夜の声
夜は寝ようにも寝られない。
寝れば嫌なことは忘れられるのに、何故か寝られず、悪いことばかりが頭をよぎる。
誰が私を寝させないのか?私を遠くから操る悪魔か何かが、私を悩ませ、寝られないようにしているのか?
実にもどかしい、苦しい。明日もこの何とも云えない焦燥感と無力感が冬が迫る現実と共にさわさわと差し迫っているのだろか?
こう考えると眠れないのだ。
と、玄関の猫の置物が言っていた。私はその声をはっきりと聞き、何とも云えない気持ち悪さに見舞われた。私は猫の置物から離れようと、家を飛び出した。
暗い夜道を寝巻き姿で裸足で声が聞こえないようにと走り出した。
外は寒くて、吐く息は白くなる。古いアスファルトを走れば足は冷たく、畠のあぜ道を走れば小石が突き刺さり、とても痛い。
どれだけ走っても、川を越えて、少し離れたコンビニまで走っても、声がはっきりと聞こえてきた。
気を紛らわせようと、寝巻きで裸足姿であるのも忘れて、コンビニに入った。
しかし、レジの台には猫の置物が鎮座していて、店内の音声は、猫の置物の一人語りが流れていた。
夜は深くなるのに、私は眠れない。この孤独な心を沈めるために、心を殺そう。そうだ、馬鹿みたいに笑おう。真面目ぶらないで笑おう。背伸びしたって私はダメなのだ。ダメな自分を笑おう。
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ( ´∀`)!!!
店内のBGMは笑い声であふれた。私の耳には笑い声と心が壊れて叫ぶ自分の声が聞こえてきた。
私はムンクの絵のように、薄気味悪く点滅する照明の店内で、耳をふさいだ。笑い声と叫び声が聴こえないように。
耳を塞いでいると、私は肩を叩かれた。振り向くと、コンビニの店員が立っていた。店員は、はっきりと言った。
こんな詩を書いているから寝られないんだ!早く寝なさい!と。