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第38話 会議

 数日後、帝国南部にある帝都。

 その帝王がお住まいになる御所の応接間には、錚々(そうそう)たるメンバーが揃っていた。

 帝国国家元首、ルドルフ7世。

 帝国首相、ゴードン・シアー。

 帝国議会議長、エルドリッチ・ハーベスト。

 帝国軍統括司令官、ジェニス・キャンベル。

 帝国騎士団団長、ダニー・マッケンリー

 帝国冒険者ギルド連合会長、イアン・ポート

 帝国領土統治連絡会、ロン・マキュラー。

 その他、各領主。その中にはエボルトもいた。


「えー、皆さん、お集まりいただき感謝します。これより、緊急の国家安全保障会議を開催します」


 そう、帝国議会議長のエルドリッチが言う。

 それに続くように、首相のゴードンが話し始める。


「先日、帝国領土内を騒がせている魔人の親玉、シャカールという奴が我々に対して宣戦布告にも似た声明を発したことは周知のとおりかと思います。2ヶ月後、スカーレット草原にて、一対一の勝負を望んでいるとのことでしたな。これに関しては騎士団長のマッケンリーがより詳しくご存じかと思います」

「えぇ、よく知っています。何しろ最前線で聞いたものですから。補足がいらない程、その通りですとも」

「そして指定された場所がスカーレット草原……。これはエボルト・スカーレット侯爵の領土ですな」

「えぇ、その通りです」


 エボルトは答える。


「もしやシャカールという奴は、スカーレット侯爵の領土出身なのではないか?知っている領土で戦えば有利になるとでも考えたのだろう」


 同じ領主の誰かが言う。


「そうだ。この魔人を生み出した責任は彼にある!」


 そう口々に領主たちがわめく。

 それを首相が収めようとする。

 その時、帝王であるルドルフ7世が手を挙げた。

 その瞬間、部屋の中が静かになる。


「諸君、少しは冷静になったらどうだ?それに今は、責任の擦り付け合いではなく、シャカールという奴の挑発に乗るかどうかを検討するべきだろう。違うかね?」


 誰も異論は述べない。


「え、えーでは。このシャカールの宣戦布告に乗るべきかどうか。そこを議論していきたい」

「それに関してはもう答えは出ているだろう」


 そう言ったのは、軍司令官のジェニスである。


「我々は魔人と戦っている。そしてその魔人が堂々と声明を出した。これは立派な戦争行為である。ならば奴の声明を受け入れ、戦うのが筋だろう」


 その発言に、参加者一同うなずく。


「……陛下。いかがしましょう?」

「ここにいる皆が反対していないのだろう?ならば私も同じ意見だ。理性あるとて、中身は魔人。ここで打ち滅ぼさねば、帝国に傷がつく」

「ならば、排除という方向ですか?」

「そうだ」


 こうして会議では、シャカールの挑発に乗るというより、シャカールの排除という方向に流れていった。


「では続いて、この戦いに誰を差し出すのか、候補を挙げていただきたいと思います」


 ここで誰しもが黙ってしまう。

 魔人という強大な存在に、誰しも億劫になっている。

 最近は軍人や騎士団が魔人を一掃しているものの、それは野良の魔人や、理性があっても能力が低い魔人が中心だったからである。

 そんな中、騎士団団長のダニーが意見を言う。


「うちの親衛隊クラスなら、意外といけるんじゃないか?」

「可能性としてはありですね」


 それに首相のゴードンが賛成する。


「魔人の処理なら、うちの管轄でもある。何人か上級冒険者を手配しようか?」


 冒険者ギルド連合会長のイアンも意見を述べる。


「騎士団に上級冒険者……。戦力としては申し分ない程だな」


 軍司令官のジェニスが分析する。


「ではその方向で調整するとしましょう」


 そういって首相のゴードンが締めようとする。

 その時だった。


「ちょっと待ってください」


 それに待ったをかけるものが現れる。

 エボルトだ。


「どうしたのかねスカーレット侯爵?」

「騎士団や上級冒険者に任せるのは構いませんが、私個人の意見を述べてもよろしいでしょうか?」

「……構いませんか?陛下」

「許可しよう」

「ありがとうございます。私は、シャカールとの決闘に、ある冒険者を推薦します」

「冒険者?そいつは上級冒険者なのか?」

「いえ、今は中級冒険者であると聞いています」

「上級ではないのか。なぜ推薦する?」

「その者は異世界からの転生者なのです」

「なんと……」


 その声に、会議の参加者はザワザワしだす。


「しかし上級冒険者ではない冒険者を決闘の場に出すのはいささか気が引けるな……」


 そう会長のイアンが言う。


「しかしながら、会長。彼は魔人を倒すための焼き付け装置を開発しました。我々が手をこまねいている間にですよ?それだけの知識を有していることになり得ましょう。そして彼には、まだまだ潜在的な能力を秘めているのを感じます。今はまだ中級冒険者でありますが、いずれは上級冒険者になる逸材でありましょう」


 エボルトは力説した。

 会議の参加者は顔を見合わせる。

 その後会議は続き、結論が出た。

 シャカールの相手をするのは寺門に決まる。しかし条件として草原の周辺に、上級冒険者や騎士団、軍の部隊を配置することで決定した。

 この結論に、帝王のルドルフ7世も承認をする。

 こうして、寺門は魔人の親玉、シャカールとの戦いに巻き込まれていくことになる。

本日も読んでいただき、ありがとうございます。

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次回もまた読んで行ってください。

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