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4-9 地下での戦闘 ②

「ロンゴ・ボルトティア」

「ディアニガル・キュール・バルガライ!」

「エクス・ボルトティア」

「シュリ・ブレイド!」

「ガンシーム・ボルトティア」

「バルガライ・ブラストホウ!」

「ユーラシア・ブレイド!」


 ドバードの地下施設。建物の上で呪文の攻防戦が繰り広げられていた。


 電撃を纏った大槍と黒紫の大玉が、広範囲の電撃と複数の盾手裏剣が、矢印電撃ビームと黒紫の極太光線がいち早く目標に到達しようと殴り合う。

 その衝突の余波は地面を抉り建物を壊し、秘密都市の地下に凄まじい戦闘音を鳴り響かせていた。


 レオナルドの呪文はどれも強烈で、太陽の騎士団は防戦を強いられる形となった。

 エーテルとスター、この二人の呪文使いを相手取ってなお、電撃は押し寄せてきてダメージを食らわせようとしてくる。それをジクルドのブロレジとスターの合間の剣で凌いでいた。


 三対一でも持ち前の火力で正面からのゴリ押し。レオナルドは太陽の騎士団相手に有利に戦闘を進め、その顔には余裕さを醸し出している。


「アクセル・ボルトティア」


 攻防の最中、レオナルドが手を差し向け呪文を唱え、防戦の理由の三分の一を占める等身大の電撃球が太陽の騎士団に射出された。

 迫り来る攻撃を回避するためスターがプラチナを抱えて、エーテルとジクルドが一緒に別の建物の上に急いで飛び移る。


 アクセル・ボルトティア。電撃球を発現する呪文。

 この電撃球自体に呪文を吸収し威力を増大する能力が備わっている。そのため呪文の撃ち合いでは相対する呪文を吸収し、一方的に打ち破る事ができる。

 今まさしく、エーテルのバルガライの呪文を吸収し肥大化した電撃球が命中する所だった。


 場所を変えて呪文の撃ち合いが再開された。

 レオナルドが何ら問題なく呪文を発現している。全く疲弊している様子は見受けられない。

 飛び移る時の着地の瞬間に電撃を射出するタイミングも合ってきている。

 アクセル・ボルトティアをどうにかしなければならない。このままではジリ貧だった。


 煌めく電撃を弾きながらエーテルが叫ぶ。呪文の相殺音で多少声を大きくしないと言葉が伝わらないからだ。


「どうしよう! このままじゃいずれ突破されちゃう!!」


 飛び移る建物も破壊されていき段々と数を減らしていた。かと言って地面を移動するのも地の利がないため危険だ。道に迷ったら何処からレオナルドの電撃が飛んでくるか分からなくなる。状況把握も困難になってしまう。


