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第16話 駆除

 翌日、仕掛けた罠の状況を確認するため、寺門一行は山小屋を出て、罠を確認しに行く。


「うまく引っかかってくれればいいんですけど」

「そこは熊さんに委ねるしかないよ」


 そんなことを話す寺門とモニカ、そして相変わらず付いてくるだけのニーナ。

 これが彼女の処世術なのだろうか。寺門は半分そんな風に考える。

 さて、罠のほうであるが、一ヶ所だけかかっている罠があった。早速駆除を行う。


「さて、誰が仕留めますか?」

「リョウ君でいいと思うよ?」

「アーネットさんは……ヒーラーですから攻撃魔法は使えませんね?」

「あ、はい……」

「なら僕でいいですね」

「リョウ君、リーダーっぽく行っちゃってね」

「僕、いつの間にリーダーになってたんですか?」

「いいじゃん、リョウ君そんな立場だし」

「まぁ、別にいいですが」


 そんな感じで罠にかかったオオアカグマに近づく寺門。

 一方のオオアカグマは、魔法の罠によって左の前足がトラバサミにがっちりと食い込まれている。もちろん、そんな状態でまともに動けるわけもない。

 近づいてくる寺門のことに気が付いたオオアカグマは咆哮を上げるものの、無意味に等しい。

 寺門は以前にもオオアカグマを対処した時と同じように、光の剣を出現させ、素早くオオアカグマの首を斬った。

 それにより、オオアカグマは一瞬で絶命する。


「……はい。駆除完了です」

「お疲れ様、リョウ君」

「さて、この死体はどうしましょうかね」

「このまま放置しておくのもなんだか気味が悪いし、いっそ燃やしちゃう?」

「それもありですね」


 その時、ニーナが何か言いたそうな顔をしていたのを寺門は見逃さなかった。

 しかし、結局ニーナは何も言い出せずに、そのまま押し黙ってしまう。


「リョウ君、どうしたの?」

「あぁ、なんでもありません」


 最終的に、地面を堀ったところにオオアカグマの死体を置き、そのまま火属性の魔法で焼却処分することになった。これなら、焼却処分したあとに土を埋めれば、元通りになる。

 簡単に穴を堀り、オオアカグマの死体を放り込んで、寺門の魔法で焼却した。

 筋肉というのはなかなか燃えにくいもので、かなりの火力を出さないと灰にならない。焼肉の時を思い出してもらえれば、肉は簡単に灰にならないことが分かるだろう。

 こうして高温で焼くこと1時間。ようやく骨だけになった熊を埋める。

 そして、なんとなくではあるが、寺門はその埋めた部分に向かって手を合わせるのだった。

 こうして夕方となり、寺門一行は再び罠が仕掛けられているかを確認する。

 そしてより効果的になるように、匂いのある食べ物を置いて、山小屋に戻るのだった。


「明日もオオアカグマが仕掛けにかかっていればいいですね」

「それだよね。ある程度の数倒さないと依頼主に怒られちゃうし」


 そんな話をするものの、ニーナは会話に入ってこようとしない。

 寺門は何か話題でも振れればいいのだろうが、そういう新人いびりみたいな真似はできる限りしたくはない。

 結果、なにも話すことはなく、その日も寝床につくのだった。

 寺門は眠りにつく間に、なんとなくニーナについて考えてみる。

 ニーナは自分を全面的に押し出してはいない。もちろん、自己中心的な行動を取られるのは厄介極まりないが、そうでないのも厄介ではある。

 どうにかしてニーナに主体的になってもらいたいのだが、その妙案が思いつかない。

 活躍の場でも設ければ、何か変化が生じる可能性は否定できないが、可能性は限りなく低いだろう。

 そんなことを考えているうちに、寺門は眠りへと誘われた。

 翌朝。前日と同じように、罠を仕掛けた場所に向かう。

 この日は前日に仕掛けていた罠が良かったのか、3箇所でオオアカグマが罠にかかっていた。

 それを前日と同様に駆除し、同様に処分した。


「これで4体か。十分ではありますね」

「けど、この数で依頼主を納得させられるか分からないよ」

「そうなんですよね……。とにかく多くのオオアカグマを狩ってほしいという依頼には、まだ到底たどり着いてないのが現状です」


 どうしようかと考える寺門。その時、寺門の目がニーナに止まる。


「そうだ、アーネットさん。もしよろしければ、何かいい案はありませんか?」


 正直無茶ぶりだと寺門は思う。しかし、ここまでしないとニーナは言葉を発することすらしなくなるだろう。


「あっ、えっと……。でも、このあたりのオオアカグマの数はそんなに多いようには思えないので……」

「というと?」

「ボク、このあたりで採取依頼を受けたことがあって……。その時にふとオオアカグマの個体数ってどれだけいるんだろうって疑問に思ったことがあって……。それで調べたことがあるんです」

「そうなんですか。それで結果は?」

「この一帯に約50体いると推定されていました。本当の山奥とかは分かりませんけど……」

「ちなみに情報源(ソース)はどこから?」

「魔術学校で数学を専門にやってる先生から聞きました」

「なるほど……」


 専門にやっている人から聞いたのなら、信用に値する。


「ではそれをもとに、依頼主と交渉しましょう。まずは罠を片づけるところからですね」


 そういってこれまで仕掛けていた罠をすべて回収し、山小屋の荷物を持って、ふもとの村まで下山する。

 そしてその足で、依頼主と交渉することになった。

 結果から言えば、交渉は成功した。権威ある人間から数値が出されているという状況で、人間はそれに従う心理を持っている。

 こうして、どうにか依頼を達成することができたのだった。

本日も読んでいただき、ありがとうございます。

もしよろしければ、下の評価を押していただくと幸いです。またブックマーク、感想も大歓迎です。

次回もまた読んで行ってください。

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