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25-1 レスティア王がやって来た

「帰れっ!!」


 その日、太陽の騎士団と街の境目で拒絶の声が響いた。左右に伸びるフェンスを背にエネルが吠える。


「事情が変わった。太陽の騎士団は対話を望んでいない。だから今すぐ帰れ!!」


 だがそう言いつつも内心には焦りがあった。日に日に増える手紙が鬱陶しく、護衛もなしに来るわけがないと返事したのが仇となってしまった。

 仮にここで強引に騎士団領域内に入り込もうとした場合はどうすれば良いのか。目の前にいる一国のトップに強制排除で危害を加えたらどうなるのか。

 様々な嫌な想像が頭に浮かぶ。突然の来訪に正解の行動が分からないエネルは威嚇のように拒絶の意を示すしかなかった。


「帰れ? それはおかしいではないか。条件通り一人で来たというのに」


 対して対話を拒絶された男、ゾルダンディーの王レスティア・アリエールは悠然としていた。

 周囲に配置されたベネットの分身体が警戒する中、右手に持っていた手紙を広げ淡々と読み上げる。


「そこまで同盟締結したいならお前一人で来いや。ただし護衛なしでな。バーカ、アーホ、ウンコ、死ね」

「ぬぐっ、ぐぬぬぬ……!」

「そちらが提示した条件を呑んだのだ。邪険に扱われる謂れはないはずだが?」


 そう言ってレスティア王は僅かに首を傾げた。その表情はポーカーフェイスで何を考えているか分からない。ただ何となく、覇気というか元気がないように見える。

 エネルの隣に立つベネットが言った。


「我々は警戒しているのですレスティア王。何ゆえ、太陽の騎士団と同盟を成そうとするのか。そもそも護衛なしの来訪とか、一体何を考えてるんだ案件ですよ?」

「それは儂自身が強ければ何も問題はない。元来為政者は強者がほとんどだ。この世に呪文がある以上、殺されないよう上澄の呪文使いが就くのが常識だ。無論、信頼できる者に護衛を任せる場合もあるがな」

