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10-4 ハゲが治る洞窟内部へ 実験

 騎士団支部の団員に茶髪の迷子を任せた後、三人は解散となった。カインは別の仕事の片付けに向かい、エネルはハゲが治る洞窟に入る手続きをするようだった。


 今日の夜、夕食を食べた後にプラチナは洞窟内部に案内される。そこで付与のアノマリーの実験をするとの事だ。

 果たして、コミタバが破壊を目論むハゲが治る洞窟の中は一体どうなっているのか。実験とは具体的に何をするのか。

 プラチナは騎士団本部にある図書館で時間を潰して、好奇心と不安半々の気持ちでその時が来るのを待っていた。


「よし、じゃあ行こうか」

「う、うん……」

「そんなに緊張しなくて良いよ。名前の通りただ髪が生えたり、伸びたりするだけなんだから」


 食堂で夕食を取り、少し食休みしてからハゲが治る洞窟へと向かう。既に日は落ちており外に設置された照明器具には光が灯っていた。

 ハゲが治る洞窟は騎士団本部の中央に鎮座している。正確には元々あった洞窟を中心として、巨大な五角形の本部建物が洞窟周辺を守るように造られている。

 そのため洞窟を利用する人間は、騎士団本部に来なければならない。当然騒ぎを起こすものならば警告なしで処理される。


「エネル、暗証番号と合言葉をお願いします」

「はいはい」

「それとハゲが治る洞窟に悪感情はありますか?」

「ないよ」


 三度の厳重チェックの後に、洞窟正面に出る扉に到着した。物々しい空気が今いる場所に満ちている。

 ベネットのモヒカン分身も、他の騎士団員達も最大級の警戒で警備に当たっていた。洞窟に害をなそうとする者を見逃さない鋭い目付きだ。


 プラチナもエネルと同じチェックを済ませた。依然いつものヒャッハーさがないモヒカン分身が言った。


「既にニールとヒカリが洞窟内に入っていて、私の分身体も複数います。それ以外の存在を見た場合、敵性だと判断してください」

「分かってるよ。プラチナ、今日は貸切で今言った奴らしか中にいないから」

「貸切なんだ……ハゲが治る洞窟」


 そして扉が開かれ、洞窟正面に足を踏み入れた。自然形成された洞窟が二人を迎える。

 聳え立つ小山を前にプラチナはまず、首を上に向けた。


「エネルちゃん……洞窟の上の方から薄緑の光が漏れてない? それで周囲が明るくなってるし」

「スターの盾手裏剣。半永久的に呪文を発現し続けるから、それを洞窟の上に無数に設置して上空からの攻撃に備えてる」


 夜風が冷たく肌に触れる。プラチナとエネルは外に出ていた。

 眼前にはごつごつとした岩壁に、ぽっかりと開いた口のような洞穴。奥行きがあって内部に続いている。

 オーバーパーツ、ハゲが治る洞窟だ。


「髪留めとか、ヘアゴムは持ってきた?」

「髪が伸びるって言われたから、持ってきたよ」


 ハゲが治る洞窟は、別名髪が伸びる洞窟とも言われている。どんなに髪が短くとも洞窟内に入れば時間経過で長髪になってしまう。

 だから髪型を変えてイメチェンしたい人間も洞窟を利用する場合もある。ちなみに騎士団員は申請が許可されれば優先的に利用可能だ。


 二人は足を進めてハゲが治る洞窟の中に入っていった。


「洞窟って感じじゃなくて……廃坑みたいな?」


 少し歩いてプラチナが感想を口にした。入口から続く一直線の通路は、コンクリートで固められた坑道らしき空間になっていた。

 洞窟入口付近の、土や岩壁のような自然さはもう何処にも見当たらない。通路の左右下には電灯らしきものが灯っており、空間内を淡く照らしている。地下壕とも言えるかもしれない。


 エネルが返した。


「洞窟を見つけて五年経ってるけど、その仕組みの解明は全く進んでないんだよ。何故中に入れば髪が生えてくるのか、何故洞窟が上空から見ると鍵の穴の形をしているのか、何故途中から通路がコンクリートになっているのか、この灯りのエネルギー源は何処から来ているのか、何故コミタバがこの洞窟を破壊しようとしているのか、それらは誰にも分からない」

