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第119話 邂逅

 どこからともなく飛んできた光線は、簡単に惑星要塞を撃ちぬく。

 そして惑星要塞は、その攻撃と、チャージしていた超兵器によって自壊する。

 その衝撃はすさまじく、離れていたホッフヌングの所まで衝撃が伝わってきた。

 それと同時に、ホッフヌングを取り囲んでいたアルファ艦隊は攻撃を停止する。


「一体何が起きたんです?」

「分かりません。どこからか砲撃が飛んできたようにも見えましたが……」


 そのとき、ホッフヌングに対して強制的に通信が入り込んでくる。

 最初は意味のない雑音であったが、それは次第に言葉となっていく。


『あ、あー。聞こえるかね?』

「艦長、返信しますか?」

「新たな敵の可能性も否定出来ませんが、対話してくれる分、ありがたいものですね。繋げてください」

「了解」


 寺門は、謎の存在と対話を試みる。


「こちらホッフヌング、貴方は一体何者ですか?」

『なるほど、君たちはホッフヌングというのか。そういう種族名であってる?』

「いや、種族名ではありませんが……」

『そうなのか?そうなると、君たちが乗っている艦の名前か?』

「えぇ、そうです」

『なるほど。じゃあ次の質問行ってみようか。君たちはこの恒星系の住人?』

「はい」

『そうかそうか。なら、あの惑星要塞とは敵対していたんだね』

「そうなります」

『それなら良かった』


 謎の存在は安堵しているようだった。

 まだ要領が掴めていない寺門は、謎の存在に対して質問する。


「あの、貴方は何者ですか?」

『あぁ、そうだ。自己紹介がまだだったね』


 そういって、謎の存在はわざとらしく咳払いし、声高らかに話し始める。


『我々は、この星雲にはびこる人工知能集合体に対して、最初の生命体の一部が離反して造られた、対人工知能集合体抑制用ユニット、通称人工知能生命体イプシロンだよ』

「イプシロン……」

「私たちがアルファと呼んでいるものと相対(あいたい)するもの、という点ではいい名前でしょう」


 アバターがこんな事を言った。


『君たちは自分の惑星を守るために、その艦で戦った。それと同じように、我々も人工知能集合体――君たちの言うアルファをこれ以上野放しにしないために、そして最初の生命体が犯した罪を償うために、こうして星雲に散らばってアルファと戦っているんだ』

「敵の敵は味方、ってことですか」

『そうとも言うね。どちらにせよ、君たちの敵になることはないから安心してくれたまえ』


 完全に安心しきるのもどうかと思うが、しかし相手はあの惑星要塞を一撃で葬った攻撃力を持っている。

 それがこちらに向くと考えると、正直寒気がするほどだ。


『我々は現在の所、アルファに対して優位に戦っている。この恒星系にいるアルファ艦艇も、じきに居なくなるだろう』

「それは吉報ですね。何しろ艦はボロボロなもので」

『結構ギリギリの所だったようだね。間に合って良かったよ』

「そうなると、この恒星系にいるアルファ艦隊はもういないことになるのでしょうか?」

『それは分からない。残存艦隊がまだどこかにいる可能性もあるからね』

「しかし、私たちでは残存艦隊を見つけるのに苦労するでしょう」

『そのために我々がいる。この恒星系での活動許可をくれるなら、アルファの残存艦隊を残らず殲滅する事を約束しよう』


 イプシロンが交渉に出てきた。

 正直、寺門たちは疲れている。ここまで連戦な上、残弾も残りわずか。これ以上戦うのは難しいだろう。

 それをイプシロンが肩代わりしてくれるのだ。こんな提案を逃すわけにはいかないだろう。


「是非、そのようにお願いします」

『承った。さっそく行動に移ろう』


 そう言った直後、通信長のジェニファーがレーダーに何か移り込んだのを報告する。


「艦長、ホッフヌング前方200kmにワープアウト反応です」

「映像は出せますか?」

「今出します」


 主モニターに映像が映し出されると、そこには巨大な球体が浮かんでいた。

 球体の表面には、砲身と思われる突起が無数に取り付けられている。


「惑星要塞と同じような形してますね」

『設計思想が似たのだと思うよ。意外と球体って強いからね』


 そんなことをイプシロンが言う。


『さて、我々の本隊は後々到着する。君たちは自分の居場所に帰るといいよ』

「分かりました。アルファの残存艦隊は任せました」

『了解した』


 そういって通信が切れる。

 寺門は、息を吐きながら椅子にもたれかかった。


「やっと帰れるんですね……」

「そうですね」


 そう、アバターと話をする。


「そうと決まれば、すぐに帰還しましょう。クララ技術長、ホッフヌングの損傷具合は?」

「中破といった所でしょう。今すぐに修理が必要な箇所が数ヶ所あります」

「それはワープに支障をきたしますか?」

「直接的なものはないはずです」

「分かりました。デニー航海長、今から1時間後にワープを」

「了解」

「ロイ戦術長は、惑星要塞での戦闘における損害の概算をワープまでに提出してください」

「了解した」


 そういって、各々がそれぞれの仕事に入る。

 寺門は艦長室で、戦術長のロイから上がってきたホッフヌングの損害概算を読む。


「結構損失出てますね」

「あぁ。人的損失は少なかったものの、それでも何人か殉職している」

「物的損失は、主翼の先端部や艦の表面……。バイタルパートに攻撃が入らなかっただけマシともとれますね」

「実際マシだろう。あの戦闘があと30分でも長かったら、俺たちは全員死んでいた」

「イプシロンには感謝ですね」


 その時、艦長室の電話がなる。

 相手は航海長のデニーからだ。


『艦長、まもなくワープに入ります。艦橋に戻ってきてください』

「分かりました」


 そういってロイと共に、艦橋に戻る。


「艦長、ワープ準備良し」

「機関も万全。いつでも行けるぜ」

「では、ワープ」


 そう言ってホッフヌングはワープする。

 故郷である3番惑星を目指して。

本日も読んでいただき、ありがとうございます。

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次回もまた読んで行ってください。

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