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モースと領主は悩ましい

 モースはガチガチに緊張していた。

 普段はバゲッツの街を巡回する衛兵に過ぎない彼にとって、今いる場所はあまりに不相応な場所だからだ。


 ここは領主館の三階にある一室――それも、バゲッツの街を拠点に周辺一帯を治めるカッツ・サンデル辺境伯の執務室なのである。

 更に言えば、辺境伯その人が自分との面会時間を作るべく、丸眼鏡をかけた女性秘書官に急かされながら横の執務机に山ほど積み上げられた書類を猛烈な速さで処理しているのだから、居たたまれなくて仕方なかった。


 そんなこんなで肩身の狭い思いをしながら待ち続けた時間にも、ようやく終わりが訪れた。


「ふう、やっと片付いた。

 ずいぶん待たせてしまったね。

 何しろ、普段は夕刻までゆっくりやってる今日の分の仕事を、君のために昼食後に本気で終わらせてみたら半刻はんときも掛かってしまってね」


 全ての作業を終え、大きく背伸びしながらやってきた齢三一の若き領主は気さくに話しながら、モースと対面のソファーに腰を下ろす。

 半刻しか掛からなかったの間違いではないだろうかと思ったモースだが、領主様の感覚は一般人の自分とは別物なのだろう、と何も言わずにおいた。


「さて、これで心置きなくゆっくり話せるわけだが……君がわざわざ休暇を使ってまで私に会いに来たということは、やはり君の友人のマクナルディ君の件かな?」


「は、はい」


 赴きの用件を推察されたことに驚きつつ、モースは神妙に頷いた。


 モースとマクナルディは、お互い隣家に住む同い年の幼馴染だった。

 小さい頃から街を守る衛兵に憧れていた彼らは、成長して一六の時、当然のごとく衛兵隊に入る道を選んだ。

 厳しい鍛錬に耐え、いっぱしの衛兵と認められた際には、ともに喜びを分かち合ったものだ。


「こちらに上がってくる報告によれば、なかなかに活躍しているみたいじゃないか。

 友人の君としても鼻が高いだろうと思っていたのだけれど……もしや、彼だけ褒めやそられて嫉妬でもしているのかな?」


「そんなことはありません!

 自分は、ただ――」


 モースはそこで言葉を躊躇ためらい、複雑そうな表情を見せた。


「ただ、今の彼――マクナルディを名乗る偽物を受け入れることはできない、か」


 その理由を察したカッツは、かつての出来事を思い起こした。


 半年前に起きた、通りを歩いていた商人が暴漢に襲われ、大金の入った鞄を奪われかけたという事件。

 たまたま巡回中に近くを通りかかり、騒ぎを聞きつけた衛兵のモースとマクナルディの両名によって犯人は捕らえられた。

 だが、その際に犯人が隠し持っていた短剣ダガーで胸を刺し貫かれ、衛兵マクナルディは不幸にも帰らぬ人となったのだ。


 しかし、話はこれで終わらなかった。

 それからひと月ほどたったある日、死んだはずのマクナルディが元気な姿でモースの前に現れたのだ。

 モースは大いに驚き、彼の住む安普請やすぶしんの借家から一歩も出ないようきつく言い含めたうえで上司に知らせた。

 当然、この知らせは領主であるカッツの元にも届くこととなり、彼は信頼のおける部下達に徹底的な調査を命じた。

 深夜にこっそりと墓を掘り返して遺体が現存していることも確認し、マクナルディを名乗る彼自身を呼び出して取り調べも行った。

 その結果わかったことは、今生きているマクナルディは本人ではない、ということだった。

 正確に言えば、死んだマクナルディが刺された時に流れ出た血によって育ったマンドラゴラ――すなわち、アルラウネであることが判明したのである。

 