「じゃあ、この通路は騎士団が造ったわけじゃないんだ?」

「違う。……詳細は省くけど、スターが見つけた時には既にこんな感じだった。まあ扉を越えた先の空間は騎士団がリフォームした内装になるんだけどね」


 歩いていると少し先に佇んでいたベネットが見えてきた。モヒカン状況ではなく丸眼鏡、両手を後ろにして待機している。


「お待ちしておりました。どうぞ中へお入りください」


 そう言って横に避けて背後の扉を露わにした。無機質な銀の扉だ。


「この先はカジノです。もし良ければ遊んでいってください」

「え? 今なんて?」


 プラチナは思わず聞き返した。ベネットが頷いて答える。


「ハゲが治る洞窟内部はカジノになっているんですよ。髪が生えてくるまで個人差がありますし、暇潰しの方法を考えた結果、ギャンブルで金を集めようとなったわけです。事前に金銭を専用のコインに変えて」

「え、……えぇ」


 プラチナは混乱してしまった。理屈は分かるがハゲが治る洞窟の内部がカジノになっているとは思ってもいなかった。

 その混乱をよそに、エネルがプラチナの手を引いてドアノブを掴む。


「ほら、慣れだよ慣れ。そもそも目的はカジノで遊ぶんじゃなくて、プラチナのアノマリーの見極めなんだから」

「う、うん」


 プラチナとエネルは扉を開けて、洞窟の更に奥部に足を踏み入れた。


「……本当にカジノなんだね」

「ベネットが言ったように、髪が生えるのに個人差があるからね。ギャンブルをしない奴はほら、隅っこのスペースで待機する事になってる」


 エネルが指を指す方向を見ると、大量の椅子が置かれていた。ギャンブルに興味がない洞窟利用者がそこで待機する。

 しかし今は貸切状態だ。ハゲを治そうとする人間はここにはいない。


 ゾルダンディーの王の間より広い空間だった。床全体に赤の絨毯が敷かれ、天井もきらきらと明るく、各種ゲームができる環境が整えられている。

 多数のスロット台、カードテーブル、木製のルーレット台等。

 ここではモヒカン分身は一人もいない。普通の非モヒカン状態のベネット達が、真面目な顔をして警備に当たっていた。


「おーい、こっちこっち〜」


 毎朝の騎士団の食堂で聞き慣れている声がして、プラチナは視線を向けた。

 カジノに備え付けられている小さなバーカウンターで、二人の騎士団員が待機していた。

 

「やっと来たね。まあ座って座って」


 一人は白髪の少女ヒカリ。騎士団の中でもかなり強いとされる呪文使いで食堂の料理長。いつものエプロン姿ではなく、今日はバーテンダーの服装だ。


「あぁ〜、冷んやりとしたテーブルって最高だぁ」


 もう一人は赤髪のニール・リオニコフ。騎士団のアノマリーで人類虐殺を目的としている、お前何で味方なんだよの女。カウンター席に伏せて座りテーブルに頬をくっ付けている。


「まーたお前はだらけてる。もうちょっとシャキッとしなよシャキッと」

「うるせーぞ駄剣。復興貢献度ナンバーワンだぞオレは。もう少しリスペクトしてくれよぉ」

「いや、それに関してはリスペクトしてるけどさ」


 ニールについてはプラチナも既に何度も会話はしていた。言動は無遠慮でガサツだが陽気に応対してくれる。正直虐殺の思想があるとは思えなかった。


 プラチナは同じカウンター席に腰を下ろして、聞いてみる事にした。


「ねぇ、ニールちゃん」

「おん?」

「人類を虐殺したいと思ってるんだよね?」

「そうだよ。八割くらいな」


 即答だった。プラチナは純粋に尋ねた。


「……何で?」

「そりゃ決まってんだろ。世界のためだよ」


 テーブルに突っ伏して、だらけ顔をプラチナに向けていたニールだったが、真剣で真面目な表情に切り替えて身体を起こした。

 そして両肘をテーブルに立てて、組んだ両手を口元に寄せて質問に答えた。


「プラチナ、よく聞け。今この世界は重大な絶滅の危機に瀕している」

「ぜ、絶滅……!?」

「ああ、地球温暖化という絶滅の危機にな」


 エネルとヒカリが呆れ顔をする中、ニールは続けた。


「原因は二酸化炭素。そのせいで年々気温は上昇し続けている」

「えっと……確か、氷が溶けちゃって海水が上昇しちゃうんだよね?」

「そうだ。やがて世界は海面上昇により、陸地は溺れ人は住めなくなる。だからその前に、二酸化炭素を多く排出する人間八割を虐殺して世界の寿命を伸ばす。それが人類虐殺を目的にしてる理由ってわけ」