 スターが右斜め上から差し込まれてくる矢印型の電撃ビームを盾手裏剣で防御しながら思案する。


「どうにかしてレオナルドの隙を作る必要があるな。その方法を考えないと」


 スターとしては、戦力の分散をしての攻略はできればしたくなかった。プラチナを守れなくなる。


「……一応手は考えた」


 ジクルドがぼそりと呟いた。すぐ近くにいたエーテルが反応する。


「ならジクさん! 早く言って!!」

「話す前にバルガスだ。あいつは今何処にいる?」


 四人で姿をくらましたバルガスを攻防の合間に探す。戦闘に参加してないプラチナが見つけた。


「あ、あそこ! 台座の上です!」


 プラチナが指差した方向はゴライオンとエネルが一発芸で盛り上がっている近く、ユーラシア・フォスンが備えられている台座だった。

 その縁でバルガスは腰を下ろしていた。地下内でも一番高い建造物だ。


「バルガス……あいつは何がしたいんだ」


 チラ見したスターが行動の意図が分からず呟く。バルガスはただ座って地下全体を眺めているだけだった。


「戦闘に参加する気はないか……スター、身体の状態は?」


 ジクルドの問いに意識を戻してスターが答える。


「左腕は折れているが……それだけだ問題ない。早く考えた手を教えてくれ」

「いやいや、問題あると思うんですけど!」

「気にするなエーテル。で、ジクルド」

「レオナルドの余裕を崩す。具体的方法は……」

「あっ、そうだった。ボク練習して発現できるようになってたんだった」


 ジクルドが作戦を説明する。その作戦は現状スターもエーテルも納得できるものだった。




 一方レオナルドは、地下内の状況を戦闘の最中に確認していた。

 ゴライオン五体はエネル剣の一発芸に夢中だ。

 ゴー、ゴー、とテンション高めにリアクションを取って興味を示している。その姿からは、五年前の戦争でアカムの軍を叩き潰した召喚生物とはとてもじゃないが思えない。


「バルガスは……上か」


 視線を動かし台座の縁に腰掛けているバルガスを視認する。意図が測れない行動。しかし戦闘の邪魔をしないのならそれでいい。

 レオナルドはバルガスとゴライオンを保留にして太陽の騎士団に集中する事にした。


(あいつらがこのまま素直に殺されるわけは……ないよなあ。面倒くせー)


 戦況はこちらが有利。スター・スタイリッシュは負傷している様子。非戦闘員らしき金髪の子供を庇いつつ立ち回っている。

 しかし太陽の騎士団はコミタバを絶対に壊滅させたい組織だ。それは今までコミタバの傭兵として活動してきた以上身に染みて理解している。そろそろ何らかの策を講じて動いてくる頃合いだ。


(まあ、保険は掛けてるから何してもいいけどな)


 保険を掛けた理由はここが秘密都市だから。だが保険を使わずに済むのならそれでいい。

 レオナルドの状況把握は終わった。後は太陽の騎士団が仕掛けに対応するだけ……。



 そして数回の呪文の応酬後、事態は動いた。


「ヴォルドア・グラズ・バルガライ!」


 太陽の騎士団側の呪文火力が急激に上昇し、レオナルドの電撃が押される形になった。

 レオナルドは僅かに驚きつつもすぐにエーテルに視線を走らせる。見れば片膝を折ったエーテルが右手を地面に置き、その足元中心から黒紫色の光が溢れ出ているのを確認できた。


「バルガライの陣地呪文じゃねえか……!」


 原因はエーテルが立つ地面に浮き出て発光している黒紫色の魔法陣だった。その魔法陣の中にいれば呪文の火力が増幅される。発現難易度が高い呪文である。


「使えるようになっていたのか、アクセル・ボルトティア!」


 このまま守勢では押し切られる。それほどまでに火力の差は歴然になっていた。


 レオナルドは即座に電撃球を発現して狙いを定める。命中させるのは騎士団が足場にしている建物だ。そこを破壊して陣地呪文を無力化する。そして仕切り直す。


 しかし射出する瞬間、スターとジクルドが電撃球目掛けて複数の剣を投擲した。

 アクセル・ボルトティアの性能上、呪文で発現した剣は難なく吸収されて、その質量を肥大化させる。

 それによりレオナルドの視界は電撃球で塞がれてしまった。


(見失った、これが狙いか!)