 処刑された殺人鬼の血を受けて本物以上に暴れ回ったり、非業の死を遂げた騎士の意志を継いで城を一人で壊滅に追い込んだり、と。

 物騒で血生臭い伝説で有名な化物の存在に、領主館は一時騒然となった。

 落ち着いている場合ではない、すぐに退治すべき、などという声もあったが、それに待ったをかけたのが他ならぬカッツだった。


『衛兵マクナルディはかつて、バゲッツの治安を守るために命を賭した善人だった。

 彼の血を受けたのであれば、このアルラウネもまた善なる者であろう。

 彼を討つこと、まかりならぬ』


 その御触れが出されて数日の後、偽マクナルディは改めて衛兵隊に配属され、再びモースの相棒として組むことになったのである。

 

「あのマクナルディそっくりのアルラウネってのが悪い奴じゃないのはわかってるつもりです。

 まるで死んだマクナルディが蘇ったんじゃないかってくらい、アイツとは息がぴったり合うんです。

 でも、アイツの人間離れした活躍を目の当たりにする度に、やっぱりこいつは違うんだって思い知らされるんですよ」


 例えば、剣を持ったごろつき一〇人を相手に一人素手で立ち向かい、全員を一瞬で吹っ飛ばしたりとか。

 ある時は、突然暴れて向かってきた大きな軍馬の鼻っ柱を一発殴って昏倒させ、そのまま担いで運んだりとか。

 先日など、遠く離れた場所から暗殺者がとある貴人を狙って弓を構えているのをいち早く察知し、貴人の前に躍り出ると放たれた矢を全て叩き落とし、逃げる暗殺者にあっという間に追いついて捕まえるという荒業までやってのけてしまった。

 もちろん、モースの知る幼馴染は、そんな力を持った人間ではなかった。


「近頃は、マクナルディの偽物は周囲から受け入れられるようになりました。

 自分達を襲う化物じゃなくて、悪い奴らから守ってくれるすごい奴だって。

 でも、本物にできなかったことをしてしまうアイツは、どんなにすごくてもやっぱり偽物でしかないんです。

 アイツを受け入れてしまったら、犠牲になったマクナルディが報われないじゃないですか。

 だから自分には、今のマクナルディを受け入れることはできません」


 決然と、モースは言い切った。

 いつの間にか溢れ出ていた涙を拭い、ぐすりと鼻をすする。


 なるほど、とカッツは大きく頷いた。

 マクナルディという名のアルラウネが認められ、マクナルディという名の人間ほんものが忘れ去られていく。

 その現状に、目の前の若者は我慢がならないのだ。

 ゆえに、かつての友人と重ねてしまう自分自身もまた、許せないでいる。

 怖いのだ。

 友人の死を悼むことを忘れることが。

 

「では、まずはその認識を改める必要がありそうですね」


 唐突に横から言葉を挟んできたのは、それまで生真面目な表情を変えることなく静かに様子を見守っていた女性秘書官である。


「おや、フレンスタ君。

 何か意見でもあるのかい?」


「いえ、意見というほどのものではないのですが」


 領主の言葉にそう前置きすると、くい、と眼鏡の位置を指で整えながらフレンスタ女史は話し始めた。


「モース君。

 あなたが亡くなったマクナルディ君を想う気持ちはわかります。

 ですが、だからといってアルラウネの彼を偽物として否定することは、彼のためとは言えません。

 なぜなら、マクナルディ君の血によって育ったあのアルラウネは、彼の遺志を継いだ存在だからです。

 モース君から見ても、今の現状は彼の遺志に沿った形となっているはずです」


 言われて、モースははっとする。

 街中を共に巡回しながら辺りを眺める生き生きとした眼差し。

 そして、事件に遭遇した際には迷いなく駆け出していくひたむきな姿勢。

 化け物じみた力を持っていることを除けば、今のマクナルディは確かに生前の彼の望みのままに生きている。


「あのアルラウネは、言うなれば彼そっくりの人形なのですよ。

 それをあの世から見えない糸で操り、マクナルディ君は今もこの街を守っているのです。

 そう解釈してみてはいかがでしょうか」


「人形、あの世から操る……」

 

「本物とか偽物とか、気にする必要はないのです。

 あなたはこれからもマクナルディ君と一緒にいる()()()で、以前のように仕事を続けるだけで良いのですよ。

 それが、亡くなった彼の遺志に応えることにもなるのですから」


「今のアイツのそばで、以前のようにいられる気がしないのですが……」


「あなたにできなければ、他の誰もできませんよ。

 そうですよね、ご領主様」


 自信なさげなモースに答えながら向けられたフレンスタの視線を受けて、カッツは大きく頷く。

 

