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探り




 ──オリヴァーの言葉が、頭から離れなかった。



 「王宮の動きには注意しておけよ」





 あいつが軽い調子で言うときほど、何か裏があるのは分かっている。


 それなら──俺も、探ってみるか。




 宰相の息子という立場を利用すれば、王宮の動きの一端くらいは掴める。


 直接、父に聞くのは避けた。

 もし本格的な政治の話なら、余計な詮索をしたと知られたくない。


 だから俺は 「下級貴族や侍女たちの間に流れる噂」 を探ることにした。


 貴族社会では、正式な決定よりも、先に噂が広まる ものだ。

 侍女たちのささやき、貴族の子弟たちの会話──

 それらの細かな情報を拾い集めることで、王宮の流れを読むことができる。



 数日間、王宮内で耳を傾けてみると、すぐに 「二つの大きな話題」 が見つかった。


 ・王太子と姉の婚約破棄の噂が、少しずつ広がっている。

 ・聖女候補の登場により、王宮内の一部で「新たな婚約者選び」の話が出始めている。


 ──予想以上に、早い。


 ゲームの流れなら、ヒロインが登場してから婚約破棄の話が本格化するはずだ。

 けれど、今の王宮は 「ヒロインが聖女候補として登場した時点で、すでに動き始めている」。


 俺は、焦りを覚えた。




 姉とパーシバルの婚約が、うまくいっていないのは周知の事実だ。

 それでも、今まで王宮は正式に動こうとはしていなかった。


 けれど、ここ最近、婚約破棄を推す声が強くなりつつある という。


 「王太子が彼女を受け入れない以上、婚約を見直すべきでは?」

 「アンジェラは次期王妃としてふさわしいが、肝心の王太子が無関心なのでは意味がない」


 王宮の重臣たちはまだ決断していないが、「このままではいずれ破棄される可能性が高い」。


 ……最悪だ。


 このままでは、姉は本来のシナリオよりも 早い段階で破滅ルートに進む ことになる。




 もう一つの問題は、聖女候補の登場 だった。


 「聖女の力を持つならば、王家を支えるのが当然ではないか?」


 そう考える一派が、王宮の中に現れ始めたらしい。


 彼らは、「王妃としての理想像」に聖女の存在を重ね始めている。

 つまり──**「聖女と王太子の結婚が望ましいのでは?」** という声が、少しずつ上がり始めているのだ。


 これは、ゲームの流れとは違う。


 ゲームでは、王太子とヒロイン(聖女)は、婚約者ではなく恋愛関係から始まる。

 けれど、今の王宮は「恋愛」ではなく「政治的な結びつき」として、この二人を絡めようとしている。


 このままでは、ヒロインが登場する前に、すでに婚約破棄と新たな婚約が決まる可能性すらある。


 ……まずい。



 俺は、メモを取りながら思考を整理する。


 - 姉の婚約破棄が本格的に検討され始めている

 - 聖女候補が現れ、彼女を王妃にする動きが出始めている

 - ゲームの流れよりも、展開が早すぎる


 これは、もはや「ゲームのシナリオをなぞる」どころの話じゃない。

 俺の知っている物語とは、まったく別の方向に進み始めている。


 俺は、ここまでの情報を整理し、深く息を吐いた。


 このままでは、姉が破滅するまでの時間が、思ったよりも短い。


 ……何か、手を打たないと。


 俺が情報を整理していると、不意にオリヴァーの言葉が頭をよぎった。


 「王宮の動きには注意しておけよ。俺たちには関係ない話かもしれないけどな」


 ──本当に「関係ない話」なのか?


 オリヴァーは、王宮の動きをどこまで知っている?

 彼は、婚約破棄の可能性をどこまで考えている?


 もし、彼がこの流れを知っているのなら……


 「あいつなら、何か手を打てるのか?」


 俺は立ち上がり、剣を腰に収めた。


 まだ決まったわけじゃない。動けるうちに、俺も動かなきゃいけない。


 オリヴァーに話を聞くべきか……いや、それとも…


 考えながら、俺は次の行動を決めようとしていた。







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