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9-4 勘違いはそのままで

 翌日、丸一日はゾルダンディーに滞在する事になった。プラチナは幽閉される前の記憶を辿って、久しぶりの街中を散策する事にした。


 細かい場所まで足を伸ばせば、街の様子は所々変わっていた。やはり五年以上経過していれば、人の流動が激しい首都は変化もする。

 それでも懐かしい想いに駆られる景色を何度も見る事ができ、プラチナは満足した。

 エネル、ヴァニラ、エーテルも同行してくれてとても楽しいひと時を過ごした。


 午後は、城の資料室に篭って調べものをしているスターの手伝いをしようとした。しかしシンシアに母の墓参りを提案され、エネルの進めもあって墓地に向かった。

 大小様々な雲がある青空の下、首都から少し離れた共同墓地に母オリビアの墓があった。


「おや?」


 静謐で自然綺麗な景観で構成されている墓地には先客がいた。茶髪の坊主頭の寡黙な裏方、ライネルだった。


「プラチナ様もいらっしゃったのですね」

「うん、お母さんのお墓参り。ライネルは?」

「私は散っていった仲間達の墓参りになります。無事に終わったと報告しなければなりませんし」


 ライネルは物静かで穏やかに言った。

 脱出の際にナイフを自分に突き付けた、何処か投げやりな雰囲気は全くない。一安心した様子だ。


「アルマンも含め皆、喜んでいると思います。彼らは国が継承者争いで荒れ果てた時からの間柄、救出作戦が成功し王が元通りになって本当に良かったです」


 ライネルは言葉を切って、プラチナの後ろにいるエネルとエーテルを含め四人に深々と頭を下げた。


「改めてご協力、本当にありがとうございました。私の立場上、もう会う事はないでしょうが……受けたご恩は一生忘れません。頼まれ事は全身全霊を持って従事させて頂きます。それでは、どうかお元気で……」


 頭を上げたライネルの姿が薄れて消えていった。会話していたライネルは分身体だった。

 エネルが言った。


「本体の居場所は墓参りの時でも、か……救出作戦は例外だけど立場に忠実、徹底してる」


 プラチナが尋ねた。


「エネルちゃん、頼み事って?」

「ん、大事な事だから小声で……コミタバの情報収集とか、スターが探している人物三人の捜索、とか」

「あ、なるほど……」



 そして次の日、ハゲが治る洞窟がある街へ帰還する時が来た。

 行きの巻き戻しで、首都で汽車に乗り込み国境を越えて国外へ、それから空中列車で帰る手筈だ。


 一日半ぶりに見たスターは寝不足のようだった。両目に隈ができている。

 だが調子はいつも通りのスターだとプラチナは思った。少なくともプラチナにはそう見えた。


「さて! では儂もハゲが治る洞窟がある街に赴くとしよう! うーん、国外に出るのは本当に久しぶりだ、楽しみだなぁ!!」

「メーイドキッーク」

「ごはっ!?」


 シンシアの抑揚のない声が駅のプラットホームに聞こえ、汽車に乗り込もうとしたレスティア王が蹴り飛ばされた。

 そのままシンシアはレスティア王を何度も足蹴にする。


「何サボろうとしてんですかギャグ王が、見送ってすぐ仕事の時間ですよオラオラオラ」

「いやだって、久しぶりの親子愛を育む時間だよ!? 儂監禁されてたしそれぐらいは……あと王を蹴らないで!」

「そのプラチナ様はドン引きしてますよ。ご覧ください」

「それはシンシアが王である儂を蹴っているからだと思うがっ!?」


 そう言って、レスティア王はプラチナに顔を向けた。

 目を合わせずに、プラチナは咄嗟にスターの背中に身を隠した。照れ隠しではない、気まずい気後れする感じで。

 レスティアは地面にうつ伏せに寝転んだ。


「儂、このまま土に還るわ。葬式は盛大にやってもろて」

「死ぬ時は過労死でお願いします。ほら、ボケてないで見送りを」


 騎士団とプラチナは既に汽車に乗り込んだ状態で、シンシアは地べたに横になるレスティア王の片脚を持って見送る形になった。

 汽笛が鳴って、汽車が動き出す。シンシアは丁寧に頭を下げた。


「私は人間が嫌いですが、この度のご協力は普通に感謝しています。今度はハゲが治る洞窟がある街へ、こちらが赴く事になると思いますが、その時はよろしくお願い致します」

「儂もマジで感謝してる! できればずっと同盟関係は続いていきたい!! あとプラチナ、自分に後悔のない選択をーーーっ!!」


 汽車がプラットホームを離れて、シンシアはレスティア王を引きずって歩いて行った。

 汽車は風を切り、線路上を速度を上げて駆けていく。


 一般車両の窓を閉めたエーテルがプラチナに質問した。


「レスティア王って随分雑に扱われてるけど……プラチナ的にいいの? お父さん、だよね?」


 プラチナは記憶を思い返してから答えた。


「昔からあんな感じだから問題なし。お父さん結構ギャグ系でお母さんやスピカにも雑に扱われてたから」

「王様でもあるけど?」

「いいの」

「う、うーん」


 エーテルは困惑気味に首を傾げて唸った。


 次第に汽車は街を抜け、森を走っていた。

 行きは緊張で一杯だったプラチナは、こんな風景だったのかと思いながら景色を眺めていた。


 騎士団の面々は他の乗客に迷惑がかからない程度で、好き勝手に過ごしている。

 その中でスターは腕を組んで眠り込んでいた。エネルは向かいの座席でスターを眺めていた。

 その二人を見ると、もう何度目か分からない感謝の念がプラチナの胸に熱く去来する。

 そして恩を返さなければ、と強く想う。


 自分にはアノマリーという力があった。色んな特性を付与できるアノマリーの呪文だ。

 帰還して少し経ったら、まずはこれを鍛えようと思う。練度を上げれば使い方次第で役に立てるはずだ。

 そして呪文訓練と騎士団の仕事並行して、スターの探しものの手伝いをしよう。雑用でも何でもいい、少しでも恩を返せるように。今度は自分の番なのだから。


 そんなプラチナの想いを乗せて、汽車は次の駅へと、蛇のようにうねりながら運行して行った。

第1章はこれで終わりです。

良ければ評価のほどをよろしくお願い致します。


ここまで読んで頂きありがとうございました。

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