第22話 開幕
寺門たちが定位置に着き、少し時間が経った後。
遠くのほうから号砲が鳴り響く。
討伐祭りの開始の合図だ。
「では、魔物を寄せ付ける香料を置く。健闘を祈る」
そういって祭り運営の冒険者が、煙を吐き出すボールのようなものを地面に置く。
そして近くの木の上に移動し、ただ様子を観察する。
「二人とも、準備はいいですか?」
「ばっちり!」
「だ、大丈夫です」
「それじゃあ24時間、頑張って行きましょう」
そういうと、早速森の奥のほうから、魔物の気配がする。
寺門は両手を拳銃のジェスチャーにして迎え撃つ。
指先に火の玉を生成して、機関銃のように撃ち出していく。
これによって、ある程度魔物を処理することができる。
早速数十体もの魔物を仕留めることに成功した。
しかし、まだまだ後続が続く。
「でりゃあああ!」
ここでモニカの広範囲風魔法攻撃が炸裂する。
これは風魔法によって局地的に気圧差を生じさせ、まるでかまいたちのように切り裂いていくものだ。
それによって切り裂かれなくても、急激な気圧の変化は体に深刻な事態を招く。
寺門たちの前に出てきたときには、すでに満身創痍という状態になっているのだ。
寺門の前に現れた魔物は、寺門の近接攻撃によって簡単に討伐されていく。
多少の波はあるものの、魔物の群れは続々と寺門たちに襲い掛かってくる。
「いやはや……、こうして実際に祭りに参加してみると、結構きついですね……!」
「ほんと、こんなに魔物が来ちゃうと、休んでる暇もないってね!」
祭りが始まってから6時間近くが経過したものの、魔物の群れが途切れる様子はない。
主に戦闘をこなしている寺門とモニカは、心身ともに疲労が溜まっていた。
「だ、大丈夫ですか……?」
そんな二人をよそに、ニーナは木の後ろに隠れながら見ていた。
正直通常の魔物相手なら、ニーナの出る幕はない。
そう、通常の魔物であるなら。
奥のほうから、カランコロンと乾いた打撃音が近づいてくる。
「不味い、アンデッド系の魔物だ!」
アンデッド系の魔物。それは骨と魔力との間に何らかの相互的な繋がりが生じたときに発生する、奇怪で珍妙不可思議な存在だ。
これまでにもいくつかの研究はされてきているものの、いまだアンデッドが生態系やその他の生物学的影響を与えているのか、定かではない。
アンデッド系の魔物は単体では弱く、簡単な攻撃魔法を食らえばあっという間にその姿を保てなくなる。だがこれが山のように襲い掛かってくれば、ひとたまりもないだろう。
しかし、アンデッド系の魔物の弱点は判明している。活動の源である魔力が底を尽きるか、回復魔法をかけてやるのだ。特に後者の方法が一番手っ取り早く、主流になっている。
つまり、アンデッド系の魔物がやってきたということは、ニーナも攻撃に参加できるということである。
「アーネットさん!僕たちがまとめてアンデッドの攻撃を引き受けますから、回復魔法で全部攻撃してください!」
そういって寺門とモニカはアンデッドの攻撃に備える。
人型から四足歩行型まで多様性に満ちたアンデッドが、これまで討伐してきた魔物の死骸の山を超えてくる。
それに対して、魔力の壁を作って一時的にアンデッドの群れの進行を食い止める。
「今です!」
寺門はニーナに対して、回復魔法を使用するよう叫ぶ。
しかし、回復魔法はいつまでたっても回復魔法はやってこない。
様子を見ようと後ろを振り向くと、杖を構えたまま固まっているニーナの姿があった。
「ゑ?」
寺門は思わず拍子抜けする。
その瞬間、魔力の壁が一気に押され、寺門のすぐ目の前まで押し寄せる。
「ぐううう……!」
「リョウ君!」
寺門の危機を察知したモニカが、寺門に襲い掛かるアンデッドに攻撃した。
そのおかげで、少しは状況が良くなったものの、依然危険な状態にある。
「アーネットさん!どうして回復魔法をかけないのですか!?」
「ボ、ボクは弱い人間です……。誰かを助けたいのに、それができないんです……!」
何かトラウマでもあるのだろうか、自分にはできないと現実逃避を始めた。
「そんなことを言っている場合ではないんですよ!」
「分かってます!けど……無理なんです」
そういってニーナは泣き崩れた。
その間にも、アンデッドの群れはどんどん集結し、そして寺門のほうへと進んでいく。
「うぐ……!割ときついです……!」
「ニーナ!このままだとリョウ君が押しつぶされちゃう!」
その言葉に、ニーナは反応しない。
寺門はすがるように説得を行う。
「アーネットさん。正直、あなたの過去なんてものは興味ありません。僕たちが欲しいのは、今、アーネットさんにして欲しいことです。それが何か分かりますか?」
「今のボクにしてほしいこと……?」
「端的に言えば、今すぐにでも回復魔法をかけてほしいのですが、それ以外にもあります」
「それ以外……」
「はい。僕の意見で言いますと、アーネットさん、あなたにこのパーティーを守ってもらいたいのです」
その言葉で、ニーナは顔を上げる。
その間にも、アンデッドの群れは次々と押し寄せてくる。通常の魔物もだんだん押し寄せてくる。
それを寺門は必死に抑える。モニカは寺門の負担を減らそうと攻撃をする。
守ってもらいたい。その言葉に、ニーナは何かを見出した。
そして立ち上がる。そのまなざしには、もう迷いはなかった。
「モントローズ!」
広範囲に回復魔法をかけることができるモントローズによって、寺門やモニカを含めた周辺の敵すべてに回復魔法がかけられる。
それによって、アンデッドの群れはその場に転がるようにして倒された。
「助かりました、アーネットさん」
「いいえ、助けてもらったのはボクのほうです。ボクはまだまだやれるんだ……!」
「あのー、いい雰囲気の所申し訳ないんだけど、後続来てるよ」
アンデッドの死体の山を超えるように、アンデッドや魔物がやってくる。
「それじゃあ、行きますか」
「はい!」
そういって討伐祭りは続いていく。
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