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23-6 コミタバを退けて

「それで気付けばガチオーガは消えメラギラドラゴンは去って行った、と」


 大地の裂け目での報告を終えたエネルとオーハマーが頷いた。騎士団本部にある一室、対面にはベネット本体がソファに座る。


「そうっす。トドメはこっち任せた感じで離脱してメガロドンを仕留めてから向かったら遠くに去って……何が何だか分からないっす」

「ガチオーガの方も同じ。スターの命を救った後に共闘した。そしてスミスと存在強化が始末された後、少し目を離した瞬間にガチオーガは音もなく消えていた。召喚生物発現の光のゲートはなかったと思う。わらわも何が何だか分からない」


 オーハマーと一緒に嘆息したエネルが続ける。


「そしてもう一つ、その事に関しては分からない事がある」

「まだあるのですか」

「コミタバ側の召喚生物が前方からしか来なかった点がどう考えてもおかしい。多分ガチオーガを発現した奴ともう一人……いや複数かもしれないけど助けてくれた奴がいる」


 大地の裂け目は荒野に生じた底が見えなくらい深い地割れである。それは縦に前と後ろ、見る角度を九十度変えれば横に左と右に長く伸びている。

 そんな中、スミスは中間付近で大地の裂け目へと飛び込み逃走を開始した。ならば騎士団視点、前方だけではなく後方からも召喚生物が襲来して挟み撃ちにされるはずだ。大地の裂け目がコミタバのアジトというならば。

 だが実際は前方からしか敵召喚生物は襲って来なかった。後方からはなし。謎が増えるばかりだった。


 少しの間、行き詰まる。今回の襲撃は不可解な点が多すぎた。だが停滞する意味はない。

 分かる事から始めようとオーハマーが再開した。


「えーと、とりあえずメラギラドラゴンは街にいた個体で良いんすよね?」


 停滞中、何やら考え込んでいたベネットが顔を上げて返した。


「ええ、モノリスを相手取っていた個体だと思われます。飛んで行くタイミング、大地の裂け目の方角。間違いないかと」

「モノリスの撤退方法はどうだったんすか?」

「デイパーマーと同じです。突如付近の建物からモノリス……あの大きな石板を持った兵隊が溢れ出てきました。おそらく襲撃の最中か前に準備していたのでしょう。それで的を散らされてモノリス本体を見失ってしまいました。申し訳ありません」

「いや、謝る事はないよ。そもそも出来たばかりの組織の連携が上手くいくわけがないし」

「ですがその所為でスミス方面に私の分身体を回せなかった。常に移動していたとはいえ、その皺寄せがスターにいってしまった。上手くはいかないものです」


 そこでエネルが口を挟んだ。若干不満げにベネットを見やり目が合う。


「その事で文句じゃないけど、わらわ言っても良い?」

「はい何でしょう?」

「今回の襲撃、ベネットの分身体の動きが鈍かった気がしたんだけど……」

「あ、それ私も気になったっす。民間人の救助や兵隊の対応も分かるんすけど、もうちょい数を割いてコミタバに突撃してほしかったっす。使い捨てが効く分身体なわけだし」


 二人の視線が注がれる中、ベネットは悠然に答えた。


「それは別勢力の介入を警戒していたからです。大量の分身体の操作が慣れてない等の理由もありますが、一番の理由はそれです」


 その返答に二人は首を傾げた。ベネットが続ける。


「今回の襲撃はコミタバだけでした。メタルサソリや暴徒はなし」

「「あっ」」

「あれだけいたというのに、ホムランで活動していた時のような状況にはならなかった。残念です。せっかく街を囮にして一網打尽にする予定だったのに」

「ん?」


 思いもよらない言葉が出てオーハマーが呆気に取られた。


「えっ、……囮にしてたんすか? 街を」

「ええ、街の警戒を手薄にして敵が集結次第、味方を撤退させ民間人ごと殲滅するつもりでした」

「民間人ごとって……えぇ」

「えぇ、じゃないですよオーハマー。あの時ビルが死んだ後に、情け容赦のない活動をしていくと言ったじゃないですか。驚かれるのは困ります。これからも必要なら民間人を無視すべきなのです。無論その必要がないのが一番ですが」