「まあそれはそうなんですが……それで、同盟締結の理由は?」

「むっ」


 レスティア王は目線を外し、ほんの少しだけ時間を置いてから答えた。


「……そう言えば、考えてなかったな」

「あ?」

「はい?」

「いや、あれだ。太陽の騎士団に興味があったのだ。ハゲが治る洞窟をシンボルとして復興を目指した意味不明な組織だからな。気にもなるさ」


 先程までの冷めた態度が若干崩れたようだった。というより静かながら僅かに慌ててる、そして何処か落ち込んでる。エネルとベネットはそう思った。


「つまり同盟する気はなかった、と?」

「いや……する気はあったさ。繋がりは持ちたいと考えていた」

「でも同盟の理由は考えてなかった?」

「まあ、そうなるな」

「何だそれ」


 エネルとベネットは互いに顔を見合わせた。周囲のベネット達も首を傾げている。

 全く持って理解ができない。一体何が目的なのか。そして全貌が掴めない事柄がまた増えて辟易とする気持ちが大きくなる。勘弁してほしい。


 ベネットが言った。


「それならば帰って貰えませんか? 理由もなしに同盟締結などできません」

「そーだそーだ。帰れボケナス」

「……今更だが不敬過ぎないか? 儂、これでも王なんだが」

「その王様が単身でやって来て、理由もなしとか面倒極まりないでしょうが。こっちだって色々と忙しいのに」

「ほう、ならばゾルダンディーも協力できるが」

「信用の問題でそれは叶いません。お引き取りを」


 ベネットはきっぱりと断った。レスティア王は食い下がる事はしなかった。


「…………ならば、ここまでだな。儂は帰るとしよう」


 そう言って踵を返し背を向けた。本当にもう関心がないようだ。

 無防備な後ろ姿が遠ざかっていく。ベネットとエネルは眉根を寄せて声を投げる。


「……もう、良いので? 同盟締結の話は終わりですか?」

「ああ、終わりだ。よくよく考えればゾルダンディーとでは距離があるしな」

「あんなに手紙送ったのにあっさり過ぎでしょ。何がしたかったの?」

「……様子を見たかったをどうしても我慢できなかった。そうしたら予想外の比較でぶん殴られた気分になってしまった。分かっていたはずなのに」

「意味不明。自分語りは聞いてないよ」

「そうだな」


 既に歩き始めているため徐々に声が小さく、変な会話の切れ方になった。レスティア王は街へと向かう。

 そして完全にその姿が見えなくなった。再度二人が顔を見合わせる。


「どうやら本当に終わりみたいですね」

「うん……同盟はどうでも良い感じだった」

「百を超える手紙を送り付け来訪したかと思えば去って行く……とりあえず、完全に去るまで遠くから監視を続けます」

「うん、警戒を緩めずよろしくね」


 コミタバの動向、暴徒やメタルサソリの動向、ガチオーガとメラギラドラゴン、エーテル・ブラスト計画、そして此度のレスティア王。

 いくら何でも分からない事が多過ぎると二人は思った。



○○○



 本日の天気は晴れ。雲が少なく柔らかい日差しが街に降り注いでいる。

 どうやらこの地方はアカムと違って雪は余り積もらないようだ。多少真っ白になっても日中は氷点下を下回らないため、すぐに溶けて気温が低いだけの街並みに戻る。

 だからか街の住人となった元避難民達も、肌寒い季節にも関わらず普通に出歩いている。

 コミタバを撃退したのもあり、この周辺が一番安全だと安心できるのだろう。見た限りではその顔に不安はないようで新しい生活を歩み始めている。平和だ。


 太陽の騎士団の活動は順調だった。

 復興した事とコミタバ撃退が合わさって、各地から平穏を求め街にやって来る人達が増えているが難なく対応できている。

 人が増えてもニールの建造物に一時的に入ってもらい、その間に街に住居を構える。ベネットの分身体も大勢いて、建設のための知識も物資もあるため日に日に街が拡張されていく。問題はない。


 街の住人は協力的だ。そもそもホムランの時が異常だっただけで、コミタバの襲撃時に暴徒化する事はなかった。平和を目指しての手伝いもしてくれる。

 太陽の騎士団員も皆が協力的だ。初対面も多い中、良く働いてくれている。コミタバの殲滅のため世界に情報の手を伸ばすなんて大それた事をするそうだが、ベネットを中心とした彼らなら上手くいくだろう。


 戦力的にも問題はない。復興の立役者であるベネットとニールという物凄いアノマリーが二人もいる。火山灰から守ってくれたヴァニラ・コースキーもいる。

 分身体も含めてアノマリー四人は世界水準から見ても多いのだ。カインやオーハマーにエネル。ヨビ達、ジクルドにヒカリもいる。正直自分なんていなくても大丈夫だろう。


「……………………」


 そう、もう自分なんていなくても大丈夫。太陽の騎士団はこれからもやっていける。

 ビルに言われた事をしっかりと考え続けたスターは、そう結論付けていた。


 街中にある最近建てられた噴水広場のベンチで腰を下ろす。隣には何故か良く絡んでくるヒカリの召喚生物、棒人間のヤマチが共に座る。


 ずっと考えていた。いくら何でも自分の周りでは人が死に過ぎではないか、と。

 ジャポニの時の一緒にいた家族、アカムの時の孤児院の家族、戦争の時の人達、復興の時の人達、サニーにビル。

 ここまで多くの人達の死を見て来た。数は百を優に超えている。

 普通、人の人生でこれ程までの死を目の当たりにするだろうか。中には自分の手で殺めなければならない場面もあった。戦争、それに復興の際の暴徒鎮圧で。……殺した人とその関係者の未来を奪った罪悪感を抱えているくせにこれだ。抱えているだけで何も変わっていない。


