第5話 ブラックライト
5. ブラックライト
地震はかなり長い間続いた。
どこからともなく、何かが崩れ落ちるような音が聞こえてきていた。
シンは、その場で頭を抱え、しばらく丸くなっていた。
頭の上からはパラパラと小石が落ちてくる。それだけでもかなりの恐怖だ。
(ここに閉じ込められたらどうなるのだろう・・・)
真っ暗になった暗闇の中で、そんな心配ばかりが頭の中に浮かんできていた。
どのくらいの時がたったのだろうか。しばらくすると、地震の揺れがおさまったのか静かになった。もう一度揺れるかと思ったが、どうやら揺れは完全におさまったようだ。
幸い自分のいる場所には身の危険を感じるほどの落石がなかったようで、幸運といえるのかもしれない。
シンは、恐る恐る体を起こし、自分の体に降り積もった小さな石を払いのけた。
「はぁ。生き埋めにならずにすんで良かった・・・」
独り言が自然に出てきていた。
しかし、今自分がいるところがどういう状況なのか、完全に真っ暗なので様子が良く分からなかった。頭に付けていたライトも、地震の衝撃のせいなのか今は消えてしまっている。
だが、シンはこんな暗闇の中の状況に置かれていたが、不思議と落ち着いていた。
「よし、まずライトがつくかどうかもう一度確かめてみよう」
手で、頭のヘルメットにつけたライトのスイッチの場所を探そうとするのだが、どこにあるのかよく分からなかった。
「あれ?ここだったと思うんだけどおかしいなぁ」
シンは自分のバックパックにブラックライトが入っているのを思い出した。
「ブラックライトだと暗いけど、スイッチの場所くらいは確認できるだろう」
一度ヘルメットを外し、次に背中に背負ったバックパックを下ろして中身を漁りはじめた。
バックパックの中は整理をしていないまま必要そうなものを詰め込んで来たので、色んなものが入っている。いつ貰ったか覚えていないチラシのような雑紙や、中には昔買った髪を黒く染めるワックスなんていうものまで入っている。しかも、同じものが二つも入っている・・・。我ながら、荷物の整理をしていないズボラな性格に苦笑いがこぼれた。
しかし、いくら探してもなかなか肝心の目的のものが出てこないので、しばらくの間暗闇の中でバックパックを漁ることになった。ペットボトル、タオル、さっきから同じものばかり触っている気がする。
「あっ、あった、あった。これだ」
ようやく取り出すことのできたブラックライトを入れた布袋を手に取って、その口を緩めてブラックライトを取り出した。シンはライトを手に取るとすぐにスイッチを入れた。
ブラックライトが着いたとたん、目の前に、想像もしていない光景が広がっていたのでシンは驚いた。
「何だこれ・・・・」
目の前の空間が、まるで小さな宇宙ででもあるかのように光り輝いていたのだ。
ブラックライトの光に反応して、綺麗な蛍光の光がいたるところで輝いていた。しかも、少し進んだ先のところからは、存在感のあるひときわ大きな光が輝いているのが目にとまった。
シンはこの大きな青い光の塊に興味を覚え、そこまで進んで行ってみることにした。近づいてその光の塊を見て見ると、その青く光るものは、こぶしほどの大きさのものであることが分かった。しかも、更にその周りには3つの黄色の光を放つたまご位の大きさの光るものも輝いているではないか。
「うわー何だこれ・・・綺麗だなぁ・・・」
顔を近づけてみると、青く大きく光る塊の方は、台座のようなものの上に乗せられていて、いかにも特別なものという雰囲気が出ていた。その下の黄色の3つの石の方も、青色のものより少し小さいが、やはり台座のようなものの上に置かれていた。
「これが、その発見された鉱石!? それにしても立派なものだし、すごく綺麗だ」
シンは、その蛍光に輝く鉱石にしばらく見とれていたが、さっき下ろしたバックパックを下ろした所まで戻って、そこからピッケルを取り出した。そのピッケルで削り取って、この綺麗に光る蛍光の石を持ち帰ろうと考えたのだ。
慎重に鉱石を傷つけないように気を配りながら下の台座にピッケルを当て、少しずつ削り取っていく。
その作業をしばらく続け、なんとか青い大きなこぶし大の石の一つを取り出すことができた。続いて、同じ作業を繰り返し、たまご程度の大きさの黄色の石3つも無事に取ることができた。他にも台座のようなものはなかったが、赤色の少し小さめのピン球ほどの大きさの石が5つ、それに、緑の親指大の石は沢山見つかった。この緑のは合わせて22個も削り取ることができた。それらの鉱石をシンはブラックライトが入れてあった布袋の中にしまい込んだ。
大発見だ!これで自分も新聞に載るかもしれない。シンの頭の中に、一瞬そんな考えが浮かぶのだった。