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この異世界は手相が重要だなんて聞いてない!  作者: 紫 和春


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第82話 じわり

 料理を堪能し、その他いろんな人と話をした寺門。

 無事に立食パーティーは終了し、各々自分のホテルへと戻っていく。


「いやー、おいしい料理がいっぱいだったねー」

「そうですね。ボクも満足しました」


 そんな中、寺門は今後の予定を確認していた。

 この後、使節団はこの軍港の中で、各種条約の締結や取り決めなどを決定していくことになる。

 そこには勿論、首相や外務大臣が参加し、様々な交流が行われることだろう。

 しかし、そこには寺門たちの入る隙はない。

 というわけで、寺門たちの次の出番は、使節団が帰る際の式典に参加するということだけである。


「1週間は暇を見ないといけませんね……」


 実際、1週間はこのホテルに泊まるように指示されている。

 このホテルにいるだけでは暇なので、寺門たちは軍港のある街を散策することにした。

 もちろん、この街にも冒険者ギルドは存在するので、そこで何か依頼を受けるのもありだ。


「そういうわけで、どうしましょうか?」


 寺門は二人に意見を聞く。


「そうだねぇ……。せっかく北の街まで来たんだし、何かおいしいものとか観光とかしてみたいな」

「ボクも観光、してみたいです」

「よし、では明日からは観光をしていきましょう」

「はーい!」


 そういってこの日は暮れていく。

 翌日、寺門たちは北の軍港のある街を観光した。

 市場には、内陸部ではなかなか見ない魚介類が並んでいたり、街の観光資源として長い歴史をまとめた資料館があったりと、実にいろいろ充実しているのだ。

 そんな街も、数日歩き回れば大体全体が分かってくる。

 すると行く場所もないのだ。


「なんか結局暇になっちゃったね」


 部屋のリビングで、頬杖を史ながらモニカが言う。


「まぁ、確かに。街の観光場所はあらかた散策しましたし、もう一度同じ場所を見に行くのも、なんか変な感じもしますしね」

「ボクはもう一度行ってみたい場所はあるけれど……」


 そんな話をしている時だった。

 部屋のドアがノックされる。


「どちら様ですか?」

「フロントクラークです。リョウ様に伝言がございます」

「伝言ですか?」


 そういって寺門はドアを開ける。


「こちらの伝言のメモを」

「ありがとうございます」


 そういってメモを受け取る。

 差出人は軍からだ。


「どうしたんですか?」

「軍からのメッセージですね」

「一体何のメッセージなんですかね」


 そういってメモの内容を読む。


「えー、王国の使節団から体調不良の方が出られたみたいです。その症状が王国の風土病に似ているそうです。使節団からは念のため、パーティーに出席された方を調査するように指示を出したとのことです」

「風土病?」

「なんか怖いですね……」

「僕たちも要注意するように、との伝言です」


 その風土病が何なのかは寺門には分からないが、今から要注意する分にはいいだろう。

 予防の基本は、手洗いや不織布マスクの着用、密を避けるのが重要だ。

 寺門も地球時代の時には、パンデミックに見舞われた経験がある。その経験を活かすべき時だろう。

 ということで、二人に感染症に関するイロハを教えることにした。


「ところで、感染症って防げるものなの?」

「防げます。大抵の感染症は石鹸を使った手洗いをすることによって、手に付いた病原菌を殺菌、もしくは洗い流すことで感染するリスクを低減させるんですね」

「石鹸がない場合は?」

「水で流すだけでも問題はありません。しかし手洗いの効果が半減することは覚えておいてください」

「石鹸って意外と重要なんだね……」

「そうなんです。皆さん手を洗ってますか?手を洗うだけで病原菌の流行を抑えることもデータとしてありますからね」

「普段から気を付けます……」


 そんな感じで、寺門は手洗いの事を二人に教えるのであった。

 翌日。寺門は念のため、部屋から外出しないように二人にいう。

 もし、寺門たちが王国の風土病に罹ってしまっていたら、それを市中にばらまくことになる。つまり市中感染が発生する。

 しかし、寺門たちは既に観光のために数日間ほど市中に外出してしまっている。

 これ以上の感染が広まらないことを願うしかない。

 その後、使節団の帰還日になっても、使節団は帰ることが出来なかった。それは、風土病に侵された団員がいるからに他ならない。

 現在は軍の施設で治療を受けているらしいが、どうも状況はよろしくないようだ。

 そんな中、寺門たちは本当に風土病なのかを怪しんでいた。


「もしかして別の原因があるかもしれないよ?」

「しかし、症状を聞いていない以上、ここで病気かどうか判断するのは難しいと思います」

「そもそもボクたち病気の専門家でもないですし……」

「あのパーティーの状況では食中毒が起こってもおかしくはありませんでしたが、その可能性は極めて低いでしょうね……」

「何か情報がつかめたりしないかなぁ……」

「そうなると……」


 思い立った寺門は書簡をしたためる。

 それは使節団の団長、エフリヒカ・ナビードに向けたものだ。

 そこには、団員の症状の内容を聞くのと、何か協力出来ることがないかを書き記した。

 あとはこれをフロントクリークに渡し、エフリヒカの元に届くのを祈るだけである。


「どうか、僕の知っている症状でありますように……」


 そのように願い、書簡を出した。

本日も読んでいただき、ありがとうございます。

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次回もまた読んで行ってください。

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