「……………………」


 きっと、これからもそれは続くと思う。そして自分はいつか周りに不幸を撒き散らしてしまうとも思う。

 おそらく、そういう星の下に生まれて来てしまった存在なのだ。自分の意思とは無関係に。

 この先自分の周りで人が死ぬ。自分の所為で太陽の騎士団が、頑張って来た仲間が死んでしまう。

 だからスターはここを離れ、何処か人気のない場所で一人朽ち果てた方が良いと思った。


「……………………」


 無論、色々と気になる事はある。知りたい事が多くある。……だがもう、何も余計な事はしない方が良いはずだ。それがきっと皆のためになる。


 不意に、隣に座るヤマチが身体を寄せて左手に触れてきた。二人は今、三人用のベンチで真ん中と右に座る。

 スターはヤマチを眺め見た。だが棒人間のためその表情は窺えない。しかしその、じぃーと見つめる円顔には真剣味を帯びているような気がする。


 そう言えば孤児院にも棒人間はいた。あの時、サニーが死んだ時にはクレア共々いなかった。今は一体何処にいるのか。

 そうだ。人気のない場所に向かう前にアカムに寄る必要がある。ほんの少しだけ立ち寄って孤児院の状態を確かめてから姿を眩ませて……。


 スターはもう荷物を纏め終わっていた。陽が落ちる前に立ち去るつもりでいた。


「……………………」


 スターはヤマチから視線を外し何となく目前の景色を眺める。この噴水広場はそれなりに広いため、老若男女の人達が行ったり来たりしている。

 太陽の騎士団もちらほらと見かける。パトロールか新たな避難民の対応か、三人のベネットが左から右へと通り過ぎて行った。


 とその時、視界の左端が若干暗くなった。正面左に誰かいるのか陽の光を遮り影ができる。

 スターは誰かと思い左に視線を向ける。そこには見知らぬ男が佇んでいた。


「すまない。その、道を尋ねたいんだが」


 気まずそうな声色の三十代くらいの男だった。ボタンを全て止めたグレーの冬コートから黒のズボンが覗いている。左手に湯気立つ紙コップを持っている。髪の色は緑。


「街の駅には何処に向かえば……」


 ヤマチと一緒にその男を見上げる。物流が再開し小規模ながら商売人もこの街にやって来ているのをスターは思い出した。

 この男も外から来て飲み物を購入したのだ。もうそんな所まで復興が進んでいた。


 スターは立ち上がって駅までの道のりを教えた。街の防衛のため地図は頭の中に入っている。

 説明が終わってから男が言った。


「ああ、助かった。何せこの街に来るのは初めてでな…………何か礼をしないと」

「え?」

「その顔、何か悩みでもあるように感じる。儂に話してみてくれ。頼りになるぞ」

「………………」


 スターは斜め後ろを見返りヤマチに確認を取った。ヤマチも「こいつ何言ってんの?」というように肩をすくめた。


「いや、遠慮しておく」

「むっ、どうして? 礼がしたいだけだが?」

「いや初対面だし、拒否するのが普通で……」


 突然何なのか。内心スターは違和感を覚えながら続ける。


「とにかく、礼はいらないから」

「……そうか、初対面か」

「うん?」

「なら、仕方がないよな」


 見ず知らずの男は諦めた。スターの顔を再度見て手を振る。


「じゃ、儂はこれで。道を教えてくれてありがとう」


 スターとヤマチが見送る中、男は街の駅のある方角へと歩いて行った。


「……んん?」


 男が去ってスターは首を捻って思案する。先程の違和感の正体が未だ分からない。

 変な話だが嫌な感じは全くしなかった。初対面なのにこっちは敬語を使わなかった。それは何故なのか?


 ヤマチの方を見やる。視線の意図を察したようにヤマチも首を傾げる仕草をした。知能が高い。

 スターはベンチに座り直した。そしてそのまま、言語化できない感覚に身を委ねてみる事にした。



 二分後、また先程の男がやって来た。

 今度は左手に紙コップを一つ、右手にも一つ持っている。


「……道に迷ってしまってな。またですまないが迷惑を掛ける」


 男はコーヒーが入った紙コップを二人に渡す。スターは怪訝な顔でそれを受け取った。

 男は勝手にベンチに座る。ヤマチを挟む形となる。


「同じ事を二度も聞いて申し訳ないと儂は思ってる。だから今度は先払いだ。さあ悩んでいる事を話してくれ」

「……これって、追い帰してもまたやって来るのか?」

「儂は方向音痴ではない。だが三度目の可能性がないとは言えない。この世に絶対なんてものはないからな」


 スターは両手に持った紙コップに視線を落とした。僅かな時間でコーヒーを購入してダッシュで戻って来たのか。本来なら胡散臭すぎる行動だ。

 しかしまたも嫌な感じはしない。むしろ受け入れている。包み込む手に熱が伝わる。試しにコーヒーを飲んでみた。


 ごくん、と苦くて熱い液体が喉を通って胃に落ちた。少し時間を置いても身体は何ともないから毒はない。普通の熱いコーヒー。

 男の目的は何なのか。


(……悩み事)