「彼女の言う通り、彼のお目付け役というこの役目はモース君にしか務まらないと私は思っているよ。

 まあ、どんなに頭で理解したところで実際にわだかまりなく受け入れるには相応の時間がかかるだろうし、無理に気負わなくていいよ。

 そうだね……さしあたって、アルラウネの彼がまた化け物じみたことをしでかしたら、こう呟くんだ。

 『マクナルディの馬鹿が、またやらかしやがったな』ってね。

 この街を守るのが楽しくて、調子に乗ってしまったんだとでも思えばいいよ。

 口に出して鬱憤うっぷんを晴らすだけでも、案外違うものさ」


「……わかりました、試してみます」


 そんな簡単なことで気が晴れるものだろうか、と正直疑わしげだったが、領主からの勧めでもありモースはそう返事する他なかった。


 ふと、カッツが執務室の窓を見やると、ふむ、と鼻を鳴らす。


「フレンスタ君、時間はまだあるかな?」


「ご領主様が早くに仕事を終わらせてくださったので、たっぷりと」


「よし、ではせっかくモース君に来てもらったことだし、君から見た今のマクナルディ君について色々と聞かせてもらおうかな。

 君の上司からも報告書を貰ってはいるんだけど、詳細が書かれてないからわからない部分もあってね。

 もうしばらく、我々の話に付き合ってもらうよ」


 相談しにきただけのモースとしては用件が済んでいたのだが、どうやらご領主様方はまだ話を終わらせてくれないらしい。


 結局、些細なことまで根掘り葉掘り聞かれ、ようやく話が終わった頃にはすでに日が傾いていた。






 面談の時間が終わり、一礼して執務室を退出していく衛兵モースを見送ったカッツは、そのまま窓辺へと向かう。

 ちょうど街の中央の大通りの真正面に位置しており、更に三階という高い場所にあるこの部屋からは街の様子がよく見えるのだ。


「それにしても『あの世から見えない糸で操る』か。

 君があんな非現実的な言い回しを使うとは、思ってもみなかったな」


「説得するためと思えば、非現実的な表現でも何でも用いますよ。

 それが、真に現実的というものではありませんか」


 書類に目を通しながら答える秘書官フレンスタの平然とした物言いに、カッツは思わず口元を緩ませる。

 元々は没落貴族の生まれで不遇を囲っていた彼女を秘書官に抜擢ばってきしたことに反対する者もいたが、彼女が着任してから政務の能率が今までよりも格段に上がり、女のくせにと不満の声を上げていた者たちはその実力を見せつけられて黙るしかなかった。

 現実主義者で不愛想でお堅いところはあるが、こうして融通を利かせる柔軟さもしっかりと持ち合わせている。

 いまだ齢二〇のこのうら若き才媛を自分の片腕に選んだのは間違いではなかった、と彼は密かに思っていた。


「ご領主様こそ、面倒くさがり屋なのにあそこまで親身になってモース君の相談に乗られるとは意外でした。

 随分と彼を気にかけておいでですね」


「それはそうさ。

 アルラウネを友人に持つ人間なんて滅多にお目にかかれないからね。

 彼にはこれからもマクナルディ君の補佐と監視を頑張ってもらうことになるし、手心は加えておかないと」 


 冷めた声で切り返され、痛いところを突かれたカッツはおどけながらそう言うとゆっくり腕を組んだ。


「彼が騎士か貴族だったなら特権を持つ職務にでもつけてやれば済む話だけれども。

 いくらマクナルディ君を完全に制御できるのが彼だけとはいえ、それだけの理由で平民の彼を重役に取り立てたりしようものなら、あちこちから不満が出るのは目に見えているからね。

