表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/127

第43話 ミニチュア

 寺門の車作りは、まずミニチュアを作る所から始まった。

 作りはかなり簡素にするつもりである。イメージとしては米軍のグロウラーITVや日本の汎用軽機動車がそうだ。

 軽量の車体かつ、どんな地形も走破できるような汎用性を持たせたい所である。


「となると、車体は簡単なフレーム構造にして……」


 そうして簡単なミニチュアを作ること数時間。

 大まかな形は完成した。


「しかし、問題点もいくつか露出したな……」


 その問題点とは、サスペンション回りやタイヤ、エンジンとなる動力源などだ。

 これらを一気に何とかするのは大変なので、まずは一つずつ解決していくことにした。


「サスペンション……。これはどうするべきかな?」


 サスペンションがなければ、地面の振動をそのまま車体へと流してしまうことになる。

 それでは搭乗している人に大きな影響を与えてしまうだろう。

 そこで、サスペンションを搭載するために、車軸回りに手を加える事にした。

 今回作る車は、どちらかと言うとバギーに近いものなので、4輪駆動を基本としている。

 そのため、車の回転軸に干渉しないように、サスペンションを設置しないといけない。

 ところが、サスペンションを作る技術を寺門は持っていないことに気が付いた。

 そこで、寺門は持っている限りの知識と技術力を使って、このサスペンション問題を解決しようとする。


「サスペンションはバネとなるスプリング部とショックアブソーバー部で構成されているんだったな」


 ショックアブソーバー部はオイルでなんとかすることで解決する。

 そして作ったサスペンションを、回転を伝える車軸とは異なる所に設置して車体を支える。


「うーん、バギーのようにとは考えたものの、そんなひどい所は通らないか?」


 そんなことをぶつくさ言いながら、次の問題に取り掛かる。

 タイヤの問題だ。

 通常、タイヤというものは中に空気を入れて、それにより地面からの衝撃を抑える役割を持っている。

 しかしこの構造というのが非常に面倒くさい。ということで考えたのが、空気を入れないタイヤ。とどのつまり、絶対にパンクしないタイヤである。

 寺門は昔、そのタイヤを見たことがある。ゴムの硬さを利用すれば、悪路走行にも問題なく適応できるだろう。


「たしか構造的にはスッカスカだったな」


 そういってメモ帳にそのタイヤの構造を書き込む。


「ゴムの硬さを何とかすれば大丈夫なのかなぁ?」


 そんなことを言いながら、寺門は次の問題に取り組む。


「エンジン……かぁ」


 エンジンに関しては、寺門に一つの考えがあった。

 それは魔法によって回転するモーターのようなものである。

 これを使えば、無段階変速機も簡単に実現できるだろう。

 早速寺門は魔力モーターの試作を作る。

 構造的には比較的簡単だ。箱の中に軸を通し、その軸が回転できるようにする。また、軸には回転によるトルクを発生させないように、最低限の施しをする。そもそも航空機ほどのものでない限り、トルクは無視できるものだろう。


「よし、形になってきたぞ」


 この時点で、寺門の製作時間は数日経っていた。

 その間に、寺門のことは、馬車を管理する御者たちの間で噂になっていた。「なんだかおもしろそうなことをやっているぞ」と。

 そんな寺門は、エンジンと車軸を組み合わせた車の基底部を作り上げる。

 そして、試しにエンジンを始動させてみることにした。

 最初はゆっくりと動かしてみる。

 低速度であれば、問題なく動かせることが分かった。

 寺門は次第にモーターの回転速度を上げてみる。

 すると、ある速度を超えてから、異音とも呼べる音がなり始めた。

 それと同時に、ホイールが小刻みに振動を始め、ガタガタと言い始める。

 寺門は直感で感じた。


「これは不味い!」


 直ちにモーターの回転数を下げる。

 しかし一歩間に合わなかったのか、ホイールが車軸からボキッと折れて、そのまま宙を舞う。

 そして寺門の横に落ちる。


「……これは失敗だな」


 おそらく原因は、車軸が曲がっていたことにあるのだろう。それにより振動が発生し、異常音、そして破損へと至ったのだろう。


「原因が分かったら、それの対策を講じればいい」


 そうやってトライアンドエラーを繰り返していく。

 その頃になると、馬車を管理している業者の人たちが見に来るようになっていた。


「ほー、これがこの車に使ってるサスペンションか……」

「うちは板バネだからなぁ」

「ゴム単体でこれを支えるのか。今の主流は、木の車輪に鉄を貼り付けるやつだからな」

「これを使えば、自走する事も可能なのか。面白い構造をしているな」


 そんな感じで技術屋には大変人気であった。

 そしていろんな知識を出してもらったことで、車作りに拍車がかかった。

 ミニチュアとしての車は完成した。


「後はこれを大型化するだけだな」


 そういって寺門は作業に没頭していくことになる。

本日も読んでいただき、ありがとうございます。

もしよろしければ、下の評価を押していただくと幸いです。またブックマーク、感想も大歓迎です。

次回もまた読んで行ってください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