第115話 爆発
そこに映し出されたのは、まぎれもない、惑星爆弾の姿だった。
「こんな短距離をワープするなんて考えられません……!」
アバターも想定外のようだった。
しかし、それが現実に起きてしまっている。
何か手を打つしかない。
「ロイ戦術長、主砲準備!デニー航海長は回避運動!ライアン航空班長は、再び重爆撃隊を発艦させてください!」
「了解!」
航海長のデニーが真っ先に回避運動を取った。
それに合わせるように、機関長のトールが機関の出力を上げる。
航空班長のライアンは、現在撤収している重爆撃隊を惑星爆弾の方に誘導した。
「さて艦長。どうやって惑星爆弾を無力化するつもりだ?」
「まずは敵の足を止めることにしましょう。ライアン航空班長、惑星爆弾の機関を破壊してください!」
「了解した」
そういって、すぐに重爆撃隊を惑星爆弾の後方に向かわせる。
そこには、未知の推進機関が存在していた。
「おそらくアレが機関です。重爆撃隊は攻撃を開始してください!」
「重爆撃隊、攻撃開始」
重爆撃隊によって、機関と思われる場所に爆撃を敢行する。
しかし、装甲が張ってあるのか、爆撃してもかすり傷しか見当たらない。
「ダメです!爆撃の効果ありません!」
「主砲準備よし」
「主砲発射!」
続いて、主砲による攻撃が行われる。
だがそれも、謎のシールドによって防がれてしまう。
「駄目だ。こちらのバリア以上の防御性能を持っているようだ」
「爆撃も駄目……。主砲も駄目……。どうすればいいんだ……?」
その時、通信長のジェニファーが何かを聞く。
「艦長!何かノイズのようなものが惑星爆弾より発せられています!」
「中央制御コンピュータで解析を!急いでください!」
「了解!」
謎の通信を、中央制御コンピュータで解析すると、ある言葉になった。
『LKU6419星系第6惑星爆弾、爆破準備良シ。目標、敵旗艦』
このような内容が繰り返されている。
「まさか、惑星爆弾をここで爆破させる気なんじゃ……」
「状況は最悪ですね」
アバターがのんきにそんなことを言う。
「この状況、なんとかしないと大変な事になりますよ?」
寺門は焦る気持ちを抑えて、アバターに言った。
「大丈夫です。腹案があります」
「腹案、ですか?」
本当に大丈夫なのか、寺門は不安がってしまう。
それとは裏腹に、アバターは指示を出す。
「これから、惑星爆弾に対する消極的攻撃を開始します」
「消極的攻撃?」
寺門にしてみれば、言ってる意味がまるで分からなかった。いや、おそらく、ここにいる誰もが理解出来てないだろう。
「艦長、ここは私に任せてください」
「それは信用に値するものですか?」
「はい。十分あります」
「……分かりました。よろしくお願いします」
そういって寺門は、ホッフヌングの指揮権を一時的にアバターに預けた。
「では航海長、惑星爆弾に向かって突進してください」
「と、突進ですか?」
「はい」
「……了解」
航海長のデニーは、惑星爆弾に向かって舵を切る。
「通信長、惑星爆弾の爆破までの時間は?」
「えぇと……。残り85秒!」
「機関長。機関制御システムに、裏コード『mode 999』を入力してください」
「裏コード?」
「早くしないと、惑星爆弾の爆発に巻き込まれますよ」
「りょ、了解」
そういって、機関制御システムのコンソールを呼び出し、裏コードを入力する。
入力された瞬間、機関が停止する音が鳴り響く。艦内は予備電源に切り替わった事を示す、赤色の光に照らされる。
すると、再び機関が動き出すが、その異変に機関長が真っ先に気が付く。
「な、何だこれ……?機関が見たことない動作をしている……!」
「惑星爆弾、爆破まで50秒!」
「機関、モード反転を確認。余剰次元放出用回路成形。目標、惑星爆弾」
アバターが聞いた事もないような単語を連発する。
寺門は、その様子をただジッと見つめているしかなかった。
「爆破まで25秒!」
「空間座標指定、効果範囲確認。エネルギー吸収開始。重力エネルギー流入確認」
すると、惑星爆弾の周辺の空間が歪む。
「爆破します!」
その瞬間、惑星爆弾は何の変化もしなかった。
しかし、直後に惑星爆弾の本体を覆う装甲が赤色に光る。
内部で膨大なエネルギーが発せられているのだ。
誰もが死を覚悟した。
だが、それを見たアバターは全く動じていない。
「エネルギー吸引開始」
その光景は、まるで超新星爆発のようであった。
とにかくまぶしい光が辺りを覆いつくす。
しかしながら、それもたった数秒の出来事である。
あたりはまぶしくなくなった。
寺門が周辺の様子を確認すると、そこには最初から何もなかったような空間が広がっていた。
「……状況は?」
寺門はアバターに聞く。
「問題ありません。惑星爆弾のエネルギーは全て吸収しました」
「……それはどういうことですか?」
寺門は状況を飲み込めず、改めてアバターに聞いた。
「アルファは惑星爆弾をブラックホール爆弾として使用しました。ブラックホール爆弾は、重力による崩壊、ホーキング輻射によるエネルギーの喪失、ブラックホール自体の回転による電磁波の加速を用いています。これにより、大量の熱エネルギーを放出します。今回、ホッフヌングの機関を反転させて、通常は余剰次元から汲み取る物を、反対に余剰次元に向けてエネルギーを放出させることで、実質的に全てのエネルギーを消滅させたのです」
正直、寺門は話の半分も理解出来なかった。
しかし、この説明で分かったこともある。それは、機関を使えば、エネルギーの放出や吸収が行えるということだ。
「先ほどの説明は理論上の話でありますが、こうして実践出来たことは大きな進展でもあります」
「ぶっつけ本番だったんですか!?」
正直、それで寺門たちが蒸発しなかったのは奇跡とも言えるだろう。
しかしこの方法を取り入れることで、ホッフヌングは新たな領域へ進んだとも言えるだろう。
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