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第111話 勧告

通信長のジェニファーは、全ての周波数を使って、アルファ艦隊へ降伏するように通信を入れる。


「こちらホッフヌング。5番惑星に存在しているアルファ艦隊に告ぐ。無条件で降伏せよ。繰り返す、無条件で降伏せよ」


 その通信を入れても、アルファ艦隊から返信は来ない。


「……やっぱり人工知能のような何かが、機械的に侵略してるんじゃないですか?」

「可能性は否定しませんが、そうかもしれませんね」


 アバターは消極的支持のような対応を取る。

 そこに、戦術長のロイが口を開く。


「艦長、意見具申する。今ここで、5番惑星のアルファ艦隊を撃破するべきだ」

「しかし、こちらは降伏勧告をしました。何かしらの反応が返ってくるまで、攻撃はしないことにします」

「また専守防衛か?」

「僕は一貫して、その精神を貫いているだけです。勿論、アルファ側が攻撃する様子を見せてくれば、こちらも即時反撃します」

「……分かった」


 そういってロイは自分の席に座る。

 すると、入れ替わるように航海長のデニーが質問をしてきた。


「艦長、進路はどうしますか?」

「そうですね……。5番惑星の静止衛星軌道に乗る感じでお願いします」

「いえ、その必要はないみたいです」

「レーダーに反応あり!アルファ艦隊がこちらに移動してきています!」


 通信長のジェニファーが報告する。


「闘うしかない、みたいですね」

「それは戦闘を行うという判断でよろしいか?」


 戦術長のロイが、寺門に聞いてくる。


「……その解釈で問題ありません」

「総員第1種戦闘配置についてください!」

「よし、戦闘だ!総員戦闘準備!」


 そういって各種ミサイルや砲塔が動作を開始する。


「アルファ艦隊、会敵まで残り120分!」

「ミサイル発射準備完了」

「高機動航法に切り替えよし」

「機関出力安定。高機動に対応完了」

「……艦長、いいな?」


 そう戦術長のロイが聞いてくる。


「……戦闘を開始してください」

「艦長からの下命を確認した!戦闘開始!主砲射撃開始、ミサイル発射!」


 そういってアルファ艦隊に向かってビームとミサイルが宇宙空間を飛翔する。

 そして数十秒後、着弾した。

 この(いち)斉射で、アルファ艦隊の前衛は壊滅的なダメージを受ける。

 しかし数で勝るアルファ艦隊は、そんな攻撃などお構いなしに突撃してきた。


「アルファ艦隊の推定数出ました!約500万!」


 通信長のジェニファーが報告する。


「500万か……。これまたずいぶんと数が多いですね」

「しかし戦闘が始まっちまったんだ。やるしかないんだろう?」

「……えぇ。そうですね」


 寺門は不服そうにいう。いや、実際寺門は不服である。

 専守防衛を掲げる寺門にとっては、戦闘に入ること自体を嫌う。

 しかしそんな個人の心情を前面に押し出すことはしない。寺門には、数千もの命を預かっているのだから。


「主砲、とにかく撃ちまくれ!大型でまとまっている敵を狙え!ミサイルはまとまりから外れた所に撃ち込め!」

「バリア手動展開。各砲塔の射線上には展開しないように」

「機関出力85%。各砲塔へのエネルギー供給を優先だ」


 1対500万という、圧倒的な戦力差でも寺門たちは善戦する。

 約10光秒という距離だが、アルファにとってみればホッフヌングは針の穴のように小さい。つまり、精密な射撃が要求される。

 一方ホッフヌングにとってみれば、狙えばどこかにあたるだろう。アルファの数的有利は、裏返しとなって不利となるのだ。

 こうしてお互いに接近してくる状態で撃ち合いをするものの、アルファ側が一方的にやられていくだけである。

 お互いの距離が数光秒まで接近してくると、アルファ艦隊は大方壊滅していた。

 しかし一方のホッフヌングも大変な状況にある。率直に言えば、物理的弾薬が尽きかけていた。


「ミサイル残弾残り208発!」

「主砲の状況は?」

「現在、連続射撃による加熱で冷却時間が必要。技術科としては戦闘はお勧めしません」

「機関の様子は?」

「機関は定格運用していたため、特に異常は無し。まだまだいけるぜ」

「敵の状況は?」

「現在もこちらに向かって接近中。会敵まで30分はかかるかと」

「こうなったら、網を仕掛けますか」

「網?どういうことだ?」

「ロイ戦術長、残りのミサイル全弾使って、アルファ艦隊を囲い込んでください。それと二重銃身回転式狙撃銃ダブルバレルスパイラルスナイパーライフルの準備もお願いします」

「……そういうことか。了解した」


 そういって戦術長のロイはすぐに準備を始める。

 それに合わせて、機関長も準備を進めた。

 そして、ミサイルを特定の位置に設定すると、ロイは号令をかける。


「ミサイル残弾、全て撃て!」


 ホッフヌングからミサイルが発射される。

 そのミサイルは、アルファ艦隊の周囲を覆うように飛翔する。

 そして、爆破した。

 その爆破を感じ取ったのか、アルファ艦隊は魚の群れのように、爆破から逃れようとする。

 それによって、アルファの艦艇は中心に集まってくる。

 それを見た寺門は声を上げた。


「狙撃銃、撃て!」


 狙撃銃から青白い光線が発射される。

 それはアルファ艦隊の中心に向かって飛翔した。

 そして着弾。青白い光線は、アルファ艦隊を蹂躙するように、複数の光線になって屠っていく。

 一発の射撃で、相当数のアルファ艦艇が撃破された。


「通信長、動いているアルファ艦艇はありますか?」

「……わずかにですが、あります。しかし残骸で視界不良です」

「まぁ、これ以上出てくるなら、主砲で適宜撃ち落としていくだけですけどね」


 そういって、ホッフヌングは残骸を迂回するように、5番惑星の方へと進出していった。

本日も読んでいただき、ありがとうございます。

もしよろしければ、下の評価を押していただくと幸いです。またブックマーク、感想も大歓迎です。

次回もまた読んで行ってください。

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