運命を変える決意
──もう待っているだけじゃ駄目だ。
俺は書斎で『マル秘ノート』を開きながら、強くペンを握った。
これまで、俺は 「姉の破滅フラグをへし折る」 ことを目的にしてきた。
けれど、そのためにできることは「ゲームの知識を頼りに立ち回ること」だけだった。
だが──その知識は、もう役に立たないかもしれない。
──このままでは、姉は破滅する。
1. 予想以上に早まる破滅フラグ
ゲームでは、姉が婚約破棄されるのは ヒロインが登場し、彼女を邪魔し始めてから だった。
だが、今の状況は違う。
ヒロインが登場する前から、姉はすでに破滅寸前の状態にある。
俺が知るストーリーなら、婚約破棄の時期は 少なくともあと1年以上先 のはずだ。
だが、このままパーシバル殿下が姉を無視し続ければ、婚約破棄はもっと早く訪れる可能性がある。
──本来の流れよりも、速い。
俺は、これまで「ゲームの知識を使ってフラグを折る」という考えに固執していた。
だが、それでは間に合わないかもしれない。
2. 俺ができることは何か?
今のままでは駄目だ。
姉がいくら努力しても、パーシバル殿下は彼女を婚約者として認めようとはしない。
このままでは、努力すればするほど、姉が傷つくだけだ。
「王太子妃として認められる」方向ではなく、別の形で姉を救う方法を考えなければならない。
──たとえば、王宮の動きを探る。
王家はこの婚約をどう考えているのか?
このまま婚約を続けるつもりがあるのか?
あるいは、パーシバルが動かなくても、王家の意向で婚約破棄が進められる可能性は?
または──新たな婚約者候補を探すという手もある。
俺が知る限り、姉は婚約破棄されたあと、“求婚する者が誰もいなかった” ことで悪役令嬢としてのレッテルを強め、追放に至った。
だが、もしも 姉に新たな婚約者候補がいれば、破滅フラグを回避できるのではないか?
──その可能性があるとすれば……。
ふと、オリヴァーの顔が脳裏をよぎる。
3. オリヴァーという可能性
──オリヴァー・トーマス。
彼は、ゲームの世界には存在しなかったはずの男だ。
それなのに、今この世界では、俺の親友として、そして姉を誰よりも気にかける人物として存在している。
彼の姉への態度は、普通の友人としてのものではない。
彼は、王族の立場にありながら、婚約者であるパーシバルよりも姉のそばにいる。
もし、オリヴァーが姉の婚約者になれば、破滅フラグは回避できるのではないか?
だが、それを考えると同時に、ひとつの疑問が浮かぶ。
──オリヴァーは、本当にただの「ゲームにはいなかった存在」なのか?
俺がこの世界に転生したことで、オリヴァーという人物が生まれたのか?
それとも、もともと彼は「ゲームには存在しなかったが、もともとこの世界にはいた」人物なのか?
だとすれば──この世界は、本当に 「ゲームの世界」 なのか?
4. 運命を変えるために
俺はゆっくりと息を吐き、ノートに新しい言葉を書き加えた。
「姉の婚約破棄を阻止するには、別の手段を探す」
そして、次にこう書いた。
「オリヴァーは、何者なのか?」
ただ破滅フラグを回避するだけでは、姉を救えない。
俺が、もっと世界の仕組みを知る必要がある。
この世界は、本当に 「ただの乙女ゲーム」 なのか?
──それを知るために、俺は動き出さなければならない。