第112話 惑星
しばらく第二星間航行で5番惑星を目指すホッフヌング。
その間にも、アルファの残骸に隠れていた敵艦が襲ってくる。
しかし、少数な上、攻撃能力もかなり低い。
そのため、主砲で簡単に追っ払えるほどだ。
そんなわけで5番惑星の静止衛星軌道上までやってきた。
「ジェニファー通信長、5番惑星に対して惑星スキャンを開始」
「ですが、5番惑星はガス惑星ですよ?スキャンしても何か情報が出るとは限りませんし……」
「念のためです。惑星の内部に敵艦が潜んでいる可能性も否定出来ませんしね」
「分かりました。惑星スキャン開始します」
そういって、5番惑星に対して惑星スキャンが行われる。
5番惑星はガス惑星であるが故、岩石惑星に比べればかなり大きい。
しかし、そんなことなど些細な問題にすぎないと言わんばかりに、惑星スキャンは着々と進んでいく。
途中経過ではあるものの、特にこれといった異常は見られない。
「この調子だと、問題はなさそうですね」
「まだ気を緩めるのは早いです。気を抜くのは、惑星スキャンが終わってからにしましょう」
寺門は、惑星スキャンが終了するまで、緊張を切らさないようにしていた。
それは、艦長という役職を全うするための、寺門なりの気配りである。
そして惑星スキャンが終了した。
「惑星スキャン完了しました。……人工物の類いは確認出来ません」
「そうですか。よかった……」
そう寺門は安堵する。
「それで、艦長。この後どうしましょう?」
通信長のジェニファーが聞いてくる。
「次……となると、順当に行けば6番惑星になりますね」
「現在6番惑星は、現在位置から約30億km、場所で言えば現在位置から恒星を挟んで反対側に存在します」
「反対側ですか……」
「かなり距離が空いてますね……」
ニーナが確認するように言う。
「これだけ距離が空いていると、第二星間航法でもどれだけ時間がかかるか……」
「少なく見積もっても、最低3日はかかりますね」
航海長のデニーが憂鬱気味に言った。
「大丈夫です。そのための航法があります」
アバターが提案をする。
「皆さんも艦内を移動する時に使用している、ワープ航法です」
「この艦ワープ使えたんですか!?」
寺門は驚いたように言う。
「勿論です。しかしある程度の制約を受けることになります」
「制約、ですか?」
「はい。例として、第二星間航法で行ける程度の短距離はワープすることが出来ません。大体5000万km未満はワープすることは出来ません」
「なるほど……」
「とにかく使ってみることをお勧めします」
「そう言われるのなら、試してみましょう」
そういって、ワープの準備を始める。
「デニー航海長、ワープ準備」
「ワープ準備、次元位相推移航法起動」
「機関、次元位相推移推力に移行」
「次元位相用レーダー起動。目的地設定、距離29億9800万km」
「ワープ準備、出来たよ」
「よし、ワープ!」
「ワープ開始」
航海長のデニーが、液晶のボタンを押す。
すると、周辺の空間がねじ曲がり、ホッフヌングのみが消えたように、その場から消滅した。
この瞬間、ホッフヌングの周りの空間が通常空間から切り離され、空間の表面を移動する。そして目的地周辺まで移動すれば、そこで再び切り離された空間と通常空間が結合し、何もなかったように空間は元に戻るのだ。
しかし、寺門やその他多くの搭乗員にとっては、原理の説明は不必要である。
それよりも問題なのは、艦や搭乗員に損傷やケガがなく、目的地に到着しているかだ。
「ワープ終了。目的地周辺ですが……」
航海長のデニーが不安そうに言う。
「問題ありません。ここは、先ほどいた場所から反対側にある、6番惑星の周辺です」
寺門は手元の地図を参照する。どうやら、本当に6番惑星近くにいるようだ。
「それで、肝心の6番惑星はどこにあるんですかね?」
「地図によれば、右前方にあるはずですが……」
その直後、通信長のジェニファーが叫ぶ。
「6番惑星周辺にアルファ艦隊があります!」
「ここにも居ましたか……」
そう言って、寺門はそちらの方を光学で確認しようとした。
しかしその時に、ある違和感を感じる。
「……6番惑星はどこですか?」
地図の情報によれば、6番惑星はこの恒星系でも一番の大きさを誇る巨大ガス惑星である。その大きさは直径16万kmにも及ぶ。
いくらアルファの艦艇でも、そんな巨大惑星を覆いつくすだけのアルファ艦艇がいるとは思えない。
「ジェニファー通信長、アルファ艦隊のいる付近を惑星スキャンしてください」
「しかし艦長。6番惑星までは距離がある上に、アルファ艦隊がいるんですよ?スキャンする必要は……」
「お願いします。何か嫌な予感がするんです……」
「……分かりました。精度は落ちますが、いいですか?」
「はい」
そう言って、ジェニファーは惑星スキャンを行う。
すると、あるものがスキャン中に発見される。
「アルファ艦隊の中心に、何か巨大な人工物が存在しています!」
「拡大出来ますか?」
「今、中央制御コンピュータが情報を処理しています……。詳細出ます!」
すると、そこには数百kmにも及ぶ、巨大な人工物がアルファ艦隊に囲まれるように存在していた。
そして、その巨大人工物を、中央制御コンピュータは6番惑星と結論付けたのだ。
「あの巨大人工物が6番惑星……?」
モニカが困惑していた。いや、誰もが困惑していることだろう。
「おそらく、6番惑星を極限まで圧縮し抑え込んでいるのが、あの人工物なのでしょう」
「それって……、惑星そのものを爆弾にしているってことですか?」
「爆弾と呼べるのかは定かではありませんが、そういうことです」
とてつもないものに巻き込まれた感じがする。そういった空気が艦橋に流れていた。
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