 急いで射出するも開けた視界には、肉体強化の剣を発現したスターが突っ込んでくる姿と、大剣を持ったジクルドが跳躍して上空にいるのを視認できるだけだった。

 おそらく後の二人は建物から降りて狙われないように姿を眩ませている。射線を切られたのだ。


 ジクルドが空中ジャンプの呪文で方向転換し、レオナルドの後方に着地した。前からはスターの剣が鈍く光り迫って来ている。レオナルドは前後に挟まれた。


 スターとジクルドが肉薄する。対してレオナルドは両腕を二人に向けて迎撃の構えを取った。

 スターとジクルドの剣が煌めく。そして……。


 レオナルドは何もせずに攻撃を受け入れた。


「何っ!?」


 スターが無抵抗のレオナルドの身体に剣を差し込んだ状態で驚愕の声を上げた。ジクルドの大剣も食い込まれている。


 正確には、レオナルドは無抵抗と言うわけではなかった。スターとジクルド。この二人の剣の持ち手を両手でガッチリと掴んでいる。


 レオナルドは嘲笑うように言った。


「馬鹿だなお前ら。ドバードの秘密都市だぞ。未知である都市に本体が馬鹿正面に出張るわけがねえだろ」


 直後に、レオナルドの身体が電撃に変わり二人に襲い掛かった。スターとジクルドは感電して動けなくなる。


 先程までのレオナルドは電撃で作られた分身体だった。

 例え分身体だとしても、本体に近いレベルの呪文を行使できる。それはレオナルドの呪文使いとしての力量の高さを物語っていた。


「ぐっ……、まずい」

「ロンゴ・ボルトティア」

 

 スターとジクルドの二人は身体を少しでも動かし、彼方から曲線を描いて飛来する追撃の雷槍の回避を優先する。


 何とか直撃は免れた。しかし地面に突き刺さった雷槍から迸る電撃が周囲に拡散する。二人は拡散する電撃に巻き込まれてしまった。


「があぁ……っ!」

「ぐっ……!」


 電撃がスターの身体を焼き焦がしていく。スターはもう肩で息をしており、身体に力が入らなくなってしまっていた。

 ガチオーガとの戦闘と爆発、イーブックの罠に掛かった時の負傷、ドバードの老兵、そしてレオナルドの電撃。

 今のスターの身体の状態は、ダメージと疲労の蓄積で限界間近だった。


「ボルトティア」


 その仕留めるチャンスを狙わないレオナルドではない。目視できる範囲に姿を現し、電撃を放った。

 あくまで出が早い呪文で反撃と防御の時間を与えず回避に専念させる。最後の体力も削り取る腹積りだ。

 追い込まれた敵が一番危険だと知っている。詰めの段階でも油断も慢心もない。


「スター!」

「アーミーボルトティア」


 電撃で焦げ、痺れる身体を駆使したジクルドがスターを担いで回避する。しかしその動きは鈍く、それを読んでいたレオナルドが電撃網の呪文を唱えて射出した。

 ボルトティアの拘束呪文で、スターとジクルドは網目が大きい電撃網に囚われてしまった。


「さて、流石に終わりだな」


 脱出しようと踠き、建物から転がり落ちて地面に激突した二人を見下ろしながらレオナルドが言った。

 振り上げたその腕の先にはアクセル・ボルトティアが迸っていた。


 スターは事態の打開策を考える。だが限界の身体と網から流れる電撃でまた痺れしまい思考がまとまらない。


 レオナルドの視界外からバルガライ・ブラストホウが差し込まれた。だが無論、エーテルとプラチナの警戒を怠るわけがないため電撃で迎撃される。

 不意打ちに失敗したエーテルがすぐに追撃に移る。しかしその僅かな時間さえ足りなかった。


「じゃあな、追加報酬の二人」


 レオナルドの腕が振り下ろされた。呪文を吸収して威力を増大する電撃球が上から迫り来る。

 二人に防御も回避する術はなかった。せめて自分が盾になろうとジクルドがスターの上に覆い被さろうとした。


 その時だった。


 不意に何者かが、電撃球と太陽の騎士団二人の間に割って入って呪文を唱えた。


「ラウンセント・メラギラドン」


 右腕を竜の顎に変化させその口から火球を勢いよく射出する。炎と電気の大玉二つは空中で衝突し相殺された。


「なっ、新手か……!」


 開けた視界で、レオナルドが火球を飛ばした人物を見とめて、驚愕と共に警戒を強めた。


 水色の長い髪を後ろに束ねている中性的な顔立ち。カーキ色の野戦服。

 この場ではスターしか知らないドバード兵士。アルス・リザードがレオナルドを見上げていた。


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