ボクとバーちゃん
「豆タロウ、散歩いくよ〜」
夕方、いつも同じ時間にバーちゃんが出てくる。
『はいはい、嬉しいー…ホントはまだゴロゴロしてたいけどね』
とりあえず尻尾振ってピョコピョコしておく。
それだけでバーちゃんは喜んでくれるから。
バーちゃんのことはボクも好きだし。
ただ……一ついわしてもらうとさ…。
「あら〜、田中さんじゃない。最近なかなか会わなかったわねぇ。チョコちゃん元気だったぁ?」
散歩コースでたまに会うチョコんちのおばさんとばったり。
『始まった、バーちゃんの井戸端会議。早く帰りたいのに』
尻尾下げてつまらないって気持ちを強調してみる。
…まぁ無駄な努力だけど。
『何分で終わると思う?』
『さぁ、20分は確実ね』
チョコはお姉様系のミニチュアダックス。
なのに散歩の時決まってフリフリフワフワの服を着てる。
『着たくて着てるわけじゃないわ。今日だってママの手をひっかいてやったもの』
フンッとチョコはそっぽを向いて、おばさんにアピール。
まぁそれも無駄なんだけど。
「それじゃあまたね、チョコちゃん」
やっと終わった。
『ジャスト30分。じゃあまたねチョコ』
『できるものなら会いたくないけど』
そうだね、会わなければもう家に着いてるもんね。
この後リッキーんちのおじさんにも会って、同じく30分。
そう、だからね?
1ついわしてもらうとね?
所要時間30分で済む散歩コースを1時間半もかける必要はないんじゃないかな。
…1時間半ですめばまだマシだけど。
やっとの思いで帰ってきて庭に放してもらう。
「あー、よいしょ」
バーちゃんは庭にあるベンチに腰をおろしてる。
「疲れたねぇ、豆タロウ」
『そりゃ、1時間以上も突っ立って話してりゃ疲れるの当たり前だし…』
ってボクは毎日つっこんでる。
疲れるのはボクだって同じだし。
でもさボクは長い井戸端会議も付き合うよ。
だってやっぱりバーちゃん好きだからさ。