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第113話 爆弾

 惑星を圧縮し、一種の爆弾とする。そのような構想は、SFでは取り入れられているものも多い。

 しかし、それが現実のものとなって目の前に存在している。それだけで、現実とは簡単に受け入れがたい状態だ。


「そんなに不味い状況なのか?」


 戦術長のロイが聞いてくる。


「まぁ……ヤバいかヤバくないかで言ったら、ヤバいですね」

「しかし想定するほどではありません」


 そうアバターが言う。


「仮に、あの巨大構造物を惑星爆弾と呼称しましょう。惑星爆弾の使い道となれば、単純に質量を用いて惑星を崩壊させることが可能でしょう」

「岩石惑星破壊弾頭と同じような効果だな」

「はい。その他、このまま惑星を圧縮し続ければ、いずれシュバルツシルト半径を下回り、ブラックホールと化すでしょう。そうなったとき、適切な対処をしなければブラックホールに落下することでしょう」

「ブラックホール?」


 ニーナが首をかしげる。

 仕方ないことだろう。彼女らにとって、宇宙の知識はまだ乏しいのだから。


「簡単な話、なんでも吸い込んでしまう穴と考えてください」

「確かに、それが適切な説明かもしれません」


 寺門は腕を組んで言う。


「しかし、仮に6番惑星がブラックホールになったとして、その影響範囲は艦長が考えるよりも小さいと思われます」

「そうなんですか?」

「はい。6番惑星のシュバルツシルト半径はせいぜい3m程度。現在位置から惑星爆弾の距離を考えると、重力の影響はそこまでではないでしょう」

「はぁ……」


 感覚的に、ブラックホールと言えば強烈な重力という考えが頭にあるため、その破壊力はすさまじいものだと寺門は考えていた。

 しかし、ブラックホール爆弾の本質は爆発による加害力ではなく、重力による崩壊がメインな所がある。その点で言えば、わざわざブラックホール爆弾を作る意味はない。


「とにかく、これをブラックホールにする意味はほとんどないに等しいでしょう」

「なら何故、惑星を圧縮する必要があるんだ?」


 戦術長のロイが尋ねる。


「おそらく目的は、惑星スキャンを見てもらえれば分かると思います」


 そう言って惑星爆弾のある場所を拡大する。

 その場所は、まるでホッフヌングに搭載されている機関のような構造をしていた。


「解像度が低いため、確定して言うことは出来ませんが、惑星爆弾はある程度自律航行が可能だと判断します」

「航行可能って、一体どこにアレを持っていくというんです?」


 航海長のデニーが聞く。


「簡単です。3番惑星に持っていけば、単純な質量兵器となり、3番惑星のロシュ限界を引き起こすことが可能でしょう」

「その可能性は十分考えられる」


 戦術長のロイが同意する。


「しかし、アルファはこれまで3番惑星に対して、明確は敵意は示していません」


 寺門は反論する。


「ですが、3番惑星に移動しないという保障もありません」

「た、確かにそうかもしれませんが……」


 寺門は少しうろたえる。


「……そうなるとやはり破壊するしかないのですかね?」

「それが最善の策だと考えます」


 そうアバターが答えた。

 寺門はしばらく考えると、決意したように言う。


「分かりました。あの惑星爆弾を破壊します。総員、第1種戦闘配置」

「総員第1種戦闘配置!」


 それと同時に、まるホッフヌングの動きを確認していたかのように、アルファの艦隊がホッフヌングに近づいてくる。


「アルファ艦隊、接近してきました!距離約12光秒!」

「主砲射撃用意」

「主砲塔展開、射撃準備」


 一連の指示を出したあと、寺門はアバターに聞く。


「さて、あの惑星爆弾をどのように破壊しますか?」

「簡単です。二重銃身回転式狙撃銃ダブルバレルスパイラルスナイパーライフルで撃ちぬけば無力化出来ます」

「なるほど、単純ですね」

「しかし、それは私個人とすれば非推奨です」

「どういうことでしょう?」

「先ほども言ったと思いますが、惑星爆弾は6番惑星を圧縮したものになります。現在は圧縮した状態を保っていますが、そこに穴を開けた場合、どうなるか予想はつきますよね?」

「……破裂する?」

「その通りです。直径16万kmもある6番惑星を数百kmまで圧縮しているんです。その反動は大きいものでしょう」


 その言葉に、寺門は黙ってしまう。


「それに副次的な問題も存在します」

「まだあるんですか?」

「えぇ。この恒星系でも最大のガス惑星です。そんな惑星が突如消滅したら、どんな影響があるか分かりません」


 それもそうだ。

 実際、太陽系の木星が地球に降るかもしれない隕石を、その重力をもって地球を防護しているとも言われている。その他重力関係で、地球に恩恵を与えているらしい。

 つまり、ここでも同じようなことが言える。6番惑星をここで消滅させてしまえば、寺門たちの帰るべき場所である3番惑星に悪影響を与えかねないのだ。


「つまり、惑星爆弾は残したほうが良い、という事ですか?」

「そうなります」

「しかし、アレを残したままアルファ艦隊を殲滅するのは、かなり難しい問題だと思いますよ?」

「問題ありません。この距離ならば、狙撃銃を使って狙撃をすれば、惑星爆弾にダメージを与えず攻撃出来ます」

「……分かりました。ロイ戦術長、ミサイル攻撃が一段落したら、狙撃銃による攻撃を行ってください」

「了解、惑星爆弾に命中させなければいいんだな?」

「えぇ、お願いします」


 そういって、戦術長のロイは狙撃銃の準備をする。

 こうして慎重な攻撃を要することとなった。

本日も読んでいただき、ありがとうございます。

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次回もまた読んで行ってください。

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