 今は相談に乗ってやるくらいが関の山かな」


「賢明な判断かと。

 ところで、先日の事件で捕らえた襲撃者のことで報告が上がっているようですが」


「おや、素性がわかったのかい?」


 はい、と返事するとフレンスタは脇に避けてあった書類をそっと手に取って内容を読み上げる。


「取り調べの最初に向こうから名乗ったそうです。

 ラハード王国から派遣された刺客とのことで、任務で追っていたミリア教徒の神官がこの街に入ったので秘密裏に始末しようとしていたらしいですね。

 もっとも、今はそれを我々に邪魔されたと怒っているみたいですが」


「ミリア教徒……ああ、あちこちで問題を起こしているという例の集団か」


 『己の血をアルラウネに託せば救われる』などと謳って各地でアルラウネを生み出しているという謎の教団。

 その神官達がこれほど幅広く活動するほどに大きい勢力となったのだから、もしかすると最初は本当に人々を助けることが目的であったのかもしれない。

 だが、今のミリア教は人間を排除してアルラウネによる社会を築くことを目的にしてしまっており、どこか歪んでいるようにしか思えなかった。


 先日、大陸諸国が集まる会議でも議題に出され、団結して彼らを撲滅していくことが全会一致で可決し、各国各地にその通達がなされた。

 それはもちろん、ゼクート王国に属するこのバゲッツの街も例外ではない。

 この街を預かる辺境伯として、カッツもこの問題を見過ごすつもりはなかった。

 

