でできた直立した龍のような生物で、湿地帯らしき場所で撮られた写真にその姿が写っている。

 街中で初めて見た穏やかそうな雰囲気はなく、不気味にニヤついている。別の写真を見ると、おそらく気付かれたのだろう。悪性モクリュウが撮影者に対し顔を狂気に歪めて、正面から襲いかかって来る場面がドアップで激写されていた。

 見極め方はそのニヤケ顔。悪性モクリュウは不気味に微笑んでいる。


 最後にメタルサソリ。機械でできた等身大サイズのサソリ。銀色の外皮に銀の鋏、強靭そうな銀の尾。目は四つあり、まん丸で泣きぼくろのように両目の斜め下についている。

 他と同じく複数の写真に写っていて、写真では何処か山間の大きな邸宅に住み着いている。資料には鋏や尾には毒があり、死んだふりをしてくると書かれていた。

 見極め方は顔面の目。四つ全て赤く輝き続けていれば悪性になる。


 プラチナは気が滅入ってしまった。他の二種は初見だがファングに関しては知っている。写真にある姿は今まで接してきた愛らしいファングとは違う。

 捕らえられた悪性ファングの写真もあった。その目は憎悪でこれでもないくらいに黒く濁っている。和解など到底不可能だろう。

 原因は人間が行ってきた無意味な虐待によるもの。そして今から、そんな彼らを駆除する。どうしても暗澹たる気持ちになってしまう。


 エネルがちらりと、プラチナの様子を窺って口を開いた。


「プラチナ、さっきもオーハマーが言ったけどもう一度言うね」

「え?」

「騎士団の一員になって任務に出てる以上、終わるまで甘えや同情は蓋をして集中しろ」


 それはいつもエネルでは聞かない強い言葉だった。プラチナは言葉の意味を理解して頷いた。

 エネルの言う通り任務が終わってから感傷に浸ればいい。気後れで反応が遅れたりして任務に支障をきたしてはならない。


「騎士団の一員……うん、ごめんなさい。集中する」

「……いや、わらわもごめん。境遇考えたら言い過ぎたかも」

「そこで謝っちゃ、厳しくはならないんじゃないすか?」

「うるせー、特殊個体についての説明に移れ」

「えー、はいはい」


 オーハマーは二つの写真を新たに追加した。めんこいファングの写真と、大人びた凛々しい顔をした狼のようなファングの写真だ。目が濁ってないためどちらも悪性ではない。


「右が普通のファング。左がギネスファング。通常のファングより知能と身体能力が高い個体っす。会話可能な個体も稀にいるっす」

「会話可能って……言葉を話すって事ですか?」

「そうっす。普通に言葉を話すギネスファングを私自身見た事あるし」

「じゃあ赤い鱗のコモドドラゴン原種も、このギネスファング同様、特殊個体になって……?」

「呪文で一番最初に発現する時に、通常とは違う個体が発現する場合があって、そのどれもが強いレアな個体。それが召喚生物の特殊個体。通常は緑色なのに、赤色の巨大なコモドドラゴン原種が発現する、みたいな感じっす」

「一応補足すると、特殊個体じゃなくても知能が高い召喚生物もいる。ペロイセン、デュラハン、ガチオーガとかね。後ろ二体に会った時の事を思い出して」

「ペロイセンってエネルちゃんが言ってた……」

「社会のクソゴミ。あいつは会話で意思疎通が可能。まあ今何処に存在してるかなんて分からないから除外して良いよ。死んでいたらなお良い」

「召喚生物だったんだ」


 現在確認されている特殊個体はギネスファング、コモドドラゴン原種、ヤマタノモクリュウ、ハードボイルド棒人間、ガチオーガ。そのどれもが通常個体より強く滅多に発現されない召喚生物になる。

 召喚生物は基本的に従順で人間に友好的だ。仮に特殊個体の発現、または信頼を得て手中に収められれば戦力の増強ができる。

 だから召喚呪文を積極的に発現しようとする呪文使いも多く、そのせいで通常個体ばかりがこの世界に発現されて、ハズレ枠として雑に扱われ野生化してしまう。

 比較的多く発現されるファングが、その最たる例になってしまっている。


 オーハマーが続けた。


「んで、ギネスファングは普通のファング以上に脚が早くて膂力があって頭も良いから、まともに戦うのは効率的じゃないっす。銃と呪文を組み合わせて駆除するっす」

「銃……人間には効かなくて、召喚生物には有効何ですよね?」

「その通り。銃器類は何故か人間には効果ないようになってるっす。過去に発生した何らかのアノマリーの呪文や、オーバーパーツの効力が今現在も続いているってのが通説になるっす」

「それは……何でなんですかね?」

「わらわにも分からん」


 ウイタレンに向かう車内で、実際に拳銃を発砲して確認したのをプラチナは頭に浮かべた。

 あの時ジクルドの右手に向けて、エネルが引き金を引いた。しかしジクルドの手は無傷だったのだ。何度試しても、スターに試してもそれは変わらなかった。

 だが召喚生物達はその限りではないらしい。彼らのほとんどは銃の脅威に抗う術がない。命中すれば傷を負い、急所ならば即死する。

 だから人間は対召喚生物用に、呪文の他に銃や兵器にも力を入れていた。太陽の騎士団が街の警備やパトロールで銃を携帯していたのも、秘密都市でも銃や兵器が格納されていたのも、召喚生物に備えるためだった。


 オーハマーが確認を取った。


「さて、大体の説明は終わり。そろそろヒカリが戻って来る頃合いだし、質問で締めるっす」

「あ、質問が一つあります」


 プラチナはバルコニーに顔を向けた。


「この先にある大平原にいる召喚生物を探して駆除するんですよね?」

「そうっすよ」

「その……流石に広大過ぎて五人で探すのは無理だと思います。それに見た感じ道路も整備されてなくて車は通れないですし」

「二つとも問題なし。探す方法もあるし、移動の方もヒカリがいれば機動力は補えるっすから」

「ヒカリちゃんが?」


 プラチナが首を傾げる中、エネルが立ち上がった。


「外に出るよプラチナ。戻って来るヒカリを見れば、機動力の意味が理解できるから」


 三人は外に出た。視線の先にある広大な大平原に対象の召喚生物達がいる。

 外には装備を整えたスターが既に待機していた。何やら受話器付きの通信機器らしき物を背負って、スリング付きのライフル銃を肩に掛けている。

 普段の剣を発現するスターとは違う印象をプラチナは受けた。


「おっ、来た来た。あれを見てプラチナ」


 エネルが指を差した方向に目を細める。何やら巨大な四足歩行の生物が、平原の向こうから大仰な音を立てやって来ていた。

 その姿が露わになるにつれ、プラチナは次第に血の気を引いて驚愕した。その生物に見覚えがあったのだ。


 脳裏に浮かぶのは呪文教の地下通路。天井に届くほどの圧倒的な巨体。横幅は広く地につく四肢はがっちりと極太の大きなトカゲ。今は屋外のため地下の灯りではなく、陽の光を受けて宝石のような赤鱗がきらきらと輝いている。


 コモドドラゴン原種がこちらを目指して、猛スピードで接近して来ていた。


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