 人数分のコップにドリンクを注いでいたヒカリがニールに言った。


「本音は?」

「単に汗かいてない奴らがムカつくだけ。おかしいですよ、周りは涼しげな顔をしてるのに、俺は少し動いただけで夏場は汗がボタボタぽたぽた……虐殺せずにはいられねぇ」

「おかしいのはニールの汗っかきの体質だよ」

「うるせー、同情するより忖度してくれ」


 プラチナが呆気に取られる中、ニールの怒りのボルテージは沸々と膨らんでいく。


「あががががが、やばい。思い出すだけでフラッシュバックしそう。学校の集会で一人だけ汗かいてる昔のオレ、少し歩くだけで汗をかくオレ、好奇な目で笑っくるカス共、夏への憎悪、虫、高温多湿。もう季節なんて全部冬に近い秋だけでいい……夏はもう破壊しろ。要らねえよこの季節」

「冬はいいの? 最も寒いのに」

「寒すぎるのも嫌なんだよ。気温は最高で十度ぐらいが丁度いい」


 ニール・リオニコフは子供の時から多汗症だった。夏場は特に酷く、動いてないのに汗が常人の倍以上流れて、毎日何回も着替える羽目になっていた。

 時間が経ってアノマリーの呪文使いだったニールは、五年前の戦争に便乗して、本当に人類虐殺を実行しようと計画した。ただ単に涼しげな他人または、健康的な汗をかいている他人が気に入らなかったために。地球温暖化の話はおまけである。


「……………えぇ」


 ドン引きしてるプラチナに気付いて、ニールは怒気を収めた。そしてウインクをした。


「おっと、味方だぜ?」

「ニールちゃん、何で味方なの……?」

「ほんそれ。何で太陽の騎士団に所属してんのってわらわも思うよ。普通にコミタバでしょ」

「おいおい、勘違いすんなよプラチナ。思想は今でもあるけどオレは未遂でやってねえよ。直前に思い止まったての」


 五年前の戦争。世界規模まで広がる戦火に便乗して目的を達成しようとしたニールは止めた。

 実行しなくても、なんか本当に八割以上の人類が減りそうな勢いだったのだ。活動で汗をかくのを嫌ったのもある。

 となれば戦争からの復興を目指さなければならない。一人だけ生き残っても生きてはいけない。別にニールは全滅を求めているわけではなかった。

 そしてニールは流れ着いた。当時ハゲが治る洞窟を発見する前から、復興活動をしていたスター達の元へ。


 ニールはやれやれと肩をすくめて、注がれたドリンクを飲んで喉を潤した。


「もしかするとオレは、コミタバ所属になって太陽の騎士団と殺し合ってた未来があったかもしれねえよな。ガチで虐殺してたらスターやベネットが許さないだろうし、あの時戦争に便乗しなくて本当に英断だったぜ」

「ニールちゃん」

「ん?」

「汗っかきだからって虐殺は駄目だよ」

「いや待てプラチナ、逆に考えてみろ。別に虐殺しても良いんだって」

「「それは違うだろ」」


 エネルとヒカリが同時にツッコミを入れた。

 プラチナは自分勝手な思想に驚愕したが、ベネットと同じくらいの復興貢献度があると言っていた事を思い出して、味方で良かったと思った。アノマリーの呪文使いが敵対するなんて大変だ。


「さて、そろそろ本題に入るか」


 同じくカウンター席に座るエネルが真面目声で言った。

 プラチナも弛緩していた気持ちを引き締めた。前髪が少し鬱陶しい。


「プラチナにはこれから付与のアノマリーを発現して、実験を何度かやってもらいます。理由はどの程度の応用が効くのかを騎士団とレスティア王が把握しておきたいから。そして今後のプラチナが、自分のアノマリーをある程度知って、どう扱うかっていくのかの一つの指標にするために」


 ハゲが治る洞窟内部は、太陽の騎士団が最も警戒する施設となる。髪を生やす目的以外には特に信頼できる人物しか入れず、空中列車と同様に秘密話をするのに適した場所であった。


