第114話 狙撃
戦術長のロイが、二重銃身回転式狙撃銃の準備をしている時に、ふとある質問をする。
「艦長。もし狙撃銃の攻撃が惑星爆弾に命中したらどうするんだ?」
その可能性を指摘されると、寺門は少し考える。
「……どうしましょう?」
そのままアバターに質問を投げる。
「そうですね……。先ほどの惑星スキャンからの情報によりますと、惑星爆弾の外部装甲は、約1km程度あると確認されました。狙撃銃の減衰がいくらか進めば、この外部装甲を撃ちぬくことは困難になるでしょう」
「つまり、狙撃銃の減衰がある程度起これば、流れ弾が当たっても問題はないということですか?」
「そうなります」
そもそも装甲は1kmもあるのだから、多少の攻撃が当たったとしても簡単には貫通しない。
「そうか。それならいいんだが……」
そういってロイは、狙撃銃の準備を進める。
「しかし、それでも不安は残るでしょう。そこで、戦闘の仕方を変えるべきと考えます」
アバターはそう提案する。
「その仕方とは?」
「まずは爆雷を準備しましょう。爆雷には近接信管を用いて、近づいてくる敵艦を牽制します。そしてこちらは逃げながら、狙撃銃で撃っていくという戦術を取りましょう」
「爆雷、ですか。ロイ戦術長、爆雷の残弾は?」
「100kg級が3万発ほど」
「信管を全て近接に換装。距離は……200mにしましょう」
「了解。爆雷投射準備!」
そういって、爆雷が投射される。
爆雷の投射には精密さを要求された。当然の如く宇宙空間は無重力であるため、爆雷を投射すれば、その方向へ一直線に進んでいく。ここで方向を1°でも間違えれば、アルファ艦隊に到着するころにはあらぬ方向へ飛んで行ってることだろう。
「投射には十分気を付けろ」
ロイも、そのように注意する。
こうして爆雷を敷設し終えると、あとは狙撃銃で狙って撃つだけだ。
「狙撃銃発射!」
狙撃銃から青白い光線が発射される。
その超精密射撃は、いとも簡単にアルファの艦隊を屠っていく。
しかし、その攻撃もしばらくしていると、だんだん一度に撃破出来る数もどんどん減っていく。
それに残っている艦艇も、どんどん精鋭化していき、狙撃銃では狙えなくなっていった。
「不味いですね……。敵を狙いにくくなってますね……」
「爆雷による効果も薄くなっている。これ以上の攻撃は無意味になってくるぞ」
「敵の動きもこちらよりも俊敏になっています。機動戦に持ち込まれると勝ち目がないです」
「レーダーも残骸のせいで、性能が落ちています。これ以上の戦闘は難しいかと」
通信長のジェニファーも苦言を呈する。
「しかし、こんな所で止まっている場合ではないです。何か手を打たないと……」
その時、寺門は気付く。
「そうだ……!ライアン航空班長!直ちに重爆撃隊を発艦させてください!」
「了解。重爆撃装備に換装して発艦」
すぐさま重爆撃隊が編成され、ホッフヌングから発艦した。
航空班はアルファ艦隊の残骸を通りぬけ、機動力の高い艦艇に対して攻撃を仕掛ける。
機動力は航空班のほうが上だ。その機動性をもって、航空班はアルファの艦艇を撃破していく。
「航空班による重爆撃は、現在のところ順調です」
「了解。このまま爆撃を敢行してください」
順調に敵艦を撃破していった時であった。
「……!艦長、惑星爆弾が移動を開始した模様です!」
「惑星爆弾が……?まさか3番惑星に向かって移動しているんですか!?」
「いえ、3番惑星ではないようです」
「ではどこに?」
「進路出ました!……目的地、ホッフヌングです!」
「何ですって?」
その報告に、寺門は仰天した。
まさか惑星爆弾が自分の方にやってくるなんて思ってもいなかったからだ。
「今後の予測進路です。このままですと約360分後には衝突すると考えられます」
「ライアン航空班長、アルファ艦艇の様子は?」
「ほとんど撃破したと思われるよ。動いているものはもうないかな」
「アルファは、惑星爆弾をこっちによこして、何をしようとしているんでしょう?」
「おそらく、ホッフヌングのことを完全に破壊しようとしているのではないでしょうか。そうでなければ、わざわざ惑星爆弾をこちらに移動させるメリットはありませんから」
アバターの言う通りだろう。アルファは、ホッフヌングを完全に敵と認識したと思われる。
そして、ホッフヌングを宇宙の藻屑にするために、最終兵器である惑星爆弾をもってホッフヌングを破壊しようとしているのだろう。
「しかし会敵までずいぶんと時間がかかりますね」
「艦長、逃げますか?」
航海長のデニーが聞いてくる。
「そうですね……。確かにここは逃げたほうが得かもしれません」
「そういうことなら重爆撃隊は撤収させよう」
そういって、航空班長のライアンが重爆撃隊に帰還するように伝達する。
「問題はどこに逃げるかって話ですけどね」
そんな事を呟いた瞬間、通信長のジェニファーが叫ぶ。
「艦長!惑星爆弾がレーダーから消えました!」
「アルファの残骸に隠れたとかではないのですか?」
「ありえません。あんな巨大な物体、見逃しません」
その時、艦橋のアラームが鳴り響く。
再びジェニファーが叫ぶ。
「艦長!ワープアウト反応です!しかも巨大です!」
「何だと!?」
「光学で捉えます!」
主モニターに映像が映し出される。
それは、先ほどまでアルファ艦隊の残骸の向こうにいた、惑星爆弾そのものであった。
「これは……ヤバい……!」
寺門の直感が、そう告げている。
本日も読んでいただき、ありがとうございます。
もしよろしければ、下の評価を押していただくと幸いです。またブックマーク、感想も大歓迎です。
次回もまた読んで行ってください。