「まあ、そういうことなら事前に我々に話を通すのが筋だと思うのだけれど。

 一言の断りもなく、無断で街中にいた()()を殺そうと狙っていたんだから、うちの衛兵が制止するのは当然のことさ。

 全く、言いがかりはやめてほしいものだね」


「同感です。

 後で、ラハード王国宛に抗議文を送っておきます」


「任せるよ」


 続けて別の書類に手を伸ばしたフレンスタが、その内容を見て眉をひそめる。


「それと、エディク・ベネット博士から提案書が出されています。

 『衛兵マクナルディの活躍は目覚ましいものがある。

  その力を街の見回りだけにとどめるのは非常に惜しい。

  アルラウネ兵を量産し、その運用を考慮すべきである。

  ついては、実験にマクナルディの同僚モースを使う許可をいただきたい』

 ――以上です。」


「……やれやれ。

 研究熱心なのはわかるけど、ミリア教徒じゃあるまいしこれはさすがに認められないね」


 聞き終えて、カッツもまた顔をしかめた。


 エディク・ベネット博士は生物学の研究者であり、今のマクナルディがアルラウネであることを突き止めた御仁ごじんでもある。

 信頼のおける人物ではあるが、研究のことになると少々暴走する癖があるのだ。


「文献によると、アルラウネというのは血の主が()()()()()()()での記憶や思考をもとにするらしいからね。

 マクナルディ君のことで現在お悩み中なモース君の血でアルラウネを作ったところで、我々に忠実な兵士にはなってくれないだろう。

 人間というものは、ちょっとしたきっかけで一番大事な物が変わってしまうものさ。

 それに、マクナルディ君だってモース君のことをとても大切な存在だと思っているようだからね。

 もしも博士の言う通りにしようとしても、マクナルディ君は離れようとしないんじゃないかな。

 多分だけど、無理にモース君を連れ出したら暴走するね、あれは」


 先ほど見送ったモースが領主館の正面口から出ていく姿を窓から見届けながら、カッツは思いを巡らせた。


 アルラウネは血の主の遺志に即して行動するらしいが、死んだマクナルディは刺されながらもモースを守ることを最後に考えていたのではないだろうか。

 現に、アルラウネの彼はモース以外の人間と巡回組になることを断固として拒んでいる。

 本来の性格は従順であったというから、これはおかしなことだった。


 何より、巡回に出る時のマクナルディは率先して前に出ている節がある。

 一〇人のごろつきを相手にした時も、暴れ馬に対処した時も、そして暗殺者――ラハード国からの刺客を捕まえた時もそうだ。

 その時の衝撃のあまりモースはいまだに思い至ってないようだが、ごく普通の人間であるモースが手を出していたらただでは済まなかったかもしれない状況ばかりである。

 それをアルラウネの本能で感じ取ったがゆえに、マクナルディは一人で片付けたのだ。

 全ては、モースを害する可能性のある存在を排除するために。


 これはあくまで推測でしかない。

 だが、モースから直に話を聞いた上で、おそらく間違いないだろうとカッツは確信していた。


「あのマクナルディ君に力の矛先を向けられる真似は絶対にしない。

 偶然とはいえ、精強なアルラウネの兵士が一人手に入った。

 それで満足しようじゃないか。

 これからもモース君の相談には乗ることにする。

 それでいいね、フレンスタ君」


「承知いたしました。

 では、この博士からの提案書は却下ということにしておきますね」


「ああ、頼んだよ」


 話が終わり、フレンスタ秘書官はカッツが決裁し終えた書類をざっと確認する。


「ところでカッツ様。

 今日のようにいつも本気で書類仕事に勤しんでいただけると、私としてはとても助かるのですが」


「嫌だよ。

 毎日本気出すなんて、かったるいじゃないか」


「……まったくこの方は」


 この領主は頭は切れるのに、怠け者なのである。

 もっと仕事をしてもらうために、モース君には頻繁に領主館に来てもらうように今後の予定を組むことにしよう、と密かに思うフレンスタ秘書官であった。






 夕暮れに赤く染まった街の中を急ぎ自宅に帰ってきたモースは、さっそく頭を抱えていた。

 モースと共にマクナルディもまた非番で休みとなり、さすがに今日は何事もないだろうと思っていたのに、その期待が見事に裏切られてしまったからだ。


 時は昼下がり、とある酒場でまっ昼間から酒を飲んでいた客の男が酔いに任せて暴れる事件があった。

 近くにいた衛兵二人がすぐに駆けつけたのだが、男は手練れの傭兵だったらしく取り押さえるどころか逆に殴り倒されて気絶してしまったそうだ。

 そこへたまたま散歩していたマクナルディが通りがかると、彼はおもむろに近づいて暴れる男の攻撃をものともせず力で捻じ伏せ、いとも簡単に取り押さえてしまったのだという。

 

 その話を今、モースの帰りを待っていた二人の先輩衛兵から聞かされたところなのである。


 領主館へ赴く前に、モースはむやみに外に出歩かないようにとアルラウネのアイツに言い聞かせてはあった。

 だが、もとになったあの幼馴染の性格からして家に閉じこもっている柄ではなかったし、アルラウネという魔物は元が植物だからなのか太陽の光に当たるのを好むらしい。

 今日は一日中雲一つない晴天だったし、やはり我慢ならなかったということだろうか。


『あのアルラウネは、言うなれば彼そっくりの人形なのですよ。

 それをあの世から見えない糸で操り、マクナルディ君は今もこの街を守っているのです』


 ふと、眼鏡をかけた女性秘書官の言葉を思い出し、モースは想像する。

 はるか天空のかなたからアルラウネを操る、亡き幼馴染の姿を。

 もし本当にそうであるならばアイツのことだ、自身がやりたかったことができて死後の生活とやらをさぞ満喫しているに違いない。

 その後処理のせいでこちらは今とても苦労しているというのに、だ。


「……またやってくれたな、あの馬鹿野郎」


 ごく自然にその言葉が自分の口から漏れ出たことに、モース自身が驚いていた。


 今まで、あのアルラウネはマクナルディの偽物でしかないと忌避感を持っていたために、アレのことは考えないようにしていたはずなのだ。

 だが、アイツの操り主が死んだマクナルディなのだと思ってみると、今まで溜め込んできた気持ちを幾らでもぶつけてやりたくなっている自分に気づいた。

 なるほど、これが一緒にいる()()()ということなのかもしれない。


 とりあえず、領主の言葉は意外なほど自身に効果があったということになる。

 疑ってごめんなさい、とモースは心の中でそっと領主に謝っておいた。

 

 まだ、この新しい相棒との関係を完全に受け入れることができたとは言い難いが、今のところは何とか折り合いをつけていけそうだ。

 そう思いながら少々やんちゃな幼馴染の分身を迎えに行くモースの足取りは、幾分軽やかだった。

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