「ヒカリ」

「了解」


 エネルが合図してヒカリが、透明の袋に入ったガラスコップをテーブルに置いた。


「プラチナ、これは何?」

「え……コップ、だよね? 袋に入ったガラスの」

「正解。これに強い衝撃を加えるとどうなる?」

「割れる」

「正解。ニール」

「あいよ、アノマリー・シロデリカ」


 唐突にアノマリーの呪文を唱えられ、驚くプラチナの視界に映るのは黒の槌、発現されたハンマーだった。

 ニールはそのハンマーを右手に持って、横向きに置かれたガラスコップ目掛けて振り下ろした。


 がしゃん、と当たり前の結果がそこにはあった。たった今出されたガラスのコップは雑に砕かれ、袋の中で無秩序に破片が散らばった。


 割れる音に少しだけ身体を強張らせていたプラチナが、疑問を呈した。


「エネルちゃん、これは一体……?」

「今度は二つ、ニールに割ってもらう。プラチナが付与したコップをね」


 そう言ってテーブル上に出された袋なしのコップ二つ、それらをプラチナの目の前に置かれエネルが続ける。


「さっきも言ったけど、これは付与のアノマリーの力量を測る実験。強度上昇の特性をコップに付与してみて。一つは普通に唱えて、もう一つは無言呪文で同じように」

「わ、分かった……アノマリー・インクシオン!」


 やりたい事を理解してプラチナは、一つ目のコップに触れて付与のアノマリーを唱えた。ハンマーでも叩いても割れない強度を付与できたと思う。

 そしてもう一つは無言呪文。既に心の中で呪文を唱えて発現するというコツを訓練で教わっている。


(アノマリー・インクシオン!)


 プラチナの手によって外見上には変化はないが、コップには強度上昇の特性が付与された。

 ヒカリが破片が飛ばないように、二つのコップをそれぞれ透明袋で包みニールの前に横向きで置いた。


「んじゃ、またぶっ叩くぜー」


 ニールが発現したままのハンマーをコップ目掛けて無造作に振り下ろした。一回、二回、そして力強く三回。もう一つのコップにも計三回。

 洞窟内部のカジノに、硬い物同士がぶつかる音が響く。しかし先程と違いコップには傷一つ付いてはいなかった。


「硬った……全然割れねえなコレ」

「コップの強度上昇は付与できる、と。ちゃんと割る気で叩いた?」

「そりゃ割る気で叩いたさヒカリ。だが割れねー、一応アノマリーで発現したハンマーなのに」

「まあ、流石に呪文付与ができるなら普通にこれくらいは可能か。……だがこれは永続? それとも発現時間に限りはあるのか? つーかプラチナは無言呪文でアノマリーの発現ができている」


