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第125話 手相

 寺門はあることを実行するため、自身の短剣を取り出す。

 いつもなら光の剣として使っているが、今回は違う。


「武神様、その覇王線とソロモンの環という手相、教えてください」

「それは構わんが、一体何するつもりだ?」

「前に考えたことを再現するだけです」


 そういって寺門は、武神からその手相について教えてもらう。


「覇王線はこう伸びる線で、ソロモンの環はここに半円がある」

「なるほど」

「しかし、それで本当になんとかなるのか?」

「分かりません。ですが、邪神を倒すには、必要なことだと思うんです」


 寺門のその顔は、決意に満ち溢れた顔だった。

 それを見た武神は、寺門を止めるのをやめる。


「そうか。せめてお主の無事を祈ろう」

「神様が一体誰に祈るっていうんですか?」

「これが人間に対する常套句って聞いたんでな」


 そういって、武神は地面にどっかりと座る。


「さぁ、行ってこい。転生の女神を助けてやってくれ」

「分かりました」


 そういって、寺門はゆっくりと邪神の方に歩いていく。

 一方で邪神は、いまだ神々からの攻撃に耐えていた。

 しかしその実態は、邪神のオーラによって、まるで効いているようには見えない。

 むしろその状況を楽しんでいるようにも見える。

 そして邪神が手をあげると、そこからどす黒い闇のような球体が、辺り一帯を攻撃した。

 それにより、最後まで抵抗していた神々は散ることになる。

 しかし、そこに立ち向かう人影が一人。

 寺門である。


「僕が邪神を倒します……!」


 そういって短剣を手のひらにあてる。

 そしてそのまま、自分の手のひらを切る。


「うっ、ぐぅぅぅ……!」


 カッターナイフで切り込むように、手のひらに傷が出来ていく。

 そしてそれと同時に、血がとめどなく溢れてくる。


「これで……完成……!」


 傷をつけ終わった寺門は、その血の溢れる手を邪神に向けた。

 邪神は、そのことに関してまったく分からないような素振りを見せる。

 寺門は手のひらに魔力を集中させた。

 すると、これまでとは異なる、別の力が発動する。

 その力によって、邪神は苦しそうに頭を抱えた。


「やっぱり効いてる……!」


 寺門が行ったのは、手相の書き換え。即ち、覇王線とソロモンの環を自分の手に切り刻んだのだ。

 これにより、寺門は覇王線とソロモンの環の効果を得ることが出来る。

 覇王線は概念の操作。つまり邪神に対することが出来る手相だ。そしてソロモンの環は幸運を呼び寄せる他、他の手相の効果を高める効果を持つ。

 つまり今の寺門は、邪神に対抗出来る、唯一の存在になったのだ。


「うぐ……。ヤメロ……!」


 邪神が初めて言葉を発する。それほどまでに、邪神は苦痛な攻撃をされているのだ。


「邪神は僕が倒します!」


 そういって寺門は、邪神に向かって突進する。

 そのまま右ストレートを邪神の腹部に叩きこむ。

 すると、邪神はたまらずうずくまる。

 そこに寺門は、覇王線によって邪神の体を掴む。いや、掴んだのは邪神の概念か。

 その影響で、邪神の概念は女神の体から切り離される。


「ぬぅん!」


 寺門は、邪神の概念を投げ飛ばす。

 その間に、他の神々は女神の事を救出する。どうやら無事のようだ。

 一方、投げ飛ばした邪神の概念は、黒い煙のようになって武神に憑りつこうとする。


「させるかっ!」


 寺門は邪神の概念を、遠くから掴む。

 武神に憑りつく直前に、掴むことに成功した。


「うぉぉぉ!」


 寺門は邪神の概念を掴んだまま、接近する。

 そして、その勢いでぶん殴る。

 一見ダメージは入ってないように見えるが、邪神の概念は確実に弱っていく。


「寺門!受け取れ!」


 武神が、自分の神器を投げる。

 寺門はそれを受け取った。

 そのまま、邪神の概念を斬りつける。

 しかし、邪神は概念である。斬ってもダメージは入らない。


「やはり斬れないか……」


 武神はそう呟く。


「まだだ……。まだやれる!」


 寺門は神器を両手で握る。

 神器に触れたことによって、寺門の血が神器に付着した。

 すると、神器が光を放ち始めたのだ。


「こ、これは……!」


 寺門の全身から溢れるような力が湧き上がってくる。


「神々の持つ神聖な力と、人間の持つ生きる力が合わさって、これまでにない新たな力が目覚めようとしている……!」


 武神が状況を理解する。

 ならばこの手を使わない訳にはいかないだろう。


「でりゃあああ!」


 寺門は邪神の概念に向かって、剣を振りかざす。

 すると、邪神の概念と剣が触れた所で、強い発光現象が起きる。

 寺門は確実に感じていた。この感触は、確実に邪神の概念を捉えていると。


「うぉぉぉ!」


 寺門は、そのまま力任せに、邪神の概念に剣を斬りこむ。

 そして、遂に邪神の概念を斬ることに成功した。


「ギィアアア!」


 邪神の概念は断末魔を上げながら、消失していく。


「はぁ……、はぁ……。ふぅー……」


 息を整えようと、寺門は肩で呼吸をする。

 そして、そのまま神器を地面に落とす。


「勝った……」


 邪神の概念は消え去った。その確信だけが、寺門の中に残っていた。

本日も読んでいただき、ありがとうございます。

もしよろしければ、下の評価を押していただくと幸いです。またブックマーク、感想も大歓迎です。

次回もまた読んで行ってください。

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