 スターは何故だが話しても良いと思える心持ちになった。無論初対面の人間にあれこれは話せない。ただ話しても良いと思う事柄は一つだけ見つかった。

 これぐらいなら別に問題はない。もう知る余地などないのだから。


 スターは減ったコーヒーを見つめながら自らの願いを吐露した。


「……死んだ家族の最期の言葉が気になっている。彼女が謝った理由を俺は知りたい」


 スターを横から眺めていた男は言った。


「……それはつまり、死者との対話の方法を知りたいと?」

「うん……でも、無理だと分かってる」

「いや無理ではないと思うぞ。方法はなくはない」

「えっ?」


 スターは思わず男を見やる。


「この世には呪文やオーバーパーツがある。ならば死者と対話できる呪文やオーバーパーツも見つかってないだけであるはずだ。事実、太陽の騎士団はハゲが治る洞窟というとんでもない洞窟を見つけただろう?」


 男は続ける。


「呪文もそれは同じだ。口で唱えるだけで念話やショートワープができる。ならば死んだ者と会話できる呪文もまた、理論上は存在するはずだ」


 呪文は超常現象を起こす不思議な言葉。スターもこれまでに様々な超常現象の発現を目にしてきた。


 しかし、と男は言う。そんな手段があった場合大抵は秘匿されると。言うまでもなく、死者と対話する事は情報収集できる事と同義だ。だから普通は探しても見つけられない。


「だが今となっては情勢が激変した。アカムとドバードの戦争から世界は大混乱に陥った。滅亡した国もある」


 もしかしたら完全秘匿されていた世に出てない呪文やオーバーパーツが持ち出されたかもしれない。滅んだ国の何処かに、例えば隠し場所が文書として保管されているかもしれない。


「まあ、大体は暗号化か処分されていると思うがな。だがその情報や力を使って異国の地で再起を図ろうとする者もいるだろう。何らかのトラブルでの紛失もあり得る」

「…………それを探して見つける?」

「限りなく低い可能性だがな」


 まさかの返答にスターは思考の海へと潜る。確かにハゲが治る洞窟があるならば、死者との対話の方法もあるかもしれない。

 そして仮に見つけて実現できた時にはサニーが謝った理由が分かるかもしれない。孤児院の皆が誰に殺されたのかも同様に。

 それ所か逆に応用すればバルガスやネイト、クレアの生死も判明する。生者ならば対話は不可能だから。


(でも……)


 スターは胸に飛来した自己嫌悪に顔を歪める。随分と都合の良いように考えている。

 まず悪用される可能性を考慮する必要がある。仮にコミタバに奪われたりしたら大変だ。奴らは必ず死者との対話を悪用する。

 それに死者との対話は具体的にどんな内容なのかは不明瞭だ。もしかすると自分が殺害した人とも対話する事になるかもしれない。

 それはスターには怖かった。恨みつらみを吐かれる光景が脳裏によぎる。誰かに会話の代役を頼むという自分だけが楽をする最低の案が浮かぶ。


 突如として湧いた希望とそれによる自己嫌悪。メリットとデメリット。そして欲求と恐怖。

 ジレンマが頭の中でぐるぐると回る。ぐるぐるぐるぐる、ぐるぐるぐるぐる。ふと。


(……ビルはどうして笑って死んだ?)