 実験に付き合ってくれている騎士団の三人は、それぞれ結果を観察している。

 プラチナはとりあえず、コップの強度を上げる事と無言呪文でもアノマリーを発現できる事を頭の中に叩き込んだ。

 エネルが言った。


「プラチナ、次はこのコップ。浮遊の特性を付与して」

「浮遊って事は……浮かび上がる感じで?」

「実際の付与のやり方に関しては任せるけど、付与した瞬間にぷかぷか風船みたいに浮く感じで」

「うん、分かった」


 目の前に出された新しいコップに触れて、プラチナまたアノマリーの呪文を唱えた。しかし今度はコップが浮かび上がる事はなかった。


「あ、あれ?」


 何度か風船が浮くように付与を繰り返してみた。しかし結果は変わらない。きちんと付与をしたはずなのに。

 実験の続きを観察していたヒカリが言った。


「練度不足なのか付与できない特性だったのか、どっちだろうね?」

「練度不足じゃね? オレも昔は無理だったけど今はクソデカピラミッド発現できるし。訓練次第だと思うぜ」

「何にしても実験を続けるよ。プラチナ、わらわについてきて」

「う、うん」


 その後も付与のアノマリーの実験が続いた。

 スロットの台で同じ絵柄を揃える特性を付与した結果、七七七、が連続で達成され大量のコインが吐き出された。

 空きスペースで発現されたブロレジの障壁に、性能上昇の特性を付与をした結果、通常より防御性能と発現時間が延長されたブロレジが展開された。

 エネルが光球を発現する呪文、フォスンを唱えた。ゾルダンディーの出来事から二週間以上経過しているのに、未だエネルはプラチナの呪文を発現できる。

 様々な特性を付与するプラチナのアノマリーは永続性も可能だと結論付けた。


「まあ、そもそもレスティア王が付与された電撃呪文唱えてたし永続性は今更か」


 複数回アノマリーの呪文を発現したため、プラチナは疲弊してカウンター席にへたり込んだ。そして何故か髪全体が鬱陶しい。

 ヒカリが出してくれたドリンクを飲んで一息をつく。


「まとめると、プラチナの呪文の才能は凄まじいって事が、改めて判明したね」


 エネルが言った。


「実験のほとんどをクリアできてたし、無理だったのも練度を上げればできるようになるかもだし。……後はプラチナが付与のアノマリーとどう向き合うか」

「……どう向き合えばいいんだろう?」


 テーブルに突っ伏しながら、力弱くプラチナは返した。才能があるのは分かったかジレンマは解消されていない。

 そもそもエネルのなりの呪文使いの心構えも、まだ教えてもらっていなかった。かもしれない運転は教わったが。


 事情を既に把握しているニールが言った。


「普通に鍛えていけばいいんじゃね? 物事はシンプルの方が良いぜ。鍛えた力を誇示して抑止として機能させれば、余計な事考えないで楽だし」

「でもそれは、殺人に繋がって……」

「うーん……いやそうなんだけどなぁ、呪文使いの中には最後の悪あがきで自爆呪文とか唱えてくる奴もいるし、中途半端よりは殺すのが安定だしなぁ」

「自爆呪文……そういやスターも警戒してたっけ」


 またプラチナの頭には呪文教の教主が頭に浮かぶ。通算何度目になるのだろうと思った。

 ヒカリが言った。


「別にアノマリーを使わないで電撃呪文だけを極める選択肢もあるよ?」

「アノマリーを鍛えないの?」

「うん、電撃だけに集中してアノマリーを隠匿すればデメリットがないからね。それにプラチナは呪文の才能があるし、訓練すれば殺す手前の手加減ができるようになると思うよ。拘束呪文をメインにしたりして」

「なるほど……」


 秘密都市のレオナルドもボルトティア系統の呪文で、騎士団を追い詰めていた。

 ならば自分も別にアノマリーを鍛えずに、電撃だけを鍛えればそれで……回復呪文も電撃網も発現できるこの方向性で、スターとエネルの役に立てばいいかもしれない。


 エネルが言った。


「結局どんな選択をしても一長一短。悩んで悩んで悔いのない選択をしてほしいって、わらわは思う」

「……ねぇ、エネルちゃん」


 プラチナは気になっていた事を聞く事にした。


「エネルちゃんなりの呪文使いの心構え、まだ聞いてないよ」

「それはもうちょい後でね。詳しくは三十分後くらいに」

「何で? 別に今でもいいけど」

「だって今のプラチナは……」


 そう言ってエネルは手鏡を取り出してプラチナに向けた。そこにはかなり髪が伸びたプラチナが映り込んでいた。


「めっちゃ髪伸びてるし。まずはわらわが切ってあげないと」


 プラチナはたった今、自分の髪が伸びているのに気が付いた。実験や呪文との向き合い方に気を取られていた。

 ハゲが治る洞窟は別名髪が伸びる洞窟。いつの間にか床まで達している自身の髪に触れて、オーバーパーツの不思議な現象を実感した。


「本当に髪が伸びるんだ……いや知ってたけど、こうなるんだ」

「まあ個人差があるからな。プラチナは髪が伸びるのが早いタイプか」

「実験の途中でも伸びてたけどね。真面目に取り組んでて気付かなかったか」


 プラチナは三人に視線を巡らせた。エネルは剣だからともかく、ニールとヒカリの髪は変化がないように見えた。髪が伸びてるのは自分だけ。


「プラチナ、背中をこっちに。纏めてあげるから」

「あ、うん。ありがとう」


 エネルが髪を纏めてくれた。視界を狭めていた前髪もヘアピンで留める。

 全部終わってエネルがプラチナに言った。


「これは話半分なんだけど」

「うん」

「スケベな人は髪が伸びるのが早いらしいよ」

「……うん?」


 エネル、ニール、ヒカリの声が重なった。


「「「ドスケベ・アリエールさん」」」

「いや、違う違う違う!? それは違うから!!」


 プラチナは精一杯力を込めて否定した。



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