 エネルが言った。


「わらわ、賛成。別に太陽の騎士団は正義の味方ってわけじゃない。人間三割死ねって思ってるのを差し引いても、コミタバを消せるならそれで良いと思う」

「そうですよね。……思っていたのですか」

「でも今回の反省点は改善しないといけないよ。手薄にした結果、コミタバに準備されて逃げられたんだから。対策を講じないと」

「それは街中に騎士団支部を建設して対応する事にします。やはり監視の目は多くないと駄目なのは痛感しました。同時に私の分身体も配置しておきます。操作の訓練には丁度良い。騎士団の連携もこれからの訓練を通じて引き上げていきます」

「で、引き続き街の防衛が不可能と判断した場合はここに撤退する……って事っすか?」

「はい。遠距離砲撃呪文やニールの建造物をぶつけて街ごと一掃しましょう」

「街は後から建て直せば良いからね。被害はコミタバがやった事にでもすれば良いよ」

「そうですね。そうしましょう」

「おおう……まあ仕方がないか。てか遠距離砲撃と言えばデイパーマーは発現しなかったすよね? 何でっすか?」

「わらわ分からん。スミスだけ汽車で撤退した理由も含めてね。謎が多すぎだって」

「本当にそうっすよ」

「むっ」


 ベネットが話の途中で小さく唸った。その緊急性がない顔を見たエネルが察して言った。


「調査結果、出た?」

「……出ました。鋭利な刃物か何かで斬殺された死体が転がっています」


 今現在、スター達は大地の裂け目の調査を行っている。帰還してすぐにベネットのアノマリーで身体の状態を全快させて、大量のベネット分身体と共に急行した。

 目的は大地の裂け目にあるコミタバのアジトである。スミスの言は最早疑いようがない。

 アジトの中には別のコミタバがいるかもしれないが、情報収集のためニールやアノマリー使用可能のベネット分身体など過剰な戦力が投入されている。

 ベネットは今、先行している分身体から送られる大地の裂け目の情報を口にしていた。


「モクリュウにファング、コモドドラゴンに棒人間……数は多いです。やはり何者かが後ろを食い止めていたのは確かなようです」

「ガチオーガは?」

「今の所は見受けられません。スミスが配置してないと口にしていたのは真実として考えるべきかと」

「なら、やっぱりヒカリになるんすかねえ? 複数の召喚生物を発現できるし」

「襲撃最中の動向は?」

「途中で見失ったため不明です。目を僅かに離した瞬間にいなくなったので。ですがあなた方が帰還する前には既に街にいて……だから、どうなんでしょう?」

「それはこっちのセリフっす」

「一応聞き取りの結果はガチオーガは知らないとの事でしたが」

「何とでも言えるよね」

「ええ、その通りです。……むっ、コミタバのアジトらしき建物を発見しました」


 再びベネットが唸って送られてくる情報に意識を傾ける。


「谷底に建設されたログハウス、ですね。丸太を中心にして造られた小屋。複数人が一時的に休息を取る場所のようです」

「感想はいいから突入して」

「少々お待ちを。建物を包囲して横槍も警戒して……スター達も追い付きました。これより内部調査を開始します」


 まずはベネットの分身体が中に入って罠の有無を確かめる。エネルとオーハマーは固唾を呑んで次の言葉を待った。

 ベネットが顔を顰めた。


「……どうやら一足遅かったようです。罠はないようですが中は荒らされています」

「荒らされているんすか?」

「急いで必要な物を回収していった感じです。暗号化された書類が床に散らばり本棚の本は所々抜き取られています。金庫らしき容器は開けられ中身は空っぽ」

「……これは、一旦帰還したのは失敗だったかもしれないっすね。成果なしは嫌っすよ」

「いやその選択は結果論だよ。全快してから最速で向かったわけだし……ベネット?」


 ベネットは固まっていた。顔を顰めたまま今度は眉根を寄せる。


「暗号化されてない文書を見つけました。今、内容を読み進めているのですが……これは、何故? 明らかに進み過ぎている」

「一人で納得しないで早く共有しろって」


 エネルに急かされベネットが答えた。


「エーテル・ブラスト計画、というものです。非人道的な実験内容がそこには記されています」


 不穏な気配を感じ取りエネルとオーハマーは顔を引き締めた。


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