 しばらくの間スターは考え込んでいた。時が経つのも忘れ、ベンチに座る二人の視線も気付かず考え込む。

 周囲の雑音は聞こえない。気配は気にならない。視界はコーヒーの黒に集中し、冬の冷たい風が時折吹いてくる。手に持った紙コップの熱はもうない。


 不意に男は言った。


「ビル……フキャナンは残念だった」


 ヤマチが反応する。スターは認識に時間が掛かる。


「まさかあいつが死ぬとはな。あれだけお前の事を気に掛けていたのに」


 そこでやっと脳が言葉を理解した。その理解が感情に変わり男の顔をまじまじと見る。

 だがしかし男の顔色は読み取れない。無表情ではないが判断に困る。

 同情? 憐憫? 諦観? 期待? 虚な瞳。

 先程までとは別人のよう。


「二人は親友だった。お前の悲しみは計り知れない……だが」


 男は目を伏せた後、空を見上げた。


「頑張れよスター。……俺に言う資格がないのは分かってるが、何とか立ち直って前向きになってくれ。俺はお前が落ち込んでいる姿なんか見たくないんだ」


 丁度雲が掛かり辺りが薄暗くなる。男の顔にも陰りができて更に読めない。

 だがこれはエールだとスターは思った。何故だか分からないが、この初対面の男は励まそうとしている。


 スターは尋ねた。


「……その、何処かで会って?」


 雲が流れ薄暗さは消えた。男の様子は元に戻っていた。


「いいや、さっきと今とで二度目ましてだな。会ってないぞ」

「でも今、励まそうとして……」

「そりゃあ励ますだろ。復興の立役者が落ち込んだ様子でぽつんとしてたら」

「立役者……」


 男は立ち上がった。左手を腰に当て呆れたようにスターを見下ろす。


「もう少し、お前達太陽の騎士団は凄い事をした自覚を持ってくれ。何の思惑もなく人助けに奔走する組織など、前代未聞なのだぞ? もっと早くに、その存在を知る事ができたらと思わずにはいられない程な」

「えっと、それはどういう……?」

「ふははははは、よく考えれば不敬ではないか。生意気だぞ下民」

「???」

「ふっふっふっ」


 不敵な笑みを浮かべて誤魔化した男はもう去る気満々だった。最後に言葉を一つ。


「まあ別に一人でやる必要はないさ。お前には信頼に足る仲間がいる。頼ってみるのも一つの手だ。……では、またな」


 そう言って男は今度こそ駅の方角へと去って行く。程なくしてその姿は見えなくなった。


「……………………」

「スター」

「んおっ」


 呆けていたら後ろから声を掛けられた。振り向くとエネルとベネットがいつの間にかそこにいた。

 エネルが言った。


「今話してた男、どう思った?」

「えっ?」

「レスティア・アリエールなんだよ。あのおっさん」


 ベネットが言葉を引き継ぐ。


「手紙の返信後に来訪して来たのです。騎士団本部に入ろうとしたのですが、結局やめてスターの元へ」

「レスティア王、だったのか。確かゾルダンディーの?」

「はい」

「そうか……」


 スターは思い返した後、首を振った。エネルが応じる。


「ごめん、良く分からない」

「分からない? 具体的にどう分からないの?」

「初対面なのに親しげに絡まれた。それと励ましてくれた」

「励ましてくれた?」

「落ち込んでいる姿を見たくないって」

「……何で?」

「分からない。ただ……もう一度だけ、色々と悩んでみようと思った。本当にもう一度だけ」

「??? ごめん、わらわ分かんない」

「うん……」


 スターはそのまま黙してしまった。エネルとベネットは首を傾げた。



 それからスターは再度考えて答えを出した。散々悩んで死者との対話の方法を探す事にした。

 レスティア王に言われた通り、それを復興初期のメンバーとジクルドに話してみた。その結果全員が快く協力すると言ってくれた。


 そして世界に足を運んでのスターの探しものが始まった。

 時にエネルやオーハマーと。時にカインやジクルドと。時にベネットやニールと。詳細を伏せてヒカリやヴァニラやエーテルと。

 複数人で。騎士団の任務も合わせて。


 時は流れ五年の月日が経過した。とある情報からスターの目的が達成できそうな任務が発生した。

 その機密性の高さから情報制限のためスターを、一時的に知っている者は知っている行方不明として任務に当たらせた。


 でも結局は、それは空振りに終わってしまった。だがドバードの秘密都市の情報を新たに取得した。


 そしてそんな時、ゾルダンディーの裏方から箱入り娘を連れ戻してほしいという依頼を受けた。

 秘密都市は秘密の都市。だから後回しで良い。そう判断したスターとエネルはタミヤの街に向かい……。


 プラチナに出会った。



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