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この異世界は手相が重要だなんて聞いてない!  作者: 紫 和春


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第84話 言伝

 寺門の出した手紙は、まず最寄りの冒険者ギルドに届けられる。

 意外な事かもしれないが、冒険者ギルドでは手紙の郵送配達業務も行ってたりするのだ。

 しかし、寺門の目的は郵便を使うことではない。

 そこのギルド長に連絡をすることであった。


「この書類整理で忙しいのに、儂あてに手紙なんぞ……」


 そういって差出人を見る。勿論、そこに書かれているのは、上級冒険者の寺門の名前である。


「……無視するわけにはいかんか」


 そういって中身を見る。

 手紙の内容を読んだギルド長は、驚きの声を上げる。


「こ、これは本気か?いやしかし……」


 少し悩んだ後、ギルド長室に設置されている通信機器を使って、帝都にある冒険者ギルド本部に連絡を取る。

 冒険者ギルド本部は、帝国にある冒険者ギルドを総合的にまとめあげる、現代社会で言えばコンビニをまとめる本社といった位置づけになるだろう。

 そのギルド本部にギルド長は連絡をとる。


「こちら冒険者ギルド第9庁舎です。連合会長に折り入って頼み事がございまして……」


 ここから帝国冒険者ギルド連合会長のイアン・ポートに話が飛ぶ。

 なんとか連合会長のイアンと話ができる。


「ポートだ。それで、頼み事とは何かね?」

「はい、それが……」


 ギルド長はイアンに、寺門からの手紙の内容を教える。

 それを聞いたイアンは、メモをとりながら頭を抱えた。


「それは本気で言っているのか?」

「えぇ、冗談で書かれているようではありませんでした」

「ふぅん……。わかった、どうにか話を取り付けてみよう」

「ありがとうございます」


 そういってイアンは通信機器をおいて、部屋を出る。


「馬車を出してくれ。行先は首相官邸だ」


 そういってイアンは馬車に乗り、同じ帝都にある首相官邸に向かう。

 ものの10分程度で到着する。

 そして首相のジャスラのいる執務室に向かった。

 入口で要件を伝えると、数分後には通してもらえる。


「申し訳ないですね、ドルニコ首相。急用ができてしまったもので」

「別に構わん。それで、緊急の用事とはなんだ?」

「それがですね……」


 イアンはメモを頼りに、話をする。

 ここでも寺門の手紙の伝言が行われた。


「……そんなこと、すぐに行えるものではないとは思わなかったのかね?」

「私自身もそれを考えました。正直、正気ではありません。しかし、称号付きの上級冒険者にこんなことを言われてしまっては、我々も動かざるを得ないのが本音です。どうか、無茶を承知でお願いできないでしょうか?」

「しかしだなぁ……。これは必要なことなのか?」

「それがわからないんです。リョウが言っていることが本当だとしたら、我々は相当な被害を被るはずでしょう」

「うぅむ……。上級冒険者の妄言として片づけたいところだな」

「しかしそれをやってしまっては、我々は国民の声を聞かない国と烙印を押される可能性は否定できません」

「むぅ……」


 首相はしばらく考える。


「この伝言、なかったことにできないか?」

「しかしこれ、王国の使節団も見ているんですよ?」

「もしそんなことをしたら、帝国の信用はがた落ちするだけか……」


 追い込まれた首相のジャスラは、しばらく考えたのち結論を出す。


「その上級冒険者の言う通りにしよう。もしこれを向こうが拒否するような場合は、痛いところを突いてやればいいんだからな」

「わかりました。ではそのようにお願いします」

「外務大臣を呼んでくれ」


 そういって外務大臣が呼ばれる。


「御用ですか?」

「このメモの通りに、先方に連絡してくれ」

「わかりました。それで、その先方とやらは誰です?」

「決まっているだろう。連邦だ」


 そう、寺門は最初から連邦にあることを依頼しようとしていたのだ。

 その依頼内容は次の通りである。


「連邦に存在すると推察される勇者召喚システムを、帝国の、ひいては王国の未来のために使わせてもらいたい」


 簡単に言えばこうなる。そして、具体的な人物も書かれている。


「異世界において、十分に医療が発達している世界の医療従事者を召喚すること」


 ここまではっきり書かれている。

 寺門にとって、この勇者召喚システムというのは賭けでしかない。それは一のことを見れば分かるだろう。

 どのみち、博打をしていることには変わりない。

 連邦からは、いい報告があることを願うばかりである。

 そして連邦から返事があったのは1週間ほど経った日であった。


「その要求を承諾する。目的の勇者が召喚され次第、帝国に海上経由で護送する」


 結果として、寺門は賭けに勝ったのである。

 この結果を聞いて、寺門は安堵した。


「よかった。これで半分はこの困難を乗り越えたことになる」


 しかし、寺門にはまだ懸念があった。


「もし……、いや確実に僕は濃厚接触者になっているだろう。僕自身を隔離しなければ……」


 そういって、体中に魔力を集中させる。

 すると、左手から光があふれだし、その光が空中に浮かび上がっていく。

 そして、寺門の周囲を守るように、空気の壁が生成される。


「ありがとうございます。精霊さん」

「いいのよ。力になってあげれるのはこれくらいしかないから」

「では今後24時間、空気の監視をお願いします」

「わかったわ」


 そういって光はスッと消える。

 これで、寺門の周りだけを覆う空気の層ができた。これによって、もし寺門が風土病に感染していたとしても、周りに移すことはないだろう。


「あとは、医療従事者が来るのを待つだけだ……」


 そういって、寺門は祈る。

 この状況を何とかしてくれる勇者の到来を。

本日も読んでいただき、ありがとうございます。

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次回もまた読んで行ってください。

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