第107話 破壊
艦橋には、攻撃されたことを知らせるアラームが鳴り響く。
「敵は確認出来るか!?」
『目視不能!一体どこから撃ってきやがった!?』
「攻撃隊、回避行動を!」
『こんなトンネルの中で回避行動なんて無茶なこと言うな!』
他の攻撃隊にも攻撃の情報が届いたのか、かなり速度を出してトンネル内部を進む。
しかし、それ以降は攻撃らしい攻撃はされず、そのまま出口付近までやってくる。
「攻撃隊、小基地に対して攻撃を行ってください」
『あんまり気は進まないが、了解!』
そういって攻撃隊は、ありったけの火力を用いて、小基地を地下から破壊していく。
小基地はもろく設計されていたのか、攻撃隊の武装で簡単に破壊出来た。あるいは攻撃隊の武装が強いのか。
それはともかく、先ほど撃墜された一機を除けば、攻撃隊は無事であった。
「さっきの攻撃は、一体何だったんでしょう……?」
「可能性としては、惑星に張り巡らされた警備網に引っかかったのではないですか?」
「確かに、基地は放棄されていないから、そういう警報システムは残っているかも知れないよね」
「それでも、こんなザルな警備システムでいいですかね……?もっと厳重にやっているような気もしますが……」
モニカとニーナを交えて、可能性を探る。
しかし、いくら考えても答えが出るわけではない。これは一度保留にしておくべきと考えた。
そして、作戦室に各科長が集められる。
「この作戦で、撃墜されたのは一機だけ。惑星全体に張り巡らされた警備網に引っかかったと考えられます」
「撃墜された軍人ですが、残念ながら救出は困難であるかと……」
その報告を受けた寺門は、ある決断をする。
「ロイ戦術長、前回提案した作戦案、まだ持っていますか?」
「前回提出したものっていうと、あの岩石惑星破壊弾頭を使用した作戦案のことか?」
「えぇ。今すぐ持って来れますか?」
「ちょっと待っててくれ」
そういって戦術長のロイがワープし、1分としないうちに戻ってくる。
「これがそうだが、どうかしたか?」
寺門は受け取った作戦案に目を通すと、意を決したように言う。
「これより、1番惑星の破壊を目的とする作戦を実行に移します」
その瞬間、作戦室がザワザワしだす。
「おいおいおい、艦長本気か?」
「急に何を言い出すと思ったら……」
「マジな話、ありえないんだけど」
各科長から、様々な意見が飛び交う。
それを寺門は制止させる。
「今回ばかりは、僕の愚行に付き合ってください。相手は僕たちの仲間を墜としました。こればかりは、僕の心が許せません」
これまでとは違った表情をしている寺門。
その本気度を見て、各科長は押し黙る。
「もし反対するなら、容赦なく言ってください。今の僕は冷静ではありませんので」
その発言に戦術長のロイは反対しようとしたが、寺門が持っている作戦案は自分たちが立案したものであることを思い出した。
それに、他の科長もそうであるが、仲間の一人が殉職しているのだ。
当然、それに対する報いを受けてもらうのには反対しないだろう。
「……反対意見が出ないようなので、この作戦を実行に移します。ロイ戦術長、直ちに岩石惑星破壊弾頭を使用出来るように、準備を進めてください」
「……了解した」
そういって戦術長のロイはワープする。
寺門の元に、航空班長のライアンがやってきた。
「いいのかい?艦長」
「何がです?」
「惑星を破壊するなんて、普通は考えないような事ですよ」
「しかし、実際味方が殺された。それは重く考えないといけないことです」
「そこまで重く考えなくてもいいと思うけどな。冒険者であれ、軍人であれ、仲間が命を落とすことなんて珍しくもない。艦長は少し入れ込み過ぎだと思うな」
「……確かに、その節はあるかもしれません。しかし、だからといって、仲間を死に追いやった彼らを許すことは出来ません」
「……艦長、あとでコーヒーでも飲みましょう。少し冷静になることをお勧めします」
そういって航空班長のライアンはワープする。
ぽつんと一人残された寺門は、その場で深く深呼吸をした。
「これが最後だ。仲間をこれ以上死なせてたまるもんか」
そう言って寺門は艦橋に戻った。
それから数時間後。ホッフヌングは1番惑星から離れた場所に移動する。
目視で1番惑星が捉えられる場所だ。
「岩石惑星破壊弾頭弾、発射準備完了」
「ミサイルによる惑星までの弾道修正よし」
「全ての準備完了。艦長、いつでも撃てます」
「了解。……岩石惑星破壊弾頭弾、発射」
「弾頭弾発射」
ミサイルサイロから一本のミサイルが発射される。それは光速の数%まで加速し、1番惑星に向かって飛翔する。
「弾頭弾、まもなく1番惑星有効射程内に入ります」
「有効射程内まで、あと10秒……。射程圏内に入りました」
「弾頭、起爆せよ」
「弾頭起爆」
戦術長のロイが岩石惑星破壊弾頭の起爆スイッチを押す。
すると、数秒ほど遅れて爆発したことを証明するログが表示される。
目視で状況を確認すると、1番惑星の前に黒い球体のようなものがあるのが分かった。
そしてそれに呼応するように、1番惑星は球体を維持出来なくなり、バラバラに破壊される。
「ねぇ、リョウ君、本当にこれで良かったのかな?」
モニカが不安げに尋ねる。
「……それは誰にも分かりません。ただ、敵の基地を破壊出来た。それは立派な戦果です」
そういって寺門は背中を椅子に預ける。
だが、これでアルファのエネルギー供給を絶つことに成功した。
その時である。通信長のジェニファーが叫ぶ。
「艦長!周囲からアルファ艦隊の反応が続々と来ています!」
その瞬間、艦橋に緊張が走った。
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